2022年10月3日、ダイハツタント、タントカスタムがマイナーチェンジされ、新たにアウトドア仕様のファンクロスが追加設定された。
すでに、タントはスーパーハイトワゴンを切り開いたパイオニアとして“OPEN JAPAN”、ファンクロスは“ひらけ、新時代アウトドア”というコピーでTVCMを見た方も多いのではないだろうか。
今回はタントカスタム、タントファンクロスの実車をショールームで徹底チェックしたので紹介していきたい。
文/ベストカーweb編集部
写真/ベストカーweb編集部、ダイハツ
■オラオラ顔、ギラギラ顔の人気は衰えていなかった
スーパーハイトワゴン市場のパイオニアとして知られるダイハツタント。ミラクルオープンドアといわれる、助手席側のBピラーレスドアがない解放感は抜群で、子育て世代のファミリー層や室内で着替えることの多いスキー&スノーボードユーザーなどから熱い支持を得ている。
とはいえ、ご存じのとおり、ホンダN-BOXが軽自動車販売において7年連続1位と独走。N-BOXは、センターピラーレス構造という一芸こそ持たないものの、燃料タンクを前席の下に搭載したセンタータンクレイアウトにより後席に長尺物が積載可能なことや570mmのロングスライド機構、座面がはねあがるチップアップ機構、背もたれを前に倒せばフラットな荷室となるダイブダウン機構も備わるなどが人気の要因となっている。
一方、タントは2014年に軽自動車の年間販売台数NO.1を獲得したものの、直近の2022年1~9月の累計販売台数では1位N-BOXが15万1594台、2位スペーシアが7万1530台、タントは6万5671台と3位に甘んじている。
1位はN-BOXが盤石だが、タントは1月2位、2月2位、3月4位、5月9位、6月6位、7月5位、8月1位、9月2位と、スペーシアと2位争いを繰り広げている。
”販売が伸び悩んでいてなんとか巻き返したい”という状況のなかで、今回のマイナーチェンジが行われ、カスタムのオラオラ度アップと、アウトドア仕様の追加となったわけだ。
まずはタントカスタム。いまや新車で販売されているミニバンは、押し出しの強い、いわゆるオラオラ顔、ギラギラ顔が人気傾向。軽自動車では、優しい顔のノーマル顔と、オラオラ顔のカスタム系に分かれ、それにアウトドア仕様が加わるのがトレンドとなっている。
そんななか、今回登場したマイナーチェンジモデルのタントカスタムは、大開口のフロントグリルと大型のフォグランプベゼルが特徴。
実車を見ると、まず台形グリルが目に飛び込んでくる。グリル上部こそメッキ加飾ではないため、スピンドルグリル(紡錘形)には見えにくいものの、レクサス風だ。上部のフロントグリルやヘッドライトの処理、大型のフォグランプベゼルなど、質感が高く、どことなく上質感が漂っている。
そこで、ダイハツ工業営業本部国内商品企画部の岩舘朋子さんに、マイナーチェンジモデルに何が足りなくて改良したのか、直撃してみた。
―オラオラ顔になりましたね。やはりオラオラ顔のほうが人気傾向にあるのでしょうか?
岩舘さん―2019年に発売したタントカスタムは、ダイハツとしてはチャレンジしたつもりでした。世の中、オラオラ顔、ギラギラ顔を忌避される傾向をキャッチしていましたので、ギラギラしていない比較的優しい顔で投入しました。
もちろん、喜んでいただけたお客さんはたくさんいらっしゃいましたが、それ以上に精悍さ、重厚さを好まれる方が多かったので、よりニーズに合致した形にリニューアルさせていただきました。
―スピンドルグリルのレクサスを意識してデザインしたのでしょうか?
岩舘さん―そのような声をたくさんいただきましたが、意識はしていません。台形、末広がりにしたデザインは他のクルマにはないと思います。とはいえ、もともと狙っていてギラギラしていない考え方は踏襲しています。
なるほど。優しすぎた顔を、ギラギラしすぎることなく上質にうまくまとめたというわけですね。たしかにスペーシアカスタムほどきつくはないし。好みの問題でしょうが、読者のみなさんはどのクルマが一番オラオラ顔に見えますか?
