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 10月1日に大分県のオートポリスで開催された2022スーパーGT第7戦『FAV HOTEL AUTOPOLIS GT 300km RACE』の決勝。レース後半には、14号車ENEOS X PRIME GR Supra(大嶋和也/山下健太)と12号車カルソニック IMPUL Z(平峰一貴/ベルトラン・バゲット)による激しい4位争いが繰り広げられた。2台はシリーズチャンピオンをお互い争うチームでもあり、このオートポリス戦でのもっとも注目されるバトルとなった。

 14号車はレースの第1スティントは大嶋がステアリングを握って5番手を走行し、背後につける12号車のバゲットを抑え続けるも、マシンがスライドしてしまうなど厳しい展開を強いられる。そんな14号車はドライバー交代が可能となる23周目突入というミニマム周回数でいち早くピットに向かい、第2スティントの山下へとドライバーを交代する。

「今回は今までのレースとは少し違う感じで予選を行い、ポールポジションも狙っていたのですが、今までのレースよりもうまく予選をすることができました。決勝も昨年より良いセットアップで臨むことができたので良かったのですが、基本的に(今季の)GRスープラは少し厳しい戦いを強いられています」

 レースをそう振り返った山下は、ピットアウト後に13番手でレースに復帰。他車のピットインで25周目には再び8番手に上がっていた山下だが、その背後には平峰にドライバーを交代した12号車が迫ってきていた。

「ピットインで何とか(14号車の)前に出られるかなと思っていましたが、いざコースに出ていったら14号車の後ろになってしまいました」と語るのは、12号車の第2スティントを担当した平峰だ。

 12号車はバゲットが9番グリッドからレースをスタートすると、オープニングラップで一気に6番手までポジションを上げてホームストレートに帰ってくる。その後も前を走行する14号車と順位争いを繰り広げ25周目にピットイン、平峰にステアリングを託しコースに出ていく。

 レース序盤から続いた2台によるバトルはドライバーを交代した後も続き、50周を越えたあたりから平峰が山下のテール・トゥ・ノーズに迫るバトルシーンも中継に映し出された。

 前を走行する山下は「12号車はコーナーが速く、燃料リストリクター(1ランクダウン)が入っていても1コーナーで刺されるくらいの速さでした。最終コーナーでは自分が遅すぎて12号車が付いてきてしまい、ホームストレートでスリップストリームに付かれると同じくらいのスピードになってしまいます。燃料リストリクターが入っていたので、まだ助かりました」と12号車の速さを語る。

 一方追う立場の12号車は、前戦SUGO終了時点でポイントランキング2位ということもあり、第7戦ではサクセスウエイトを51kg搭載しており、平峰は14号車とのバトルで燃料リストリクター1ランクダウンの影響をかなり感じたという。

「クルマ的には良かったと思いますけど、全体的にストレートが厳しかったです。やはり燃料リストリクター1ランクダウンというのは結構厳しいなと感じました」

2022スーパーGT第7戦オートポリス カルソニック IMPUL Z(平峰一貴/ベルトラン・バゲット)
2022スーパーGT第7戦オートポリス カルソニック IMPUL Z(平峰一貴/ベルトラン・バゲット)

 両者のバトルはその後も「タイヤがタレてしまい厳しかった」という山下がテール・トゥ・ノーズに迫る12号車を懸命に抑え続けていく。しかしレース残り3周となる63周目、山下にとって最大のピンチ、そして平峰にとっては最大のチャンスでもあるシーンがやってくる。

 ホームストレートでスリップストリームを使用した12号車が1コーナーへの進入で14号車にアウトから並びかけ、両マシンは次のコーナーまで並走を続ける。しかし、続く3コーナーへの進入でアウト側のポジションとなった平峰はまさかのオーバーシュートを喫してしまい、コースには復帰したものの、後続の19号車WedsSport ADVAN GR Supraの先行を許してしまった。

 そのときの心境を「イン側にいたので『引かない!』と思っていました」と山下は振り返り、対する平峰は「『行ける!』と思ったんですけど行けませんでした。一瞬で『これはダメだ』と思って諦めたので、まだクラッシュすることなく止まることができました。まぁ仕方ないですね」と肩を落とす。

 この結末により14号車は4位を死守したままチェッカーフラッグを受けた。レース後「優勝を狙っていたので悔しいです」と切り出した山下だが、この4位入賞で14号車は現在ポイントランキングトップの3号車CRAFTSPORTS MOTUL Z(千代勝正/高星明誠)と20点差のランキング6位につけ、最終戦での逆転チャンピオンに望みを繋いでいる。

「最後は(タイヤが)ズルズルになって後ろから詰められてしまう展開になってしまいました。ですが、4位を守ればギリギリでチャンピオン争いに残ることができることは無線で聞いていたので、そこだけは守らないといけないなと思っていました。何とか4位を守ることができてチャンピオン争いに残ることができたことを考えると、最低限といいますか、そこだけは良かったかなと思います」

 今季は開幕戦優勝という素晴らしい幕開けでシーズンをスタートさせた14号車だが、その後のレースでは上位争いに絡むことができず、前戦SUGO終了時点でのランキングは7位につけていた。今回の4位入賞でランキングをひとつ上げたとはいえ、最終戦ではポール・トゥ・ウインが王者への絶対条件となる。

「(最終戦では)ポールポジションを獲って勝つしかないので、あとはランキング上位が潰れるしかないと思います。昨年は36号車(au TOM’S GR Supra)が同じ状況で、タイトル争いをしている他の車輌が潰れてしまいましたが、36号車は勝っていたので(自分たちも)なくはないと思います」

 一方、その14号車山下とテール・トゥ・ノーズでバトルを繰り広げた平峰は、今回のレースを「悔しい思いはもちろんあります」と総括。しかし、12号車はコースアウトがありながらも、スタートから3ポジションアップの6位でフィニッシュすることに成功し、チャンピオンを左右する5ポイントを加算、ランキング首位の3号車とはわずか2.5ポイント差のランキング2位で最終戦へと臨む。

「もう最終戦はガチンコ勝負になると思いますし、絶対に負けられないので、勝って終わりたいと思います」

 いよいよシーズンクライマックスを迎える2022年のスーパーGT。GT500のタイトル争いはトヨタ、ニッサン、ホンダ各2台ずつ6台での争いとなる。果たしてチャンピオンに輝くのは2年連続でトヨタか、後半戦に狙いを定めてきているホンダか、それともニッサン/ニスモ陣営が7年ぶりの王者奪還をニューマシンで成し得るのか、多くのドライバーが口をそろえる“最終戦ガチンコ勝負”の結末を楽しみにしたい。

2022スーパーGT第7戦オートポリス 山下健太(ENEOS X PRIME GR Supra)
2022スーパーGT第7戦オートポリス 山下健太(ENEOS X PRIME GR Supra)
2022スーパーGT第7戦オートポリス 4位争いを繰り広げるENEOS X PRIME GR Supraとカルソニック IMPUL Z
2022スーパーGT第7戦オートポリス 4位争いを繰り広げるENEOS X PRIME GR Supraとカルソニック IMPUL Z