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テリー伊藤大感激!!! 胸ときめいたシビックよ! 今こそ復活の時だ!! 誕生50周年歴代モデル一気乗り試乗会

 ホンダ シビック誕生50周年を記念して開催された一気乗り試乗会。「シビックは私たちの世代にとって特別なクルマ」というテリー伊藤が、睡眠時間を削って「モビリティリゾートもてぎ」を訪れた! いつの時代も「大衆車」として形を変えながら高い人気を誇ってきたホンダ シビックの歴史を振り返る。

※本稿は2022年9月のものです
文/テリー伊藤、ベストカー編集部、写真/HONDA、ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』2022年10月26日号

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■楽しくて乗って帰っちゃいたい!/初代シビック1.2RS(78万3000円)

RSの最高出力は1.2LながらケーヒンのCVキャブを2連装し76馬力を発生。1.5LのGLは65馬力だからパワフルさがわかる

 なかなか時間が取れず、試乗会に行けないことが多い私だが、シビック一気乗り試乗会にだけは行かなければと、スケジュールを入れた。

 栃木県のモビリティリゾートもてぎに8時集合ということで、2時間しか寝れなかったが、時間があってもわくわくして眠れなかっただろう。

 私はもうすぐ73歳になるが50年前、大学を出た時に初代シビックが登場したことをよく覚えている。当時FFというモデルはMINIが輸入されていたけれど、国産ではスバル1000やホンダ1300があるくらいで、FFという言葉の意味がよくわからなかった。

木目パネルにウッドのステアリング、ウッドのシフトノブ、5速MTとインテリアも素晴らしい

 FFの魅力を教えてくれたのがシビックで、そのかっこうと室内の広さに驚かされた。その頃の大学生はカローラにするか? サニーにするか? で悩んでもホンダにしようという変わり者はいなかった。当時のホンダはバイクか軽自動車(N360)のメーカーというイメージが強かったからだ。

 しかし、初代シビックが登場すると、ホンダに乗っているとかっこいいと思う若者たちが徐々に増えていった。私もそんなひとりで、2年後に登場したRSに完全に打ちのめされ、欲しくて欲しくてたまらなかったがお金がなくて買えなかった。

 私にとってRSはGTよりもずっと洗練された響きがあった。スカイラインやセリカにGTがラインナップされていたが、泥臭いと思っていたのかもしれない。

 憧れのクルマに乗り込むと、驚くほどインテリアが美しい。ダッシュボードは木目パネルでステアリングもシフトもウッドになる。シートはセミバケットでフットレストがあり、間けつ式ワイパーやアナログ時計など、1200ccのハッチバックには豪華すぎる装備だ。

 走りもいいぞ! なんと5速MTで、高回転まで回すとさすがにスタッフに睨まれそうだから我慢するが、コーナーではシフトダウンしステアリングを切っていくと、50年以上前のクルマとは思えないレスポンスのよさを見せる。

「ワッハッハ! 楽しいぞ」クルマが純粋に好きだった20代の頃を思い出した。このまま乗って帰っちゃおう! そう思ってしまった。

 発売当時の価格は78万3000円。シビックの最廉価モデルが42万5000円でフェアレディZ(S30)が84万円だったから、やっぱり高級車だったと納得。ホンダには小さな高級車のコンセプトを復活させてほしいな。

■ホンダ初のステーションワゴン/2代目スーパーシビックシビックカントリー(95万円)

カントリーに搭載の1.5LのCVCCエンジンの走りはバタ臭い感じが残っていて当時のホンダ車らしい

 2代目はキープコンセプトだが、ステーションワゴンモデル、シビックカントリーが1980年に追加された。当時はオイルショックから日本が立ち直り、若者がアメリカのファッションを楽しみ始めた頃。雑誌『ポパイ』の影響で大学生はUCLAのトレーナーを着たそんな時代。

 サイドの木目調プロテクションモールが特徴的なカントリーは、当時の自由な空気を表している。股間を熱くした若者が新島に押し寄せていたこの頃、サーフボードを積んだカントリーに乗っていたらさぞかしモテただろう。

荷室は大きく、ゆったりと横になれるからキャンプにも充分使える

 リアシートは4段階にリクライニングし、たためばしっかりとスペースが生まれ、機能性は高い。ユーティリティの高さは今でも通用するくらい。今回乗ったなかで、一番持って帰りたいモデルだった。ホンダにはステーションワゴン作りを思い出し、カントリーのようなモデルを再び作ってほしい。

