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 2022年9月26日、警視庁は前日(9月25日)夜、電動キックボードの転倒事故により、会社役員男性が死亡したと発表しました。男性は駐車場内で電動キックボードを運転、方向転換しようとした際、車止めに衝突して転倒、頭を強く打ち、搬送先の病院で死亡が確認されたとのこと。男性は運転時、ヘルメットを着用しておらず、また飲酒していたようです。

文/加藤久美子、写真/加藤博人、Gorozo machine、AdobeStockAdobeStock(アイキャッチ写真は@tsubasa-mfg)

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■特例ボードによる初の死亡事故はどのような事故だったのか

 2022年9月25日深夜、中央区内にあるシェア事業者「LUUP」のポート(電動キックボードを貸したり返したりする場所)で、電動キックボードを借りたあと、公共のスペースである「有効空地」を含む近辺のタワーマンション駐車場にある車止め(推定高さ10cm)にぶつかった50代の男性が転倒。頭を地面に打ちつけ、病院に搬送されたが26日に死亡が確認された。

事故現場最寄りのLUUPのポート。死亡した男性はこちらで電動キックボードをシェアしたのかもしれない。

 なお、通常の電動キックボードは「原付」扱いとなるためヘルメット着用が義務付けられているが、男性が乗っていた電動キックボードは経産省が推進する「産業競争力強化法に基づく新事業特例制度」によって認められたシェア事業者の電動キックボードである。原付ではなく最高速度15km/hに制限された「小型特殊」に位置づけられているため、運転時のヘルメット着用は「任意」とされている。

 事故現場となったマンションの住民に話を聞いたところ、事故の発生について非常に驚いていた。

「事故現場の周辺はマンション住民以外でも、誰でも通行している場所です。公共のスペースである有効空地に隣接しており、特に『立ち入り禁止』などの看板などもありませんから。どこまでがマンションの敷地なのか、公共の通路なのか、まったくわかりません。

 近くにLUUPのポートがあり、電動キックボードや電動アシスト自転車を貸し出していますね。若い女性が不慣れな感じでヨロヨロと電動キックボードで走っている光景を見かける機会が増えました。

 事故現場の駐車場はマンションの住民や配送業者などがインターホンで守衛さんを呼び出して、許可を得て短時間、クルマをとめる場所です。長時間になる場合は、別の場所に来客用の駐車スペースがあり、そこを予約して使います。
車止めにつまづいて転倒したとのことですが、照明などない暗い場所ですし、わかりにくいかもしれませんね」

 また別の住民は、「こんな場所で人が亡くなるんですか。ショックですね。事故がおこったことはNHKのニュースで知りましたが、とても日常的な誰もが通れる場所で死亡事故がおこるとは…。すでに27日には事故物件サイト『大島てる』に掲載されていてびっくりしました」と語る。

 ちなみに、死亡した男性は飲酒(酩酊)状態で電動キックボードに乗っており、正常な判断力が大きく欠けていた可能性もある。当然だが電動キックボードは通常の原付扱いのもの、特例電動キックボードで小型特殊扱いになるもの含めて、お酒を飲んだ状態での運転は道路交通法で禁止されている。

「ヘルメット不要、貸出&返却はスマホひとつでOK」という気楽な乗り物ではあっても、飲酒運転は厳禁なのである。

 今回の飲酒死亡事故を受けて、シェア事業者であるLUUPに対応を聞いたところ、

「事故原因等について警察による調べの最中であることから、現時点で、さらなる安全対策等についての具体的な回答は差し控えたいと思いますが、安全性向上に向けた不断の検証を進めるとともに、飲酒運転の防止や交通ルール遵守の取組みをより一層徹底してまいります。

 また、今回の事故を受けて、ヘルメットの着用推奨に関する更なる協議を協議会や警察をはじめとする関係省庁と行い、検討を進めて参りたいと考えています。」

 と回答があった。ヘルメットの着用についてはさらなる協議を関係省庁と行うとのことである。

■政府が認可しているのは全国14事業者

 現在、日本で特例事業者として新事業活動計画を行っているのは、以下の14事業者である。

 首都圏で日頃目にするのはLUUPが圧倒的に多いが、全国各地で同様のシステムにより活動が行われている。

(経済産業省「電動キックボード」現在実施中の新事業活動計画より引用:2022年10月1日現在)

