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Image:Barone Firenze/Shutterstock.com

今年初め、米マイクロソフト(以下、MS)がゲームパブリッシャー大手のアクティビジョン・ブリザードを総額687億ドル(当時のレートでは約7兆8700億円)を買収する計画を発表した。そこから10ヶ月近くが経過したが、いまだに実現していない。なぜなら世界各国の規制当局から、現地の独占禁止法に違反しないとの認可を受ける必要があるからだ。

認可が難航している背景には、ゲームプラットフォームでMSと競合するソニーの働きかけがあると推測されている。実際ソニーは、アクティビジョンの超人気IP「Call of Duty(CoD)」がコンソール(家庭用ゲーム機)ではXbox独占になる恐れがあるとして、反対を表明している

特に注目が集まっているのが、巨大な市場である欧州でのゆくえだ。もちろん現地の規制当局も不偏不党で、徹底した公平性が望まれるはずだが、欧州委員会のスタッフが「他のコンソール(私のPlayStation含む)でもCoDをプレイできるように取り組んでいる」と、ソニーの肩を持つようなツイートをしたことが批判を集めている。

Ricardo Cardoso氏の発言は、「他のコンソール」だけならば問題視されなかっただろう。しかしカッコ付きの「私のPlayStation」が加わったことが、EUの公平性までも疑う声を招いている次第だ。しかも、EUがMSのアクティビジョン買収計画を「より深く精査する」と発表した直後のことである。

あるユーザーは「規制当局が自分たちの偏見についてどれだけオープンにしているか、とても気になる」とコメント。「私のPlayStation」という言葉が、まるで欧州委員会がソニーのゲーム業界における優位を維持することを重視しているように思える、との趣旨が述べられている。

また別のユーザーはCardoso氏に「あなたはプレステユーザーとして言っているのか、それとも公平性と競合の調査という義務を負っている委員会の一員として言っているのか」との質問を投げかけている

欧州委員会もこの事態を重く見たのか、広報担当者がCardoso氏は買収を調査するグループの一員ではないとの声明を出している。彼の所属は域内市場総局であり、競争総局ではないというのだ。さらに本人のTwitterプロフィールで宣言されている通り、個人的な立場でのツイートに過ぎないという。

その後、Cardoso氏も元のツイートにコメントを追加。そこでは「私は合併の評価には関与しておらず、合併を扱う部門にさえ勤めていない」「私のコメントは個人的なものであり、このツイートは個人的な見解であり、事実と法律に基づいて決定が下される委員会の立場ではない」と強調している。

そもそもプロフィールにEUの公的機関に所属していると謳い、認証済バッジまで得ている人物に「個人的なコメント」といわれても戸惑いそうではある。ともあれ、EUの規制当局で責任ある人々には、公平無私な観点からゲームハードの好みを抜きにした判断を望みたいところだ。