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新型CX-60驚異のスペック!! このご時世に直6ディーゼル3.3L燃費18.5km/Lの凄さの中身

 マツダの新世代商品群の第1弾となる「CX-60」が、9月15日から発売となりました(e-SKYACRIV D、その他は12月発売予定)。CX-60の注目ポイントは、なんといっても3.3L直列6気筒のディーゼルエンジン「SKYACTIV-D」。その燃費はなんと18.5km/L(1840kg、4WD)を達成します。

 3.3L直6ディーゼルという大きなエンジンを積み、またボディも比較的大きなCX-60で、なぜこのような優れた燃費性能を実現できたのでしょうか。

文:Mr.ソラン、エムスリープロダクション
写真:MAZDA

【画像ギャラリー】3.3L直6ディーゼルで燃費18.5km/Lてマジか!!  第2世代スカイアクティブDを搭載する、マツダ「CX-60」(15枚)画像ギャラリー

CX-3とほぼ同等の燃費

 マツダの新世代商品群の第1弾である「CX-60」は、パワートレインを縦置きとした後輪駆動ベースの専用シャシーを採用。エンジンはなんと4種類あり、2.5L直列4気筒のNA(無過給)ガソリンエンジンの「SKYACTIV-G2.5」と、そこへPHEVを組み合わせた「e-SKYACTIV PHEV」、3.3L直列6気筒ターボディーゼルエンジンの「SKYACTIV-D 3.3」と、それにマイルドハイブリッドを組み合わせた「e-SKYACTIV D」です。

 なかでも注目の3.3L直6ディーゼルエンジンですが、冒頭でも触れたように、驚異の燃費性能を達成しており、SKYACTIV-D 3.3(1840kg、4WD)が18.5km/L、マイルドハイブリッドのe-SKYACTIV D(1910kg、4WD)が21.1km/Lを達成します。

 現在市販されている国産乗用車は、マツダ車を除いてはディーゼルエンジンを搭載したクルマが少ないため、他社との比較は難しいですが、同社のSKYACTIV-Dで燃費性能を比較してみると、「CX-5」の2.2L直4のSKYACTIV-D 2.2(1710kg、4WD)が16.6km/L、「CX-3」の1.8L直4エンジンSKYACTIV-D 1.8(1370kg、4WD)が19.0km/Lと、CX-60のSKYACTIV-D 3.3は、コンパクトなCX-3 SKYACTIV-D 1.8とそれほど変わらない、驚異的な燃費性能だということがわかります。

 ちなみに輸入車のSUVだと、BMW X5 35d(3.0L直6ディーゼル)のWLTC燃費が12.4km/L、メルセデスGLE 400d 4MATIC(3.0L直6ディーゼル)は11.9km/Lですので、これらも勝負になりません。

 CX-60が燃費性能に優れるのには、主に3つの要因が考えられます。

3.3L直列6気筒ターボディーゼルエンジン“SKYACTIV-D 3.3”。マツダが独自に開発したDCPCI(空間制御予混合燃焼)などを適用して、1.8Lディーゼルエンジン並みの排ガスと燃費を達成

大排気量ほど有利となるディーゼルの利点を生かした3.3L

 エンジンの排気量を大きくした場合に、燃費に影響を与えるエンジンの因子は、ポンピング損失とエンジンフリクション、熱損失です。

 ガソリンエンジンは、スロットル開度で吸入空気量を調整して出力を制御します。大きなエンジンで同じ運転条件を走行しようとすると、スロットルを絞ることになるのでポンピング損失が増え、またエンジンが大きくなると構造上エンジンフリクションも増えます。排気量が増えると燃焼室のS/V比(表面積/容積)が小さくなるため、熱損失が減少して燃費に有利に働きます。なかでも、ポンピング損失の影響が大きく、ガソリンエンジンでは排気量が2Lを超えて大きくなると、一般的には燃費は悪化傾向になります。

