9月17日、宮城県のスポーツランドSUGOで行われたスーパーGT第6戦『SUGO GT 300km RACE』の公式予選。残念ながらK-tunes RC F GT3のタイム抹消により、フロントロウはSUBARU BRZ R&D SPORT、SYNTIUM LMcorsa GR Supra GTというダンロップタイヤを履くGT300規定の2台が占めることになった。ただ予選後、2台のドライバーたちからは午前の公式練習から午後の公式予選までのコンディション変化に対する興味深いコメントも聞かれた。
通常、モータースポーツでは走れば走るほどコンディションが良くなり、タイムが上がる。ドライコンディションのスーパーGTの予選日で言えば午前の公式練習から午後の公式予選までの間に、路面にタイヤのラバーが乗りグリップが向上。タイムも上がる。
ただ今季、GT500でもGT300でも、午前から午後までのタイムの“上がり幅”がすごいのだという。結果的にポールポジションになった山内英輝に聞くと、「午前の公式練習の感触からすると、このタイムは想像つかなかったです。ダンロップユーザーはみんな思っているかもしれませんが、僕たちがいちばん不思議です(笑)」という。
これについてはチームメイトの井口卓人も「上がり幅がすごい。グリップ感がぜんぜん違うんです。午前中はQ1はギリギリだと思っていたんですが、朝とぜんぜん違う。今年は予選になるとほぼ全コースで違います」と口を揃える。
実際にベストタイムだけを見比べても、午前に山内が記録したタイムは1分19秒127。井口は1分19秒865だった。午後のタイムは井口が1分18秒613、山内は1分17秒691まで上がっている。1.5秒タイムアップしていると、ドライバーの体感は相当大きいはずだ。
「基本的に、Q2で僕がいかせてもらっていますが、そのグリップ感はぜんぜん変わります。GT500が走った後のラバーは、今までにない上がり幅がある」と山内は言う。
不思議というべきか、2番手のSYNTIUM LMcorsa GR Supra GTのドライバーたちも同様のコメントを残した。「なんでこんな速いのか分からないんですよ。午前はタイヤ使わない方がいいんじゃないか? ってくらい(笑)。もちろんセットアップも変えたりしていますが、なぜか予選になるとグリップするんですよ」というのは河野駿佑。
「もちろん予選日の前にはこの順位は狙っていましたけど、午前に走った段階では『Q1がヤバいかも』と思っていたくらいでした」
これには吉本も「公式練習はいったいなんなの? ってくらい」と同意する。実際、SYNTIUM LMcorsa GR Supra GTでも公式練習からQ1の吉本で1.1秒ほど、Q2の河野に至っては1.9秒ほどタイムが上がっている。この4名のコメントは各チームごとに取材したのだが、似通ったコメントが出てきたのは驚くばかりだ。また、他のコースでもほぼ同様の上がり幅がある。
ただ、おそらくこれはダンロップ勢だけでもなさそうで、公式練習と公式予選の各車のベストタイムを見比べると、1〜2秒近いタイムアップがある。山内が言うように、GT500のラバーが乗った後の影響が大きいよう。
ちなみに、こういった“別のラバー”がタイムに影響することは他にもある。スーパーフォーミュラ・ライツでは、しばしばスーパーフォーミュラが走った後のコンディション変化に苦労するコメントもよく聞かれる。また、鈴鹿サーキットで行われる2&4レースでも、二輪、四輪の双方からコンディション変化への苦労が語られる。ただ、コンディションの読み方がいちばん難しいのは、タイヤ開発競争があり、繊細なスーパーGTなのは間違いない。
他チームのエンジニア等にも話を聞いた内容を総合すると、そのなかで今回上がり幅を最もうまく反映できたのが、公式練習、Q1、Q2と手ごたえを得つつアジャストしていったK-tunes RC F GT3含むダンロップ勢ということだろう(GT-R勢は今回最大過給圧の数値がやや苦しい)。
では、明日の決勝もダンロップ勢が優位にレースを運ぶのだろうか? 抜きづらいSUGOで前のポジションからスタートできるのは当然有利に働くが、やはりカギを握るのはタイヤだろうか。吉本は「決勝はイメージついてます。たぶんスタートする方がどれだけ苦しみに耐えられるかではないかと(笑)。後半はそこそこのペースで走れると思いますけど。表彰台には乗るつもりでいます」という。
一方のSUBARU BRZ R&D SPORTについて山内は「タイヤの保ちは大丈夫だと思っています」というが、もちろんSUGOはセーフティカー等の“不確定要素”もある。またこれまでのコメントを聞くに、路面温度や、さらにラバーの乗り方等によっても変化はあるだろう。
「結果は分かりません。コースとタイヤは生き物ですからね。……知らんけど(笑)」と山内は流行の言葉で締めてくれたが、実際レースは走ってみなければ分からない。まさに結果がどうなるかは「知らんけど」だろう。