(1)株式会社Luup(仙台市、宇都宮市、千代田区、中央区、港区、新宿区、文京区、台東区、墨田区、江東区、品川区、目黒区、大田区、世田谷区、渋谷区、中野区、杉並区、豊島区、北区、荒川区、板橋区、練馬区、足立区、葛飾区、江戸川区、横浜市神奈川区、西区、中区、愛知県名古屋市、京都府京都市、宇治市、大阪府大阪市、兵庫県神戸市)
(2)株式会社mobby ride(神戸市灘区、兵庫区、中央区、福岡県福岡市)
(3)株式会社EXx(茨城県行方市、千葉県柏市、東京都世田谷区、渋谷区、神奈川県藤沢市、長野県軽井沢町、小布施町、静岡県沼津市、兵庫県姫路市、豊岡市)
(4)長谷川工業株式会社(千葉県千葉市、大阪府大阪市、大阪府堺市)
(5)SWALLOW合同会社(福島県南相馬市)
(6)BRJ株式会社(埼玉県所沢市、千葉県千葉市、木更津市、柏市、流山市、東京都千代田区、中央区、港区、新宿区、台東区、墨田区、江東区、世田谷区、渋谷区、中野区、杉並区、立川市、武蔵野市、三鷹市、府中市、昭島市、調布市、小平市、国分寺市、国立市、東大和市、武蔵村山市、兵庫県神戸市、淡路市)
(7)株式会社eBoard(埼玉県寄居町、横浜市西区、中区)
(8)mile株式会社(東京都台東区、港区、品川区、大田区、墨田区)
(9)株式会社サンオータス(京都大田区、神奈川県川崎市、横須賀市)
(10)SWING株式会社(東京都港区、新宿区、品川区、目黒区、世田谷区、渋谷区、中野区、杉並区)
(11)株式会社アド近鉄(奈良県奈良市)
(12)BEAM MOBILITY JAPAN株式会社(新潟県南魚沼市、大阪府大阪市)
(13)Y´S商会(沖縄県名護市、豊見城市、今帰仁村、本部町)
(14)有限会社湯田工務店(鹿児島県鹿児島市)

 これら14の事業者すべてが、LUUPのようにひろく一般ユーザーに電動キックボードをシェアしているわけではなく、特定の観光地限定やマンション住民のみが利用できるなど、限定的な実証実験を行っているケースもある。

 なお、アプリ登録時に実施される10問の【交通ルールテスト】も、全国のシェア事業者で統一したものが使用されており、特例電動キックボードの道路交通法上の扱いや歩道走行の禁止、自転車専用通行帯などに関する問題が出題されている。全問正解しないと利用登録ができないが、テストは登録時の一回のみで、全問正解するまで何回でもテストを受けられる(2択問題)。

 さらに、免許証の提出も必須で、有効期限が切れると更新したあとの新しい免許証を登録するまでは利用できない。

■政府が許可しているのに?ここまでひどい特例ボードの違法行為

 特例電動キックボードに関わる省庁は、

・規制所管官庁→国家公安委員会及び国土交通省
・事業所管省庁→経済産業省(整備された規制の特例措置を希望する事業者に対して、事業所管省庁として新事業活動計画の認定を行っている)

 と、合計3つの省庁が関わっている。

 実証実験がスタートした2021年春以降、特例ボードでも野良ボードでも、街の中で電動キックボードが走る姿を見かける機会ががぜん増えた。ナンバー付き&ヘルメット無しで乗っている場合は、ほぼ特例電動キックボードだと思っていいだろう。

 そのいっぽうで、ナンバー無し、ヘルメット無しの「野良電動キックボード」も多い。ヘルメットあり、ナンバーありの正常な電動キックボードは30台に1台くらいの割合だろうか。

 野良ボードの悪行も気になるところだが、ここでは政府が認可している特例電動キックボード利用者の法令順守の意識の低さ、そもそもルールを知らないのではないか? と思える違法行為が日々発生している点を特に指摘しておきたい。

 繰り返すが、特例電動キックボードを運転するには、「小型特殊」以上の免許が必要となる。小型特殊だけを持っている人は少ないと思われるので、ほとんどは普通免許(原付や小型特殊含む)保持者だと思うのだが…。

