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 これが本当なら衝撃の事実としか言いようがない。マツダの販売店情報筋によると、マツダ3とCX-30に設定している同社肝いりのユニット、SKYACTIV-X搭載車の販売頭打ち傾向が顕著になり、今後の存在基盤が揺らぎそうな趨勢となっているからだ。

 マツダ3は今年8月に実施された一部改良で、直噴エンジンにマイルドハイブリッドを組み合わせた廉価バージョンを設定しているが、SKYXCTIV-X搭載車の存在感がますます薄くなる傾向にある。そこで、販売店筋では「近い将来、SKYACTIV-X車は生産中止に追い込まれるのではないか」と危惧しているとまことしやかな噂が流れているというが、その真相やいかに?

文/国沢光宏、写真/ベストカー編集部

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■搭載するのはマツダ3とCX-30だが……

マツダがその持てる技術の粋を結集して開発した究極のエンジンがこのSKYACTIV-X。それが今、岐路に立たされている!?

 驚いたことに最近、マツダ渾身の技術である圧縮着火エンジン、「SKYACTIV‐Xは大失敗らしい」という話がジワジワ広まり始めているという。なぜ驚いたのか。そんなこと私は最初からわかっていたからだ。

 そもそも発売前にSKYACTIV-Xのスペックを見た時点で「メリットあるの?」と私は書いた。そして価格が発表されるや、「売れるワケない」とさまざまなメディアでダメ押しした。このまま自然消滅に向かう可能性も。

 まず、販売状況をチェックしてみよう。マツダはSKYACTIV-X搭載車の販売比率を公表していないのだけれど、発売半年後で10%程度という話を聞いた。現在、CX-30とマツダ3に搭載されているものの、そもそも搭載しているクルマの販売台数からして厳しい。2022年6月に突然降板した前副社長が仕込んだクルマはMX-30などを含めすべて低迷。販売比率を直近も10%と仮定する。

 ふたつのモデルを合計して年間3万台程度。SKYACTIV‐Xは10%なら年間3000台。月あたり300台以下ということになる。

■ガソリンとディーゼルのいいとこ取りのSKYACTIV-X

走りのよさと燃費のよさを両立するとみられたSKYACTIV-Xだが、簡易型ハイブリッドの2Lエンジンと比較してもその差はわずかだった

 今さら説明するまでもなく、SKYACTIV-Xが実用化した圧縮着火はエンジン屋さんからすれば夢のような技術。よくぞ市販できたと世界中のエンジン技術者から評価された。そういった意味じゃ開発責任者の人見光夫さんは凄い。ただ、巨額の開発予算を使った。

 そしてここからが大切なのだけれど、理想を追求するあまり驚くほどコストのかかったエンジンになり、一方、その性能差はわずか。圧縮着火のメリットであり、開発目標だった燃費は簡易型ハイブリッド搭載のCX-30がWLTCモードで16.1km/L。20万円以上高くなるSKYACTIV-Xだと17.4km/Lで大差なし。いや、後者はハイオク使用時の燃費であり、レギュラーだと差は縮まる。

 それでいてエンジンを見ると、圧縮着火のほうが圧倒的にコストがかかっている。スーパーチャージャーも付いているし、リーンバーンなので触媒だって高価。20万円差は開発コストを上乗せせず、部品代の差だけの価格設定だと思う(SKYACTIV-Xの発売当初は70万円ほど高い価格設定だったけれど売れゆきが伸びなかったため、途中で大幅値下げした)。開発予算、どうするんだろう。

■新世代FRラージモデル第1弾、CX-60には設定なし

マツダ新世代FRラージモデルの第1弾、CX-60。しかし、そのエンジンラインナップにSKYACTIV-Xの名はない

 意外だったのはCX-60にSKYACTIV-Xを搭載してこなかったこと。ガソリンの6気筒についちゃ当然ながら圧縮着火だと思っていたら、日本市場ではラインナップしてこなかった。欧州仕様として販売されるようだけれど、開発コストを回収できるような台数かといえば難しいんじゃなかろうか。そもそも欧州の場合、エンジン搭載車の販売禁止まで秒読みに入った。

 圧縮着火エンジンは今後どうなるだろう? 前述のように開発を強行してきた前副社長が突如退任し、圧縮着火エンジン担当者は年齢で現場を離れた。当たり前ながら、マツダにだってクルマを評価できる人はたくさんいる。

 マツダ幹部に聞いてみたら「社内でも最初から商品としては厳しいという声が出ていました」。つまり、わかっていても前副社長に反論できなかったということらしい。

 冷静になって評価すると、1)燃費5%いいけれどリッター11円高いハイオク仕様のため大差なし。2)出力を見ると10%少々高いが、前副社長の強い意向でエクステリアを変えることは許されず、3)プレミアム感やスポーティさを出すことも禁止されていたため商品的な魅力なし、ということになります。SKYACTIV-X絶版になるというウワサは当然だと思う。

■まだまだ伸びしろは残されているはず

CX-30のSKYACTIV-Xエンジン搭載車。マツダ車のなかでスポーティエンジンという位置づけなら商品力は高くなると筆者は指摘する

 では、本当に絶版になるかと聞かれれば「そんなことない」と考えます。圧縮着火エンジンはまだ性能向上の余地を持つ。200psを超えてくるようになると、高回転域での伸び感だって出てくることだろう。そうなったらスポーティエンジンという位置づけにすればいい。

 今や燃費規制CAFEのため、高性能エンジン搭載が難しくなってきた。圧縮着火なら両立できる可能性を持つ。

 といったことを現在のマツダの経営陣は考えたんだと思う。圧縮着火エンジンを搭載するマツダ3やCX-30のエクステリアを派手にしたり、車高アップなどして存在感を出したりすることで商品力の大幅アップが可能。

 20万円高なら売れる。地味なマツダ3ながら、アメリカでは直4、2.5Lのターボエンジンを搭載してヒットさせた。巨費を投じて開発したエンジンなので、簡単に諦めるのはもったいないと思う。

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