■初のDOHCモデルが追加/3代目ワンダーシビックセダンSi(146万5000円)

ワンダーシビックのセダン。エンジンが存在を主張してくる走りは、2代目よりもずっと洗練された印象だ

 ホンダに憧れていた私が初めて買ったホンダ車がワンダーシビック、人気だった紺色の3ドア25iだった。

 低くスクエアなフォルムは新鮮で、室内が想像以上に広かった。この3代目からシビックがメジャーになった。今回乗ったのはセダンのSi、1.6LDOHCエンジン搭載のスポーツモデルだ。快進撃を続けるF1の影響もあって、このエンジンの評判がよく、若者がこぞってシビックやCR-Xを買い求めた。

 クルマがよくなったことは、2代目までと乗り比べてよくわかる。その一方で野性味は3代目からなくなっていくように思える。エンジンがよくなったぶん、走りに魅力が振られ、コンセプトのユニークさが薄れてきたように思った。

 海辺で育った快男児が都会に出てきて、方言をしゃべらなくなったような印象を受けてしまった。これは、シビックがメジャーになった証拠でもあるのだが……。

■豊かさを実感させるが個性は薄まった/4代目グランドシビックSi(143万円)

■ミニバンやSUVがライバルに/5代目スポーツシビックSiR II(162万円)

5代目スポーツシビックSiR II(162万円)。より洗練さを増し室内も走りもゆとりを感じさせ、グランドシビックというネーミングにも納得
5代目のスポーツシビックは170psのVTEC搭載で、高回転までヒューンと回り、走りは今でもバリバリいけそうだ

 4代目も5代目もいいクルマだ。走りが洗練され、居住性もよくなった。しかし、3ドアボディがミニバンやSUVの台頭の前に不利になっていく。それはそのままシビックの存在感が薄まっていくことになる。オデッセイやステップワゴン、CR-Vなどホンダ車はバリエーションを増やし、シビックを選ぶ一番の理由はスポーツ性能となる。

 だからSiやSiRといったスポーツグレードにばかり注目され、シビックの安くて広くて低燃費というベーシックな性能が忘れられていったように思う。

 今思えば、4代目にあったシビックシャトルやビークルをもっと本格的に作っておけば、SUVとしてのシビックの魅力が広がっていったかもしれない。

7代目スマートシビックは、ミニバンのようなスタイリングになり、3ドアがなくなった。3ドアがなくなった時点で、シビックの日本での立ち位置がなくなったように思う

 6代目以降のシビックは、グローバル化によって日本人の嗜好とのずれが顕著になる。5ドアになったり、セダンだけになったり、3ナンバーになったりと苦労し、9代目はいったん日本での発売を断念することにもなる。

 いつの間にかシビックといえばタイプRと思われるようになってしまったことは残念だが、日本での販売を再開した10代目からはマスは狙わず、日常を大事にするおとなに、じっくり売ろうという姿勢になったのはいいと思う。

■走りは文句なし、BMWかと錯覚した!/最新の11代目シビックe:HEV(398万400円)

最新の11代目シビックe:HEV(398万400円)。394万400円という価格を聞いて、「それは高い!」と思ったが、乗ったあとはそう思わなくなった

 最新の11代目はスタイリングがいい。私は4ドアハッチバックという言葉の響きが好きだ。シビックがハッチバックというスタイルを50年かけて磨いてきたというなら、100%納得できる。

 日本では人気のないジャンルだが、クーペとワゴンのいいとこどりで、セダンやステーションワゴンほど全長は大きくないから運転しやすいし、荷物がセダンよりもたくさん載せられて、しかも全高が低いからかっこいい。

 昨年1.5Lのガソリンターボに乗って、デザインといい、走りといい、好印象を持った。「トヨタに作れないクルマ」という価値観を感じたのがその理由だが、e:HEVに乗ってますますその印象を強くした。

走りは言うことなし。燃費も20km/Lを超えるというからカンペキではないでしょうか!