 ただ、ディーゼルエンジンは、基本的にはスロットルを持たず、空気量でなく燃料量で出力を制御します。スロットルがないので、ポンピング損失の悪化はなく、フリクションは増加しますが、熱損失は減少するので、ディーゼルエンジンでは排気量を大きくしても、燃費の悪化は小さく、条件次第では良化する傾向があるのです。

 ディーゼルエンジンは、大排気量に向いたエンジンであり、ボア径が1メートルを超えるような船舶用ディーゼルエンジンの熱効率は、50%を超えるものも珍しくありません。CX-60は、燃費や出力などトータルのバランスをみて、排気量3.3Lを選定したのでしょう。

出力を抑えて、燃費と排ガスを改善

 エンジンスペックをみると、3.3L直6エンジンは、2.2L直4エンジンに2気筒を追加して開発されていることが分かります。排気量が1.5倍になったので、大まかにいえばトルクも1.5倍になるはずですが、3.3L直6エンジンの最大トルクは1.25倍程度に抑えた設定とされています。

 ディーゼルエンジンは、排気量が増えた分だけ燃料量を増やせば、出力は増大します。しかし、燃料を増やすとその分だけ高負荷域の燃費は悪化し、排ガスも悪化します。3.3L直6エンジンでは、あえて出力を上げずに燃料を絞りながら、吸入空気量とEGR(Exhaust Gas Recirculation=排ガス再循環)を増やすことでリーン(混合気が薄い)な燃焼の運転領域を増やし、排ガスと燃費の改善を図っています。

 簡単にいえば、出力を抑えてその分を燃費と排ガスの改善に振り向けているのです。また、最大トルクを抑えればシリンダ内圧力も下がるので、エンジン各部の強度と剛性に余裕ができ、軽量化によるフリクション低減も可能となります。

新燃焼方式「DCPCI」の採用

 SKYACTIV-D 3.3で特筆すべき技術は、DCPCI(空間制御予混合燃焼)と称する新しい燃焼方式です。DCPCIとは、あらかじめ十分に混合されたリーンな混合気を、上死点付近で一気に燃焼させ、燃費と排ガスを低減する手法です。SKYACTIV-D 3.3では、この燃焼制御技術をベースにして、優れた燃費性能と尿素SCR(NOx低減触媒)を不要とするクリーンな排ガス性能を実現しているのです。

 ディーゼルエンジンは、シリンダ内の高温になった圧縮空気中に、微粒化した高圧の軽油を噴射し、蒸発した軽油が自着火する圧縮自着火燃焼です。したがって、燃焼室内には混合気の濃淡(リッチ/リーン)が発生しやすく、局所的に酸素不足の領域ではスモークが、燃焼温度が高い領域ではNOxが発生します。排ガスが悪化すると、規制値内に排ガスを収めるチューニングが必要なため、結果として燃費も悪化してしまいます。逆の言い方をすると、排ガスを下げることが、燃費を良くすることにつながるのです。

 SKYACTIV-D 3.3では、DCPCIを成立させるために、次の4つのテクニックが使われています。

・2段Egg燃焼室ピストン
ピストンのキャビティ(窪み)を上下2つに分割、噴射された噴霧が干渉しないようにして燃焼室内の空気利用率を上げて全体としてリーンな燃焼を実現
・高圧噴射
噴射圧力を250MPaまで上昇させ、軽油噴霧の微粒化を促進して着火性を改善
・多段噴射
運転条件に応じて、1回の燃焼行程での噴射を最大5回に分割して、燃焼室内の混合気を均一化
・エンジンのカプセル化
上死点で急速に燃焼させるDCPCIでは、ディーゼル特有の燃焼音が増大しやすくなるため、エンジン全体を包み込むカプセル化を実施

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 希少な存在となっている直6縦置きFR(4WD)車として注目されているCX-60のディーゼル車ですが、エンジンの燃焼制御技術にこだわっている点はマツダらしいですね。マツダは、SKYACTIV技術で内燃機関に磨きをかけて、「内燃機関+電動化技術」で勝負に出ています。その意味でも、CX-60の売れ行きは気になるところです。

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