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 最近の報道では若者の免許離れが報じられています。クルマを所有することに興味がないばかりか現実感を持てない。あるいは30万円前後という教習所代を払うことが難しいといった話まであります。

 今回は、若者の運転免許の取得数や取得率、教習所が行っている対策などを調査しました。若者は本当に運転免許に興味がなくなってしまったのでしょうか。

文/齊藤優太
写真/PhotoAC、AdobeStock(トップ画像=Kumi@AdobeStock)

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■免許取得者数・取得率の実情

巷で言われるほど若者はクルマに乗らないのか? 若者の運転免許の取得数や取得率、教習所が行っている対策などを調査した(PhotoAC)

 警察庁や内閣府では、運転免許の取得者数や人口に対する取得率を公表しています。まず、若者の免許取得者数や取得率を見ていきましょう。

■10代から20代までの免許保有者数はどのくらい?

 10代〜20代の若者の運転免許保有者数は、令和3年(2022年)末時点で1,087万1,177人となっています。内訳と男女別保有者数は次のとおりです。

【16歳~29歳の免許保有者数】
・25歳~29歳:535万2,559人
(男性:284万6,229人、女性250万6,330人)
・20歳~24歳:467万1,998人
(男性:252万1,310人、女性:215万688人)
・16歳~19歳:84万6,620人
(男性:48万3,920人、女性:36万2,700人)
※内閣府「令和4年版交通安全白書」より

 内閣府の統計からも、16歳〜29歳までの若い世代の1,000万人以上が何らかの運転免許を保有していることが明らかとなっています。

■人口に対する免許取得率はどのくらい?

人口に対する免許取得率は20歳~24歳で70%以上、25歳~29歳で80%以上が運転免許を保有している。けっして低くはない数字に見えるが、35歳〜59歳までの人口に対する免許保有率は90%以上。比較するとやはり低いといえるかもしれない(PhotoAC)

 16歳〜29歳までの人口に対する運転免許取得率はどのくらいなのでしょうか。内閣府のデータによると、20歳以上の若者の70%以上が運転免許を保有していることがわかります。詳しい内訳は次のとおりです。

【16歳〜29歳の人口に対する運転免許保有率】
・25歳~29歳(人口:6,379千人):83.9%
(男性3,277千人:86.9%、女性3,102千人:80.8%)
・20歳~24歳(人口:6,246千人):74.6%
(男性3,205千人:78.7%、女性3,059千人:70.3%)
・16歳~19歳(人口:4,504千人):18.8%
(男性2,314千人:20.9%、女性2,192千人:16.5%)
※内閣府「令和4年版交通安全白書」より

 35歳〜59歳までの人口に対する免許保有率が90%以上となっていることから、若い世代の免許保有率が低いと考えることもできるでしょう。

■ATとMTのどちらが多いのか?

これは自動車メーカーが送り出す新車の比率を考えてもある程度予想がつくだろう。いうまでもなくAT限定で取得している人が多い。MT車が少ないのでAT限定で取る。AT限定免許所持者が多いからMT車が少なくなるという堂々巡りだ(PhotoAC)

 運転免許を取得している人のうち、AT限定で取得している人数はどのくらいなのでしょうか。警察庁が公開している令和3年中の運転免許試験実施状況によると、次のとおりとなっています。

【令和3年中の運転免許試験実施状況:普通自動車】
・普通第一種免許受験者数:166万306人(合格者数:123万1297人)
・普通第一種免許AT限定受験者数:119万1053人(合格者数:87万4662人)
※警察庁「運転免許統計 令和3年版」より

 この統計データは、若者だけに絞ったものではないものの、普通車の免許をAT限定で取得しようとする人が70%以上であることが明らかです。

 筆者がかつて指定自動車教習所に勤めていたときは、限定なし(MT免許)で教習所に通っている人もいましたが、世代を問わずAT限定で通っている人がほとんどでした。

 AT限定免許を選ぶ理由としては、「MTを運転する機会がない」や「家の車がATだからMTの必要がない」などが多かったです。つまり、MT免許の必要性が低いという理由でAT限定にしているケースが多く見られました。

 一方、限定なし(MT免許)で教習所に通っている人の多くは、「仕事の都合で必要」や「乗りたい車がMT車だからMT免許でなければならない」など、MTを運転しなければならない事情があるケースがほとんどです。

 また、教習所に通う人の中には「まずAT限定で免許を取得して、必要になったら限定解除する」と考えている人もいました。

 このように、さまざまな理由によりAT限定免許で取得する人数が多いと考えられます。

■少子高齢化により免許取得者数の減少は避けられない

若者の絶対数が少ないため、20年前の若者の免許取得者数と比較して「若者の免許離れが進んでいる」と断言することはできないが、20年前に20代だった世代より現代の20代の方が人口が少ないため、今後免許取得者数が減少するのは必然だろう(PhotoAC)

 免許取得者数は、少子高齢化により減少しています。そのため、「20年前より免許取得者数が減少しているため、若者の免許離れが進んでいる」というのは誤った認識だといえるでしょう。

 内閣府の統計によると、40歳〜44歳の人口は8,172千人です。一方、20歳〜24歳の人口は6,264千人となっています。20年前に20代前半だった世代より、現代の20代の方が200万人ほど人口が少ないため、免許取得者数が減少するのは必然だといえるでしょう。

 また、20歳〜24歳までの世代は、働いている人だけでなく、大学生や専門学生も多く、就職活動や受験が終了した後に免許取得を考える人も少なくありません。

 そのため、多くの人が社会人となる25歳〜29歳の運転免許保有率(83.9%)は、20歳〜24歳(74.6%)より約10%高くなっています。このようなことからも、若い世代の免許取得率が下がっていると断言することはできないでしょう。

■免許を取得する人数が減少している現在における教習所の対策

自動車教習所では免許取得者減少への対策として、早期申込割引やオプション料金を無料にするなどのキャンペーンを行っている。キャンペーン対象は学生のほか、社会人や主婦を対象としたものまでさまざま(PhotoAC)

 少子高齢化により、免許取得者数が減少している現代において、教習所はどのような対策を行っているのでしょうか。

 教習所によって内容は異なるものの、早期申込割引やオプション料金を無料にするなどのキャンペーンが行われているようです。キャンペーンは、学生を対象としたものや社会人・主婦を対象としたものなど、さまざまな種類があります。

 もし、免許取得を検討しているのであれば、教習所のキャンペーンを利用したほうがお得だといえるでしょう。また、冬休みや夏休みなどの長期休暇を避けたオフシーズンは、教習所が生徒を欲しがる時期であるため、お得なキャンペーンが多かったり、教習をスムーズに進めたりすることができます。

 運転免許の取得を考えているのであれば、在校生が少ない時期や割引・キャンペーンをうまく利用して入校するとよいでしょう。

■今後さらに減少する免許保有者数

たとえば、昔も今も若者の70%が免許を取得したとしても、今は少子化によって若者の数が少ない状態なので、同じ「70%」でも免許取得者数は確実に減っている。教習所の運営にはさらに厳しい時代となる(PhotoAC)

 今後、少子高齢化はさらに進むことが明らかとなっているため、運転免許取得者数はさらに減少するでしょう。

 厚生労働省が公表している人口動態統計(令和3年)によると、2016年以降の出生数が100万人を下回っています。つまり、これから運転免許を取得する人数は、さらに減少することが明らかとなっているのです。

 自動車業界にも影響する免許取得者数の減少は、少子高齢化が進む日本において避けることができません。そのため、教習所の運営は、今後さらに厳しくなるでしょう。

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