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あおられないための運転術 あおられる側にも原因あり!? 車間開けすぎ追い越し車線居座りは避けるべし!

 土日に首都高の右側車線を走っていると、クルマ3台分以上車間距離を開けているクルマがいて、後ろからあおられていたり、その遅いクルマを左から抜いてまた右側を走行する、といった光景をよく見かけます。

 その一方で、朝夕の通勤ラッシュ時には、極端に短い車間距離で前のクルマがブレーキを踏んだら追突しそうなクルマもよくみかけます。

 そこで、どんな運転をするとあおられるのでしょうか? そしてあおられないためにはどのような点に注意すべきなのでしょうか?

文/高根英幸
写真/警察庁、AdobeStock(トップ画像=yamasan@AdobeStock)

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■あおっている側には自覚がない?

あおり運転がなくならないのは、自分がやっている行為があおり運転だという自覚が欠落しているというのも一因かと思われる(Imaging L@AdobeStock)

 厳罰化されたにもかかわらず、いまだになくならないあおり運転。それは妨害運転罪の制定を知らないというのではなく、自分がやっている行為があおり運転だという自覚が、そもそも欠落しているのではないだろうか。

 クルマは動かせ方ひとつでトラブルの引き金となってしまう。そう、あおり運転をするドライバーの中には、日頃のストレスをクルマの運転によって、それも周囲のドライバーに対して攻撃的な行動を起こすことによって憂さ晴らしをしてしまう人もいるからだ。カッとなって頭に血が上り、感情を抑えられずあおり運転をする人もいる。

 ヘッドライトの点滅やハザードランプの点灯などと同様、ハンドル操作やペダル操作によるクルマの動きでコミュニケーション(態度を示す、という意味で)を取ろうというのは分かるが、あおり運転は完全に「クルマによる暴力」だ。

 「クルマ同士が接触していなければいいじゃないか」というのであれば、街中で金属バットを振り回しても、誰にも怪我をさせないのであれば罪に問われないと言っているのに等しい。現実は暴行罪であり、クルマの場合はバイクや自転車、歩行者に幅寄せをした時点で暴行罪が成立するのだ。

 免許を取得していながら、そんなことも理解していない(教習所もこのあたりを厳しく教えるべきだ)ドライバーが存在することが本来は異常なのであり、もっとドライバーは運転の責任を自覚するべきだろう。

 一方で、あおり運転をされるほうのドライバーにも問題はある。あおり運転をするドライバーが悪いのは明白だが、そうしたドライバーにトリガーを引かせてしまうきっかけを作るドライバーのほうにも自らの運転を見直してほしいのである。

■あおられる側は周りの交通状況に気づいていない?

あおり運転のターゲットとなるドライバーは、車間距離をとり過ぎていたり、追い越し車線を制限速度を守って延々と走り続けたりと、周囲の状況が把握できていない場合が多い(metamorworks@AdobeStock)

 車間距離は本来、安全のために確保するもので、個人差はあるが距離を取り過ぎているのは無駄ということや、むしろ危険ということは断じてない。しかし弊害もあるのは否めない。

 あまり車間距離を空けすぎると後続のドライバーが、イライラする原因にもなる。特に片側2車線の道路の場合、車間距離を空けていると隣の車線からどんどんクルマが入ってくることになると、後続のドライバーは損した気分にさせられるのだ。

 これが前走車のドライバーに対しての怒りになり、あおり運転のトリガーになってしまうことになる。

 そんな状況になっていることや後続のドライバー、対向車に対して配慮ができないドライバーは残念ながら一定数は存在するようだ。

 もちろん、前方の自動車に激しく接近し、もっと速く走るように挑発する行為は法令違反となり、車間距離保持義務違反に相当する。

 他にも制限速度を守って追い越し車線を走り続けるような、周囲の状況が把握できていないドライバーがよく標的になる。あおり運転の多くは追い越し車線を譲らずに走り続けることがきっかけで発生しているのだ。

 追い越しが終わって安全に走行車線に戻れる状況にあるにもかかわらず、その車線をずっと走り続けると、たとえ法定速度以内であっても「通行帯違反」となり、違反点数1点で反則金6,000円(普通車)が科せられるのを忘れてはならない。

