10月16日、岡山国際サーキットで決勝レースが開催されたENEOSスーパー耐久シリーズ2022 Powered by Hankook第6戦『スーパー耐久レース in 岡山』。午後に行われたグループ1の決勝では、重いウエイトを積みながらクラス4位でフィニッシュした大塚隆一郎/太田格之進/金石年弘組5ZIGEN AMG GT4がST-Zクラスの2022年チャンピオンを獲得した。
日本のモータースポーツシーンで欠かすことができない名門チームのひとつであるTEAM 5ZIGENは2020年からメルセデスAMG GT4を投入し、ST-Zクラスに挑戦。大塚隆一郎をAドライバーに据え、2020年は青木孝行や坂本祐也、金石らを擁し1勝を挙げるも、シリーズ3位に。2021年は大塚と金石、さらにジェイク・パーソンズや金丸ユウ、そして今季レギュラーで活躍することになる太田格之進を加え戦ってきたが、またも3位。チャンピオンにはなかなか手が届かなかった。
過去2年間チャンピオンだったENDLESS SPORTSがST-Qへ、2位だったD’station RacingがST-1に移行するなか迎えた2022年は大塚と金石、そして太田という顔ぶれで戦い、第2戦富士24時間では、太田と同様ホンダの育成ドライバーである木村偉織を起用。第1戦は3位で、さらに大量得点を得ることができる第2戦富士24時間を制すると、総合ポールポジションという快挙を成し遂げた第3戦SUGOこそトラブルがあったものの、第4戦オートポリスで2勝目をマーク。第5戦もてぎで2位に食い込み、第6戦岡山ではチャンピオン決定の可能性をもって臨んだ。
「もてぎから厳しかった(大塚)」という75kgという重いウエイトハンデに苦しみながらも、予選ではAドライバーの大塚が快走をみせ2番手につけ、合算でクラス3番手となった5ZIGEN AMG GT4は、決勝でもスタートを務めた金石から太田に繋ぎ着実なペースで走行。大塚に交代した終盤も2位を守っていたが、後方から松田利之のAccess HIROSHIMA+ GR SUPRA GT4、さらに野中誠太がハイペースで追い上げてきたHIRIX★EIKO GT4が逆転。それでも大塚はしっかりと4位でフィニッシュし、これで2022年のチャンピオンを決めてみせた。
3年目の挑戦でついにチャンピオンを決めてみせた大塚は「今年は第1戦鈴鹿からシリーズを考えて戦ってきたんです。序盤に順位を上げて、僕が最後に走る作戦で戦ってきました。今年は富士24時間はまず落とさないこと、その後もあわよくばどこかで勝つと考え、自分の地元であるオートポリスで勝つことができたので、僕としては良い一年になりました」と振り返った。
今回のレースでも、後方から迫った松田、野中に対し「対抗することも考えましたが、ウエイトもありましたし、ストレートスピードも違うので、さらにうしろとのギャップを聞き『すいません。今日は4位でゴールします』と切り替えました。でも周回が少なくなるほど、ふだん心配しないことを心配してしまいました(苦笑)」
こうして手に入れたチャンピオンという栄冠は、大塚がぜひとも欲しいものだった。「スーパー耐久は全日本選手権ではありませんが、こうして全国をまわるメジャーなレースではチャンピオンの経験がなかったんです。自分の人生でも獲っておきたい称号でした」
今回のチャンピオン獲得に向けては、「年弘さんがセットアップを指導してくれましたし、太田格之進は今をときめく速いドライバー。やはりすごい。ありがたいですね」とふたりのドライバーが大塚を助けた。そのうちのひとり、太田は「昨年からこのチームにスポットで載せてもらい、今年はBドライバーとして予選を担当させてもらいましたが、富士でも勝てましたし、良いシーズンでした」と語った。もちろん太田にとって、フォーミュラ以外では初のタイトルだ。
「ドライバーが多かったり、ピットストップがあったりということ以外はフォーミュラとは変わりませんが、走行距離も長いですし、チームひとりのミスが勝敗に影響するのはやはり違いますね」
そして、このタイトルはTEAM 5ZIGENにとってもひさびさのチャンピオンとなった。「3年目でやっと獲れましたからね。良かったです。今年はドライバーのまとまりも良かったですし、第1戦鈴鹿の表彰台、そして富士で勝てたことが大きかったです。そこからはチャンピオンのことしか考えていませんでした」というのは、TEAM 5ZIGENの木下正治代表。
「性能調整でどうしてもストレートが厳しかったのですが、SUGOでリタイアしたのと今回4位だったこと以外はすべて表彰台を獲れましたからね。良かったです」
もちろん2023年も、そしてその先も目指すはチャンピオンだ。「ENDLESS SPORTSさんが3年連続でチャンピオンを獲られていましたからね。次はウチが3連覇したいですね!」と木下代表は笑顔をみせた。