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 伝統的なアメリカンスポーツのフォードマスタングが9月15日、デトロイトショーで7代目となる新型モデルをワールドプレミアした。現地米国での発売は2023年を予定しているが、新型はどのようなモデルなのか、アメ車に造詣の深いモータージャーナリスト、九島辰也氏にレポートしてもらった。

文/九島辰也、写真/フォードモーターカンパニー

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■夏に開催のデトロイトショーに違和感はあるが……

新型マスタングに搭載される5LV8エンジン。ティザーとしてこのエンジンサウンドがワールドプレミア前に公開されていた

 フォードモーターカンパニーは去る8月19日、新型フォードマスタングをデトロイトモーターショー2022で初公開すると正式発表した。現地時間9月14日午後8時、日本時間15日午前9時となる。新型の発表前にはプロトタイプの写真をネットで流したり、ティザー広告としてV8エンジンの音をネットで配信したりするなど、手が込んでいた。

 V8サウンドを「ウェイクアップコール」に例えるところなんてニクイ。この場合、モーニングコールって意味合いよりも「目覚めよ!」って感じだろう。

 それにしても夏に開催されるデトロイトモーターショーってのもユニーク。というか、違和感がハンパない。1990年代後半からかなりの回数、取材に訪れていたが、時期は毎回1月初めだったからだ。

 アメリカはニューイヤーデーしか休まないので、日本流のお正月休みなんて関係ない。その年によって1週間くらいプレスデーは変わるが、1月3日に日本を立ったこともある。

 しかも場所はミシガン州デトロイト。氷点下は当たり前で、気温マイナス20度も何度か経験した。息を思い切り吸うと、肺が痛くなるくらい空気が冷たかった。道路はもちろん、デトロイトリバーも凍っていた。「もしかして歩いてカナダに渡れる?」ってな感じ。

 そんな真冬のデトロイトモーターショーは世界中のほかのモーターショー同様人気激減。ここ数年、動員数は減り、出展するメーカーも減った。ブースの間を埋めるのにクラシックカーを展示したり、地元のコーヒーショップが構えたりするほどスカスカになってしまったのだ。華やかな時代を知っている者として寂しいかぎりである。

 といった背景からモーターショー自体の体制を見直し、今年のように9月開催となった。夏のミシガン州は緑深く、とても過ごしやすいので有名。全米で有名なゴルフ場もたくさんある。

■初代登場から60年目の登場で「あえて2024年型」に

7代目となる新型マスタング。発売は2023年だが、あえて2024年モデルとしてフォードはアナウンスしている

 話をマスタングに戻そう。今回アンベールされたマスタングは7世代目となる。年式はあえて2024年型とした。理由はシンプルで、1964年からちょうど60年目に当たるからだ。初代は1964年4月17日に登場し、初年度モデルは「ロクヨンハーフと呼ばれた。

 ちなみに、従来型の6代目モデルは2013年12月にリリース。世界4大陸、6都市で同時に披露された。個人的にもそれに参加し、その瞬間をオーストラリアの首都シドニーで体験した。まだ日本にフォードジャパンがあり、マスタングをグローバルで販売しようと計画していた時代の話である。

 2024年型マスタングの特徴は、生配信されたプレゼンテーションから読み取ると、デザイン、V8エンジン、スリーペダルのMT、それとデジタル化されたメータークラスター、といったところだろう。パワーソースは5LV8と2.3L直4ターボのエコブーストの2本立てとなるようだ。ハイブリッドモデルなどは言及されていない。

■スペシャル版に「ダークホース」発表

新型マスタングのリアスタイル。伝統を踏襲しながらもモダナイズされたエクステリアデザイン

 また、スペシャルバージョンとして新たに「ダークホース」を発表した。スタンダードモデルをチューンしたモデルでV8ユニットは500hpを発揮するらしい。ボディ各部が文字どおりブラックアウトされている。

 このほかでは、モータースポーツへの挑戦が後半で語られた。GT3やGT4カテゴリーのモデルをラインナップし、国際的なレースからNASCARやデイトナ24時間レースなどに参戦するようだ。

 そして最後にエグゼクティブチェアマンであるフォード家直系のビル(ウィリアム)・フォード氏が登壇。1960年代フェラーリと鎬を削った「ル・マン24時間レースをもう一度」と口にすると、会場は大盛り上がり。復活したフォードGTでの時もそうだったが、今回もホットなニュースである。

■マスタングが世界中でアイコンとして愛される理由

1964年登場の初代マスタング。以来、歴代マスタングは世界中のクルマ好きを魅了し続けてきた

 ではなぜ、マスタングは世界中のクルマ好きから「アイコン」として愛され続けるのだろうか。それはこのクルマの生い立ちに関係する。というのも、1964年のアメリカには大衆的なスポーティカーがそれまで存在しなかったのだ。

 1953年リリースのシボレーコルベットや1955年のフォードサンダーバードはあったが、どちらも毎年進化し、高価なプレミアムスポーツカーとなっていた。マスタングのスタートプライスは当時2000ドル前半だったから、多くの人がそれほど無理をせずに買えたようだ。1966年には年間60万台くらい売れたのを記憶している。

 また、当時のデザイン性の高さもヒットに関係する。スポーティさがあり、エレガントさも感じる。象徴的なのは1966年公開の映画『男と女』。このフランス映画でオープニングから登場するマスタングに魅了された若者は少なくなかったと思う。かなりオシャレなビジュアルだ。ヨーロッパでマスタングが認知された瞬間だろう。

■日本ではヒーローが乗るクルマとして鮮烈なイメージ!

日本では映画のなかのヒーローが颯爽と乗り込む印象の強かったマスタング

 それじゃ、我々日本人はマスタングにどんなイメージを持ったかといえば、それはずばりアメリカ。マスタングはアメリカ映画のなかでヒーローとなる主人公が乗るクルマとして多く使われている。

昔なら『ブリット』、近年なら 『ジョンウィック』だろう。『バニシングin 60』、『60セカンズ』、『ワイルドスピード』、『007ゴールドフィンガー』などなど。『ビバリーヒルズ高校白書/青春白書』もそうだが、TVドラマまであげればキリがない。

 ということで、新型もアメリカンなイメージのまま登場。ファンを裏切らないのがマスタング。個人的にも所有したことあるが、やっぱり楽しいクルマだ。

 まだ所有したことがなくて興味のある方は、一度ステアリングを握るといいだろう。ヨーロッパ車とも日本車とも違う雰囲気を感じるはずだ。目の前の景色が一気にカリフォルニアになる。

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