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Image:Allison Parrish

最近はiPhoneを折りたたみ式に改造する猛者もいたが、はるか昔のモノクロ携帯ゲーム機・ゲームボーイポケット(1996年発売/以下「GBP」)を折りたためるように転生させた趣味人が現れた。

この「ゲームボーイポケットSP」は、ニューヨーク大学の芸術学部助教授、アリソン・パリッシュ(Allison Parrish)氏による作品である。彼女はこの着想を、後のゲームボーイアドバンスSP(2003年発売/以下「GBASP」)から得たそうだ。

パリッシュ氏の改造は、冗談のようなことから始まったという。今でもゲームボーイの改造コミュニティは賑わっているが、折りたたみ式のGBASPの基板を、折りたためない特製ケースに移植するのが流行っているとのこと。SPからヒンジ(折りたたみの軸)を取り外せるなら、ヒンジのないゲームボーイにヒンジを追加することもできるのでは、と考えたという。

そこでパリッシュ氏は夏休みを費やし、折りたたみ式の改造品を作り上げた。元々のGBP基板を半分に切断し、2つの間をカスタムデザインのフレックスPCB(プリント回路基板)により接続し、信号をやり取り可能にした。それらを収める専用プラスチックケースは、汎用3D CADモデラー「FreeCAD」により設計し、3Dプリントしたものだ。

またバックライト付き画面やラベル、ボタン、充電池などの追加部品は、ホビーショップから入手したとのこと。ゲームボーイは全世界的に改造コミュニティで人気が高いため、改造パーツの調達には困らなかったようだ。

完成した「ゲームボーイポケットSP」はコンパクトでバックライト付き、USBで充電可能。しかし遊べるのは白黒の初代ゲームボーイ用カートリッジだけ、というチグハグさだ。カートリッジは初代GBPと同じように、画面のすぐ後ろに差し込む。

この折りたたみ式GBPは、大手掲示板Redditのr/gameboyで開催された改造コンテストで、見事、テクニカル部門の1位に輝いている。そもそも、改造に一生懸命取り組むモチベーション自体が、コンテストに参加することだったそうだ。

まるで任天堂の公式製品のような美しい仕上がりだが、それだけ多大な労力がかかっているという。研究開発の過程にも非常にコストがかかり、材料費と製造費に加え「私自身の人件費もかかっている」と冗談めかして語られている。

それでも自分のゲームボーイポケットSPが欲しいという人は、PCBとケースの設計ファイルがGitHubで公開されており、製作過程はパリッシュ氏のサイトに事細かに説明されているので、苦労を追体験してみるのもいいだろう。