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 右に膨らんでから左折をする車を見かけたことがありますか? ダメな左折の事例として烏山自動車学校がツイッターなどに投稿した「最高にダメな左折」が大きな話題となりました。わずか4秒の動画ですが、ダメな要素が多く含まれている映像です。

 今回は、そんなダメな左折を分析するとともに、本来の左折の方法や左折に関連するさまざまな危険性について解説します。

文/齊藤優太
写真/齊藤優太、PhotoAC、Adobe Stock(トップ画像=Haru Works@Adobe Stock)

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■よくみかけるダメな左折

危険な「右振り左折」の様子。一度大きく右に振ってから左折を行っている

 まず、左折時によくやってしまったり、見かけたりするNG行為を6つ紹介します。

・窓から手を出して片手ハンドルで運転する
・合図(ウインカー)しない
・道路の左端に沿って左折していない
・徐行していない
・右側通行
・安全不確認(巻き込み確認等)

 これらの行為を運転免許試験の基準に照らし合わせてみると、減点や試験中止(一発アウト)に当てはまります。

 窓から手を出したり、片手ハンドルで運転したりすると、運転姿勢不良となるため減点です。また、合図(ウインカー)を出さずに左折すると、合図不履行で減点となります。さらに、左端に寄って徐行せずに左折をした場合、右左折方法違反や安全進行違反となるため減点です。

 右振り左折でよく見る左折直前・直後の対向車線への侵入は、右側通行となります。右側通行は試験中止事項、つまり一発アウトです。加えて、左折するときに歩行者・自転車等がいないか、安全に左折できるか、という確認をしないのも原点となります。

 このように、よく見かけることがあるダメな左折を試験の基準に当てはめると、減点や中止事項(一発アウト)となる項目が多いのです。

■法律に定められている左折の方法とは?

「交通の方法に関する教則」に定められている本来の左折方法には曖昧な表現が多く、ドライバーごとの認識で「オリジナル左折」になっているケースが目立つ(PhotoAC)

 道路交通法や国家公安委員会が作成している「交通の方法に関する教則」に定められている本来の左折方法は、「あらかじめできるだけ道路の左端に寄り、交差点の側端に沿って徐行しながら通行しなければならない」となっています。

 わずか一文で表現される左折方法には、「あらかじめ」をはじめとした曖昧な表現が多いです。そのため、ドライバーごとの認識が異なり、それぞれのオリジナル左折になっているケースが多いといえるでしょう。

 左折方法を具体的な表現に言い換えると、「交差点を左折するときは、交差点のおおむね30m手前までに、できるだけ道路の左端に(区画されている場合は区画されている部分まで)寄っておき、すぐ止まれる速さ(徐行)で端に沿って通行する」となります。

 ここでは、左折の方法について言い換えましたが、実際にはあらかじめ左に寄るための合図(ウインカー)や進路変更も行わなければなりません。

 また、ここで解説している内容は、道路交通法に定められている原則です。実際の道路では、周囲の交通の状況や道路形状などによって、合図のタイミングを変えたり、道幅が狭いためにあらかじめ左に寄る進路変更ができなかったりする場面もあります。

 左折だけでなく運転するときに大切なのは、法律で定められている「原則」があることと、状況に応じた「例外」があるということです。例外が原則になってしまうと、トラブルや事故の原因にもなるため、原則と例外は区別しておくことが重要となります。

■左折時に潜む危険を少しでも減らすためにあらかじめ左に寄っている

特に初心者や運転に慣れていないドライバーは右折を嫌う傾向があるが、注意を向けるべき対象物がおもに前方にある右折と違い、左折時の危険は背後や側方から迫ることが多い。より繊細な心配りが求められるのが左折なのだ(筆者撮影)

 左折をするときにあらかじめ左に寄る目的は、「巻き込み事故の防止」や「後続車のために進路を開けておく」などです。

 自転車やバイクなどの二輪車は、わずかな隙間に入り込んで前に出ようとすることがあります。このような二輪車の侵入を防ぐために、あらかじめ左によっておくことが大切です。しかし実際の道路では、是が非でもすり抜けようとする二輪車がいます。そのため、左に寄ったからといって完全にすり抜けを防止することはできませんが、すり抜けの数を減らすことはできます。

 また、左折時にあらかじめ左に寄っておくと、後続の直進車が通りやすくなり、交通の流れがスムーズになりやすいです。このような理由から、左折するときはあらかじめ左に寄っておく必要があるといえるでしょう。

■左折する中型車や大型車には注意が必要

 中型車や大型車は、左折時に右に膨らんだり、後輪よりも後部のオーバーハングが右に振り出したりすることがあるため、側方を通過するときに注意しなければなりません。

 左折して入ろうとする道路の幅が狭かったり、左折した先のスペースにゆとりがなかったりする場合、中型車や大型車は左折直前に右振りすることがあります。そのため、左折しようとしている中型車や大型車の側方を通過するときは右振りに注意しましょう。

 左折した先の対向車線の停止線が交差点からだいぶ手前にある場所や道幅などのスペースにゆとりがある場所の場合、中型車や大型車も道路交通法に定められている左折方法で曲がることができます。

 ただし、中型車や大型車は、右振りする必要がない場合でも、後輪よりも後部のオーバーハングが大きく振り出す可能性が高いです(大型車・中型車・牽引免許の試験では、振り出し確認をしなければ減点となります)。そのため、左折中の中型車や大型車の側方を通行するときは振り出すオーバーハングにも注意しなければなりません。

■「ダメな左折」は「危険な左折」

冒頭で紹介したような「ダメな左折」をしないためにも、道路交通法に定められている正しい左折方法(原則)を理解し、実践することが大切(PhotoAC)

 普通自動車の免許で運転できる車の多くは、左折するときに右振りする必要がありません。

 左折するときに右振りをすると、二輪車を巻き込みやすい状況になるだけでなく、後続の直進車を驚かせてしまい、通行の妨げになってしまうこともあります。つまり、ダメな左折は、さまざまな危険を生む左折だといえるでしょう。

 危険な左折をしないためにも、今一度道路交通法に定められている正しい左折方法(原則)を理解することが大切です。また、原則と例外があるということも合わせて理解しておくことも必要だといえるでしょう。

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投稿 こんな危険な「左折」していませんか? 「あおり左折」と呼ばれるダメな運転に潜む罠に迫る!!自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。