北米カーオブザイヤー主催団体はこのほど、「2023北米カーオブザイヤー」の第2次選考10車種を発表した。それによると、アキュラインテグラ、や日産フェアレディZ、スバルWRX、トヨタクラウン、トヨタGRカローラなど10車種となり、日本車が5台(インテグラのみ海外専売)も入った。
ちなみに前回の受賞車は現行型シビックだったのだが、今回のイヤーカーではどの日本車が最も受賞する可能性が高いのか、海外事情に詳しい桃田健史氏に占ってもらった。
本文/桃田健史、写真/TOYOTA、NISSAN、HONDA、SUBARU、ベストカーWeb編集部
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■2次選考10車のうち半分は日本車に
今年もカーオブザイヤー(COTY)選考シーズンに突入した。といっても、今回は日本ではなく北米での話だ。
北米カーオブザイヤー主催団体は2022年9月14日、「2023年北米カーオブザイヤー」の第2次選考を行い、10モデルを公開した。アメリカでは毎年春過ぎに”イヤーモデル”として自動車販売店がメーカーから新車を仕入れる仕組みで、2022年春過ぎに導入される新車は「2023イヤーモデル」と称される。
発表によると10モデルは、アキュラ「インテグラ」、BMW「i4 eDrive40」、ジェネシス「G80 EV」、ジェネシス「G90」、メルセデスベンツ「Cクラス」、メルセデスベンツ「EQE」、日産「フェアレディZ」、スバル「WRX」、トヨタ「クラウン」、そしてトヨタ「GRカローラ」という顔ぶれだ。
このように半数を日本車が占めているのだが、最も気になることは、欧韓モデルは時代を反映してBEV(電気自動車)がメインになっているのに対して、日系モデルはスポーティ性を強調するモデルが主役である点だろう。北米市場にかぎらず、自動車産業はまさに時代の変わり目に差しかかっていることを実感する。
■米国ではBEVなど電動化が重視されるが……
では、これからの先の選考に対して、アメリカでは何が最も重要視されるのだろうか?
ひとつは、やはり電動化だ。
バイデン大統領は2021年8月、自動車の電動化に対する大統領令を発令しているからだ。現在のところ、「2035年までに乗用分野での50%以上をBEV、燃料電池車、プラグインハイブリッド車にする」という具体的な目標を定めている。
これは、欧州連合(EU)の執務機関である欧州委員会(EC)が2021年に公開した「2035年に欧州域内での乗用車と小型商用車は(事実上)BEVまたは燃料電池車のみとする」という提案を念頭に置いたものだ。
ただし、2022年6月時点では、欧州自動車産業界から「充電インフラの拡充や、自動車部品業界の実状を踏まえると、市場の実態を把握した現実的な方策に修正する必要がある」という声が高まっている状況だ。
こうした欧州での流れを受け、アメリカでもBEVの拡大については、アメリカの社会実情を充分に考慮したうえで自動車メーカー各社と各州政府、そして充電インフラ事業者がより深く連携する必要がある、という流れになることが予想される。
つまり、北米市場に対する影響力が強い北米COTYについても、技術に関するアワードとしてBEVが選ばれる可能性は充分にあるとしても、北米COTYがBEVになることには、「もうしばらく市場の様子を見ていく必要があるのではないか……」という空気が、北米自動車業界のなかに流れていてもおかしくはない。
加えて、自動車産業界全体としてのBEV化の急激なトレンドは、前述のように欧州が起点であり、その先ゆきに不透明感が出始めている現状で、非BEVの欧州車を北米COTYに掲げることに抵抗感を持つ人もいるかもしれない。
■本命モデルは果たして……フェアレディZが有力か
そうなってくると、BEVとしての選考モデルがない、日本車が北米COTYを獲得する可能性が高まってくるといえるだろう。
そのなかでの最有力候補は、やはり「フェアレディZ」である。
アメリカでは1970年代前半に登場し、「Z(ジィー)カー」として広い世代に愛されてきたことは、日本でも広く知られているところだ。
当時のアメ車スポーツカーと比べると、ボディサイズが小さく、デザインが洗練されており、走行性能が高く、それでいて価格がリーズナブルだったことが初代Z(S30)が大ヒットした理由だと日産は分析している。
その後、フェアレディZは進化し、最新モデルでは「グローバル販売の8割以上、9割近くが北米市場向け」(日産開発者)というのが実状であり、商品企画の過程では当然、アメリカのZユーザーの声を重視してきた。
となれば当然、フェアレディZが北米COTY受賞の期待は日産のみならず、Zユーザーの間でも高まっているところだ。
■WRX、GRカローラ、もしやクラウンの可能性も……!?
また、スバル「WRX」、またはトヨタ「GRカローラ」という可能性もあり得るのではないだろうか。
フェアレディZに比べれば当然、走りが尖った本格的なパフォーマンスカーという位置づけだが、前述のようにBEV化を模索する動きが北米で広がるなか、こうしたパフォーマンスカーの北米COTY受賞は、それそろ”ラストチャンス”になるかもしれないからだ。
さらに、大どんでん返しとして「クラウン」がある。
50年ぶりに北米市場に復活という話題性に加えて、クルマのセグメントとしてみると、北米市場の主体が近年、C/DセグメントセダンからミッドサイズSUV、さらにコンパクトSUVに大きくシフトしているなかで、新種のクロスオーバーという新たなる領域を切り開くという開拓者精神を称えて、クラウンの北米COTYという芽もゼロではないのではないだろうか。
また、日本では未発売になりそうなインテグラの存在価値は、1990年代末にアメリカで巻き起こったジャパニーズ改造車ブームを起点とする。アメリカでの新たなるクルマカルチャーを創ったという観点では10候補に選ばれたことは意味深い。
以上、あくまでも私見により北米COTYの行方を占ってみた。
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