■活況の車中泊&キャンパー用4ナンバー軽商用バン市場のなかにあって5ナンバーの軽キャンパー「タントファンクロス」の存在意義とは
今、車中泊&キャンパー向けの4ナンバー軽商用バン市場は群雄割拠の戦国時代という状況だ。
2018年7月には、センターピラーレスのN-VAN、2021年12月には約17年ぶりにハイゼットカーゴがフルモデルチェンジし、同時にアトレーが5ナンバーワゴンから4ナンバーバンに移行。
そして2022年8月にはスペーシアベースが誕生した。そして荷室サイズはハイゼットカーゴに譲るものの、根強い人気を誇るエブリイというのが軽キャンパー市場の顔ぶれ。
しかし、4ナンバーの軽商用バンは、5ナンバー乗用ワゴンと比べて、自動車税や自動車重量税ほぼ半額になるものの、積載スペースの床面積が乗車設備の床面積より大きいことと規定されているため、後席は前寄りに装着されているほか、シート自体も薄かったり、前後調整ができなかったり、膝前スペースがほぼないといった点が指摘されている。
つまり、車中泊用に適しているとはいっても、もともとは軽商用バンだから、ソロキャンパーもしくは1~2人用として割り切る必要があるのだ。
そうした軽商用バン市場ではなく、3~4人のファミリー向けの軽キャンパーとして投入したのがタントファンクロス。
さっそく、ファンクロスが誕生した背景について前出のダイハツ工業営業本部国内商品企画部の岩舘朋子さんに聞いてみた。
―アトレーバンやハイゼットカーゴとの差別化は?
岩舘さん―本格的な軽キャンパーはアトレーがあります。タントファンクロスは、普段はお子様やファミリーを送迎したりと日常使いをメインにしつつ、週末はレジャーやデイキャンプに行かれる方を想定しています。
では商用バンと、乗用ワゴンでは、積載スペース以外では何が違うのだろうか? ダイハツ工業くるま開発本部製品企画部の城迫崇嘉さんに聞いてみた。
城迫さん―やはりエンジンの搭載位置が乗用ワゴンと商用バンでは違います。商用バンは最大積載量350kgと積載量は大きいのですが、前席下にエンジンがあるので静粛性が低く、フロアが高くなってしまいます。それに商用バンのシートは薄いですが、タントファンクロスはベースのタントと同じで厚く、足回りも同じなので乗り心地も快適です。
―燃費は向上していますか?
城迫さん―ストップ&ゴー含めて実用域のエンジン制御、コンピュータを改良し、標準車で22.7km/Lにアップしています。クラストップの数値です。
たしかにスズキスペーシア・マイルドハイブリッドのWLTCモード、22.2km/Lより0.5km上回っている。マイルドハイブリッドなしで超えてきたのは凄い!
軽乗用ワゴンのアウトドア仕様というと、2018年12月に登場したスペーシアのほうが先だが、それよりも先、2014年11月に発売されたダイハツウエイクがあったのだが、残念ながら2022年8月11日をもって生産終了となった。
タントの上をいく=うえいく=ウエイクが車名の由来でまさに飛び道具満載だったのになぜ生産終了したのか? 全高が高過ぎた、車重が重すぎた、乗り心地が悪すぎたといった説が飛び交っていたが、なぜ生産終了したのか、ついでながら聞いてみた。
城迫さん―今年10月から施行された法規対応のために生産終了させていただきました。車外騒音規制に対応できなくなったためです。
■はたしてN-BOX、スペーシアの販売を超えることはできるか?
タントのマイナーチェンジモデルは、2022年8月22日に先行予約を開始、10月初旬までの受注台数は、月販目標台数1万2500台に対し、約2万8000台を受注、好調なスタートを切っている。
ちなみにマイナーチェンジモデルの開発段階における販売割合はカスタムが45%、標準が35%、ファンクロスは25%という比率を予想。ふたを開けてみるとカスタムが55%、新モデルのファンクロスは約25%にあたる約2800台を受注したという。今後、現車を見る機会が出てくるため、ファンクロスの受注台数は全体の3割を超えると予想している。
全軽自協のデータによると、直近9月の販売台数は、1位のN-BOXが1万9411台(前月11130台、前月比174.4%)、2位のタントが9878台(前月5120台、前月比192.9%)、3位スペーシアが8619台(前月6751台、前月比127.7%)と、タントが前月比192.9%と大幅に伸びているのがわかる。
もちろん、発売したばかりだからまだなんともいえないが、カスタムおよびファンクロスの仕上がりを考えると、販売台数増に寄与することは間違いなく、N-BOXに次ぐ2位の位置をキープしそうだ。
■2022年1~9月軽自動車販売台数
●スーパーハイトワゴン
1位:ホンダN-BOX=15万1594台
2位:スペーシア=7万1530台
3位:タント:6万5671台
●商用バン
1位:ハイゼットカーゴ=6万7477台
2位:エブリイバン=4万5965台
3位:N-VAN=2万4774台
4位:スペーシアベース=2414台(2022年8月26日発売)
※乗用ワゴンのエブリイワゴンは1万1086台
※全軽自協「2022年1月~9月通称名別新車販売台数」なぜかアトレーバンのデータはなし
投稿 背水の陣! レクサス風オラオラ顔「タントカスタム」とファミリー向けデイキャンパー「タントファンクロス」はライバルを超えたか? は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。