 高速道路や車線が2車線以上ある道路では、左側車線が走行車線、右側の中央寄りの車線は追い越し車線と規定されている。

 道路交通法では、「車両は車両通行帯の設けられた道路においては、道路の左側から数えて一番目の車両通行帯を通行しなければいけない」と記載されている。通常は走行車線を走り、追い越し時には追い越し車線を使って前走車を追い越した後、速やかに走行車線に戻るのがルールでありマナーなのだ。

 一方、追い越し車線はどれくらい走り続けていると違反になるのだろうか。 目安は2kmとなっているようだが、実際には2Km未満でも摘発されることもある。

 ちなみに、追い越し車線に前のクルマが走り続けているかといって、左車線からの追い越しは、追い越し違反になり、違反点数2点で反則金は9,000円になるので注意が必要だ。

■安全かつ現実的な車間距離を把握する

自動車教習所で使用する教本が推奨する車間距離は現実的ではない。2秒間で進む車間距離を目安にすれば現実的でなおかつ安全な車間距離がとれる(Paylessimages@AdobeStock)

 車間距離については、自動車教習所で使用する教本を見ると、高速道路では速度(時速)と同じ数字のメートル(m)分だけ車間距離を開けるように(雨でタイヤがすり減っている場合は、その倍!)教えているがこれはちょっと現実的ではない。

 実際の高速道路でそれほどの車間距離を空けられたら、それは確かに安全ではあるかもしれないが、円滑な交通の妨げになることも考えなくてはいけない。ルールを守る意識も大事だが、交通トラブルを防ぐことも考えるべきなのだ。

 ちなみに欧州では車間距離は実際の距離数ではなく、時間で考えるのが主流になっており、日本交通心理学会のデータ分析に基づいて推奨されているのも「2秒ルール」だ。

 最初の1秒は危機を認知してブレーキを踏むまでの空走距離、次の1秒は制動力が働くまでの時間、その合計で2秒となる。60km/hでは33.3m、100km/hでは55.6mだ。

 日本交通心理学会が行った車間距離測定実験によると、プロドライバーが走行した車間距離を時間に換算して「車間時間」を算出したところ、安全を感じ始める距離が約1.5秒、近すぎるとも遠すぎるとも感じない走りやすい距離が約1.8秒という結果が出ている。

 統計的には車間時間が2秒以内での事故は死亡事故等の重大事故が多く、2秒以上離れていると大きな事故となっていないことが示されている。

 では車間距離の時間をどうやって計ればいいのか。これは走行中に目印を見つけるだけでいい。路面の継ぎ目や標識など、道路上の目印を前走車が通り過ぎ、自車がそこに到達するまでの時間を計ればいいのだ。

 それもストップウォッチなどで正確に計る必要などない。頭の中で「1、2」と大体1秒ずつカウントすれば十分だ。時計の秒針で確認してみればわかるが、1秒は意外と長く、ゆっくりカウントする必要はある。

 ただし4秒以上あけると、今度は後続のドライバーがイライラして車間を詰めてきたり、追い越しをかけようとしてこれまた交通トラブルの原因となるので、2秒の間を保つようにすることだ。

 ちなみに車間距離について、道路交通法の第26条では、「車両等は、同一の進路を進行している他の車両等の直後を進行するときは、その直前の車両等が急に停止したときにおいてもこれに追突するのを避けることができるため必要な距離をこれから保たなければならない」と定めている。

 車間距離保持義務違反の法定刑は一般道の場合、5万円以下の罰金、高速道路の場合は3ヵ月以下の懲役または5万円以下の罰金。違反点数は一般道の場合は1点、普通車の場合は反則金6.000円。高速道路の場合は違反点数は2点、反則金は9,000円。

■あおり運転はどんな運転?

前走車に車間距離を詰めて迫ることだけが「あおり運転」ではない。側方から急接近する幅寄せや、強引な追い抜き・割り込み、ノロノロ運転なども妨害運転として処罰の対象になる(xiaosan@AdobeStock)

 あおり運転については、2020年6月30日に施行された改正道路交通法により、あおり運転を含む妨害運転に対する罰則が創設された。

 あおり運転とは、前走車に車間距離を詰めたり、車両を左右に振ったり、前方に回って急ブレーキをかけたり、クラクションやヘッドライトを操作して威嚇するような運転のことだ。さらに幅寄せや強引な追い抜き、割り込み、わざと前方をのろのろ走る(10km/hおじさんが有名)など、運転を妨害する行為は妨害運転として処罰の対象になる。