 ハイブリッドというと燃費のよさが第1の性能とされることが多いが、シビックe:HEVは電気を感じさせない走りだ。ハイブリッドなのに、1.5Lターボ以上の伸びやかな加速を見せ、音も刺激的だ。

 トヨタのハイブリッドとは明らかに違い、電気の力をエンジンの力にプラスしている感覚だ。「ハイブリッドだからといって我慢するのやめた!」と主張しているようだ。

 さらにSPORTモードにすると、一瞬BMWかと思うような加速フィールを感じさせ「HEY! HEY!」と思わず叫んでしまった。ベストカー編集部によれば、こんなに楽しいのに20km/Lオーバーの燃費というから驚いた。

 青春を取り戻しに参加したシビック試乗会だったが、シビックe:HEVに乗っていた時は間違いなく50年若返っていた。新型タイプRに乗る日が待ち遠しい。私は幸せな気持ちで、家路についた。

■タイプRは品のよさがいい/11代目シビックタイプR(499万7300円)

音がいい新型タイプR。デモンストレーション走行にも食いいるようにスマホで動画を撮った

 私は運転がうまくないのでカリカリのスポーツモデルがどちらかといえば苦手だ。しかし、シビックタイプRと新型Zは別格だ。

 70代になると最後のクルマとしてZを手に入れたくなる気持ちはよくわかる。一度はZオーナーになりたかった夢を持っているのだろう。話がそれた。私がタイプRを評価するのは、おとなのスポーツカーの臭いがするからだ。

 私の勝手な解釈だが、例えばインプレッサやランエボは、オレオレ感が強く、北関東のガッツある人々のクルマなのに対し、タイプRは南関東の人々のやや控えめな嗜好に合っている気がする。それはハッチバックをベースにすることや、やりすぎでないエクステリアやインテリアということになるかもしれない。

 だからタイプRが出るたびに私は胸がときめき、思わずスマホで動画を撮りたくなるのだ。試乗はできず、隙を見てシートに座ってみたが、コックピットの雰囲気は相変わらず品があってよかった。499万7300円というテレビショッピングでいうところの絶妙な価格もあって、大いに気持ちが揺さぶられた。

■伝説の開発者・伊藤博之さんに聞いた「クルマの作り方」

伊藤さんが責任者を務めたワンダーシビックの前で話が盛り上がる。私が買ったのもこの紺色だ

 今回の一気乗りにはスペシャルゲストとして歴代の開発責任者が招かれていて3代目のワンダーシビック、5代目のスポーツシビックの開発秘話を聞くことができた。なかでも私が実際に購入した3代目のワンダーシビックの開発責任者伊藤博之さんの話が面白かった。

「お金は大事だが、お金でいいクルマが作れるわけじゃない。お客がいいと言ってくれるクルマを作るために、お金を惜しんじゃいけない。儲けようなんて考えちゃいけない」という哲学を、披露してくれたが、本田宗一郎とのやりとりのなかで学んだことだという。いいものを作る心構えとして共感します!

 また、5代目のスポーツシビックを開発する時に、さんざん悩んだという話も面白すぎた。初代シビックが登場して19年後に5代目は誕生するが、どう若者にアピールするかを考えた時に、もし自分が10年若かったらどうしたか? を問い直したという。

 その結果が躍動感あふれるサンバボディで、実際に伊藤さんはブラジルのリオにサンバを見に2週間出張しちゃうんだから凄い時代だな~。帰って来て毎晩サンバのビデオを見て考えていたら、奥さんから「あなた毎日、女のお尻ばっかり見て!」と叱られたという笑い話も教えてくれました。

5代目スポーツシビックのエクステリアデザインコンセプトはSAMBA BODY。このイラストでプレゼンしたのだから凄い! 

 2週間サンバを見にブラジルに行くなんて私でも経験ありませんよ!

 もうひとつ大ヒットした初代CR-Vは当時の川本信彦社長に黙って開発していたという話も素晴らしい。伊藤さんが何かやっていると聞きつけて、川本さんがCR-Vを見に来て「これいくらで売るつもりなんだ?」と聞かれて「220万円で!」と答えたら「200万円にしろ!」と言われて、苦労してどうにか198万円で売りました。

「何か新しいアイデアを形にしようと思ったら、会社に黙ってやればいいんですよ、そのくらいの自信がなきゃいいものはできませんよ」と語っていたが、若い頃のワタシも同じように会社に黙っていろんなことをやっていたと思い出し、うれしくなりました。伊藤さんは侍です!

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