 実例を挙げて紹介しておきたい。

(1)横断歩道で信号待ちをして乗ったまま渡る→車道へ

横断歩道を、電動キックボードに乗りながら渡ろうとする人
乗ったまま横断歩道を渡り、そのまま車道へ

 数日前に西麻布近辺で撮影された動画からの切り出し画像である。実証実験中の特例電動キックボードが歩行者と同様に信号待ちをして青になったらフツーに横断歩道を渡り、7割くらい渡ったところで、車道に入っている。電動キックボードはすべて、歩道、横断歩道を乗ったまま走行することは禁止されている。

 ちなみにこの場所では昨年(2021年)8月、ポルシェと野良ボードの衝突事故が起きている。野良ボードはナンバー無し、ヘルメット無し、免許無しで歩道を走っていた。警察や救急者も来ており電動キックボードに乗っていた女性にも連絡先など聞いていたはずだが…。事故の数日後に情報提供を呼び掛ける立て看板が設置されていた。

 動画提供者いわく、西麻布交差点周辺ではとにかく毎日のように特例ボードでも野良ボードでも横断歩道を乗ったまま走行する違法行為がみられるという

(2)雨の中、2人乗り×2台で走るLUUP

動画からの切り出し写真。電動キックボードに二人乗りしている。めちゃくちゃ危険

 10月9日夜9時半頃、場所は国立競技場(代々木)の周辺である。パーキングメータに停めたクルマのドラレコにその恐ろしい映像が記録されていた。

 雨+夜間で少し見えづらいが、最初の1台は2人とも立ち乗り、続く1台は運転者は立ち乗りだがそのすぐ後ろにしゃがんだ状態で乗っているのがわかる。2台×2人乗りというのはなかなか珍しい。当然だが特例ボードでも通常の電動キックボードでも2人乗りは厳禁である。

(3)10人に4人が飲酒運転?

 死亡事故発生後、9月29日に放送されたテレビ朝日「グッド!モーニング」では飲酒状態でのLUUP利用者を独自取材していた。その割合なんと3時間で10人中4人! 彼らにインタビューもしていたが、まったく罪の意識はなかった模様。24時間いつでもシェアできる特例ボードは、飲み会のあと終電を逃した若者たちに都合がいいのだろうか。車止めにぶつかって転倒し死亡した男性も飲酒、しかも酩酊状態だったという情報もある。

 これら違法行為に対してLUUPでは「警察への届出、処分の対象」としている。電動キックボードのハンドル中央部分に「注意事項」としてとても小さな文字で、

「歩道走行・車道逆走等の違反は警察への届出・処分の対象です」
「監視カメラ映像等で後日発覚した場合も警察への届出・処分の対象となります」

 と記されている。

注意事項には「警察への届出・処分の対象」と記されているが…おそらく飲酒運転をするような人は見ないのでは…)

■幹線道路の走行は禁止!

 意外と知られていない(?)のが、特例電動キックボードに走行禁止のエリアがあることだ。以下がその図で「23区実証実験実施エリア」の中の赤い線部分。ここは特例ボードでは走行できない道路となる。

東京23区内の実証実験エリア。「特例対象外区間」が設置されている

 ざっくりいうと都内では幹線道路の走行は禁止されている。24時間の自動車通行量が48,000台以上の「国道246」「明治通り」「国道1号線」「環7」「環8」「国道20号」「国道4号」などは特例電動キックボードでの走行が禁止されている「特例対象外区間」となる。

 とはいえ、これまで何度も国道246や環7、環8で実証実験中の電動キックボードを見かけたことがある。また、禁止されている横断歩道の乗ったまま走行、築地近辺では2-3台並んで歩道を楽しそうに走っている姿をたびたび見かけている。

 なお、政府が認可している実証実験は、各事業者からの中止申請や事業者の違法行為などがない限り、『特定小型原動機付自転車に関する改正道交法』が施行されるであろう令和6年(2024年)4月頃まで続く予定だ。

 クルマに乗る我々はとにかく無法者たちの違法行為に巻き込まれないよう、気を付けるしかないのだろうか。

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投稿 このままでいいのか!??? 飲酒、逆走、2人乗り、歩道走行…政府認可でも違法行為続出!! ついに特例電動キックボード初の死亡事故発生自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。