 妨害運転として検挙されると、累積点数や免停などの前歴がなくても運転免許は取り消しとなり、最低2年は再取得ができなくなる。そんな行政処分に加え、さらに3年以下の懲役または50万円以下の罰金という刑事罰まで科せられる。

 高速道路上で後続車を停車させるなど、さらに周囲の車両を危険に晒した場合は、免許の欠格期間は3年となり、5年以下の懲役または100万円以下の罰金と重罰になる。

 警察庁の平成30年1月、警視庁や各都道府県警に出された“あおり運転”に関する通達によれば、「悪質・危険な運転が関係する事案を認知した場合には、客観的な証拠資料の収集等を積極的に行い、道路交通法のみならず、危険運転致死傷罪(妨害目的運転)、暴行罪等あらゆる法令を駆使して、厳正な捜査の徹底を期すこと。

 また悪質・危険な運転を未然に防止するため、車間距離不保持、進路変更禁止違反、急ブレーキ禁止違反等の道路交通法違反について、積極的な交通指導取締りを推進すること」となっている。

 具体的な「悪質・危険な運転」と「違反の種別」については以下の通り。

■こうした運転があおり運転として罰せられる
●前方の自動車に激しく接近し、もっと速く走るように挑発する→車間距離保持義務違反(法26条)
●危険防止を理由としない、不必要な急ブレーキをかける→急ブレーキ禁止違反(法第24条)
●後方から進行してくる車両等が急ブレーキや急ハンドルで避けなければならないような進路変更を行う→進路変更禁止違反(法第26条の2第2項)
●左から追い越す→追越しの方法違反(法第28条)
●夜間、他の車両の交通を妨げる目的でハイビームを継続する→減光等義務違反(法第52条第2項)
●執拗にクラクションを鳴らす→警音器使用制限違反(法第54条第2項)
●車体を極めて接近させる幅寄せ行為を行う→安全運転義務違反(法第70条)、初心運転者等保護義務違反(法第71条第5号の4)

※故意に自車を他人のクルマに著しく接近させるなどの運転態様、周囲の道路状況などに照らし、その行為が相手の運転者に対する有形力の行使と認められる場合には暴行罪(刑法第208条)が成立する場合がある

■車間距離や車速に関する感覚を取り戻すべき

日本の高速道路では、80km/h前後のスピードで、市街地をゆっくり走っている時のような車間距離で走っていることがある。周囲のクルマが同じ速度で走行しているせいで速度感覚が麻痺しているのだ。速度を確認し危険を回避できる距離を保ってほしい(shibadog@AdobeStock)

 しかし日本の高速道路で交通量が多い時の車間距離の少なさは、ちょっと異常を感じる時がある。周囲のクルマが同じ速度で走行しているせいで、速度感覚が麻痺状態になり、まるで市街地をゆっくり走っている時のような車間距離で、80km/h前後のスピードを出しているのだ。

 これは首都高速でも制限速度が高い区間であったり、100km/h制限の高速道路でも見られる光景だ。首都高速では渋滞までしていなくても、結構なスピードで車間距離をほとんど空けないで集団で走行しているシーンに遭遇することすらある。

 もし「ウチのクルマには自動ブレーキが付いているから大丈夫」とでも思っているのであれば、それは2つの意味で危険な考えである。まず1つは、衝突被害軽減ブレーキは作動範囲が限られており、速度域や天候などによっては作動しない場合があることを知っておくべきだ。

 そしてもう1つは、作動しても衝突が避けられないことも多く、作動していようがいまいが、衝突事故の責任はすべてドライバーに課せられるのだ。つまり衝突被害軽減ブレーキはドライバーのミスを補うものであり、基本的にはドライバーが急ブレーキなどで衝突を回避する操作をすることが前提なのである。

 最後に、あおり運転に遭わないためには、どうするべきか。「君子危うきに近寄らず」の精神で、危なそうな雰囲気のクルマが近くにいたら、変に刺激しないようにすることだ。

 相手はイライラをぶつける相手を探しているような状態であることもある。ドラレコを装備するのも大事だが、クルマのリアエンドには「ドライブレコーダー録画中」のステッカーを目立つように貼ることと、周囲を走るクルマの流れを見定めた運転をすることが、自衛のための基本だ。

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