2011年に登場した初代アクアは、発売から1カ月で12万台の受注を叩き出し、何度も新車販売ランキングのトップに立った大ヒットモデルだ。2021年7月にフルモデルチェンジし、現行の2代目アクアが誕生した。
性能は大きくブラッシュアップされ、2代目アクアは大ヒットが期待されていたのだが、元気がないまま登場から1年が経過する。初代の勢いはどこへいったのか、販売台数も低空飛行だ。
発売から1年経過したアクアの「今」を評価していきたい。アクアが苦戦する理由を解き明かし、その魅力を改めて考える。
文/佐々木亘、写真/TOYOTA、ベストカー編集部
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「いい」はずだったアクア
「どんな人にも、どんな時でもいい」をコンセプトに登場した2代目アクア。発表後の2021年9月には、1万1137台を販売し、乗用車ブランド通称名順位でヤリスに次ぐ2位を獲得している。
しかし、その後は失速。2022年3月まで、販売台数は7000台から8000台を行ったり来たりだ。2022年4月にはコロナや半導体不足など、生産台数減少の影響もあり、販売台数は2693台にまで落ち込み、ランキングも18位と下降する。直近7月は5168台でギリギリトップ10圏内を維持している状況だ(編注:8月では10位4456台だった)。
ランキング上位には同門のヤリス・カローラ・ルーミー・ライズが並ぶ。この4台の好調さとは裏腹に、アクアはイマイチ調子が出ない。この原因がどこにあるのだろうか。
2代目アクアはコンパクトカーと勝負できない? 上位車格と比べることで見えてくる良さとは
5ナンバーサイズに収まりコンパクト、ハイブリッドで燃費が良いというのが初代アクアだった。しかし、今や当たり前となったハイブリッドは、アクアだけの特徴ではなくなり、ボディサイズや燃費も、軽くて小さいヤリスに勝てない。
先代のアクアが持っていたアドバンテージは今、すべてなくなってしまったのだ。
コンパクトカーで比較すれば、アクアよりも優れた存在は多い。ボディサイズや燃費で比較されるこのカテゴリーでは、アクアの優位はなくなったに等しい。全長4m以下のコンパクトカーたちとは、勝負することを諦めたほうが良いと思う。
アクアの全長は4050mmでヤリスよりも11cm長い。ホイールベースはヤリスより5cm長くなっており、車内に入ればゆとりある空間が広がる。前後席ともに、充分な広さを感じられ、荷室もコンパクトカーの部類では広い方になるだろう。
乗り味はしっとりとしており、直進安定性が高い。よって長時間のドライブでも疲れにくいのだ。家の近所を買い物で運転するよりも、家族みんなで遠方へお出かけしたほうが、アクアの良さを感じられる。
アクアのライバルはヤリスではないと筆者は思う。カローラスポーツやプリウスといったCセグメントモデルを追いかけるべきだろう。ショートワゴンやミドルセダンを相手に戦うほうが、アクアの良いところが多く見えてくるのだ。
アピール方法を変えて販売回復! アクアに課された今後の課題
筆者は先日、整備代車でアクアに乗る機会があった。愛車の30系プリウスと比較して「アクアでも充分だな」と妙に納得してしまったのが印象的であり、プリウスの代わりになり得ると感じられたのだ。
これまで、プリウスからアクアへの乗り換えは「格下げ」と思っていた。しかし、実際にアクアに乗ると、プリウスと大きな遜色はない。さらに、取り回しの良さや燃費性能が高く、プリウスよりも優位に感じる部分も多かった。特に単身者や夫婦二人のツーシーター使いでは、Cセグメントモデルと比べたときに、アクアの良さが際立つ。
販売現場では、まだまだコンパクトカーとしてアクアを売り込む姿が多くみられる。この考え方を大きく変え、アクアのイメージを最低でもカローラシリーズと同レベルまで引き上げたい。乗り換えのターゲットを、コンパクトカーではなく、Cセグメント以上のミドルサイズカーに変えていきたいのだ。
アクアはプラットフォームの刷新、バイポーラ型ニッケル水素電池を使ったハイブリッドシステムで、上位セグメントとも充分勝負できるクルマになった。売り手側がアピールする市場を変えることで、アクアへの評価は大きく高まるはずだ。
発表当時からアクアへの試乗を数多く勧めてきた営業マン曰く、アクアはマークXやクラウンなどのセダンから乗り換えるクルマに充分なるという。乗ればわかってもらえるのが、アクアの魅力のようだ。
現在、充分な評価を受けられていないアクア。上位モデルと勝負することで、復権を果たしてもらいたい。クルマの完成度や質感は非常に「いい」のがアクアだ。大きなクルマに対して、小さいということを武器に戦う。これがこれからのアクアの戦い方だと筆者は考える。
1年間、先代の築き上げた階級で厳しい戦いをしてきたアクア。今後は、階級を一つ上げ、華々しい活躍を見せてくれることだろう。
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