![世界よ、これも三菱車だ! 歴代三菱車から選ぶ「三菱でしか出せなかった唯我独尊車5選」](https://img.bestcarweb.jp/wp-content/uploads/2022/10/14135015/00_pajero-jr_1997_flying_pug_head.jpg?v=1665723018)
三菱自動車は不思議な会社だ。重厚なる技術を持ち、パジェロやランエボのような骨太な名車を送り出す一方で、その体質は官僚的で、幾度も不祥事を起こし国交省から処分を受け、経営危機に陥った。
官僚体質のわりには不思議なほど大胆かつ勇猛果敢な部分があり、「なんで?」というような変わり種を何度も商品化している。つまり、セクト主義により部門がそれぞれ独断的に行動しがちということでしょうか。
今回は、そんな三菱の勇猛果敢なハズレ商品たちを5台選んでみた。三菱自動車って不思議だなぁ~。
文/清水草一、写真/MITSUBISHI
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■ショーファードリブンの2代目デボネアVにAMGパーツをくっつけた「デボネアV ロイヤルAMG」
初代デボネアは「走るシーラカンス」と呼ばれた迷車で、三菱が1964年から1986年まで、実に22年の長きに渡って生産が続けられたショーファートリブンのサルーンだ。三菱グループの社用車需要があってこそ存続できた珍種だった。
そのデボネアが1986年、ついに初のモデルチェンジを受けて「デボネアV」に進化! FRからFFへ大転換すると同時に、デザインもシーラカンスから、カクカクした直線的ラインの高級セダンに大変身を遂げた。それはどことなく戦車みたいで。お堅い三菱グループのお偉いさんにお似合いだったかもしれない。
しかし、驚きはそれだけではなかった。なんと三菱は独AMGに働きかけ、AMGによって内外装がカスタマイズされた「ロイヤルAMG」を世に送り出したのだ! ナゼ!? どうしてそんな大胆なオファーを……。
エクステリアは、メッキ類を排してスポーティ感を強調すると同時に、小さなリアスポイラーを含むエアロで武装。マフラーは専用のデュアル出し。あらゆる面でAMGの本気度が伺える仕上がりだが、戦車を最高速仕様にしたような不気味さがあった。
一方、内装は、AMGがデザインしたブラック&グレーの本革シート。その形状は、まさに昭和の応接間。エクステリアとのチグハグ感は半端じゃなかった。AMGはメルセデス以外のメーカーと組むことはほとんどなかったので、迷いがあったのだろうか? 謎。
とにかくデボネアVロイヤルAMGのインパクトはウルトラ強烈だった。わずかしか売れなかったので、ほぼ実物を見たことはないが、「三菱おそるべし」の印象は強く残った。
■レトロな雰囲気のパジェロジュニア フライングパグ
1990年代中盤、三菱はパジェロブームに沸いていた。パジェロの勢いはとどまるところを知らず、三菱は儲かって儲かってしかたがない。本家パジェロでは飽き足らず、軽自動車のパジェロミニ、そしてリッターカー(1.1L)のパジェロジュニアまで作ってしまった。
そのパジェロジュニアに設定された限定モデルが、「パジェロジュニア フライングパグ」である。
見てのとおりのレトロカーだが、「取って付けた様」という形容が、これ以上ハマるレトロカーもないだろう。
当時は確かにレトロカーもブームだった。パジェロブームに沸く三菱が、レトロカーブームにも乗っただけのことだが、お堅い社風のどこからこんな悪ノリが出てくるのか、今ひとつ理解に苦しむ。
三菱のレトロカーシリーズにはタウンビーがあり、なかでも「ミニカトッポタウンビー」は、ミニ風の丸目と巨大なグリルを取り付けて、悪ノリ感満点だった。
これらはひょっとして、昔の体育会で常識だった「一気飲み」とか、そういうノリだろうか? ウィ~、悪酔いしました~。
■ルーフレールをつけてRVっぽくした5ドアHBのギャランスポーツ
ギャランスポーツを覚えている人がいるだろうか。実は私もほとんど忘れていたのだが、写真を見て鮮明によみがえってきた。それは、なんとも「急遽仕上げました」的な、安易な雰囲気のクルマだった。
ベースとなったのは、1992年に登場した7代目ギャランだ。しかし、ギャランには弱点があった。当時はレガシィツーリングワゴンをきっかけにワゴンブームが来ていたのだが、ギャランにはワゴンがなかったのだ。
そこで三菱は、海外向けだったギャラン5ドアハッチバックをベースに、ルーフレールやカンガルーバー、ついでにリアウイングを取り付けて、「ギャランスポーツ」として発売したのだ。
ルーフレールはワゴンブーム由来、カンガルーバーはRVブーム由来、リアウイングはバブル期のスポーツカーブーム由来。結果、ギャランスポーツは満艦飾でどこか軽薄な感じのクルマになりました。重厚な会社なのに……。
■なぜか大衆車の4代目ミラージュに世界最小のV6エンジンを搭載してしまったミラージュ6
1992年、世の中すでにバブルは崩壊していたが、それに気づいていたのは一部の人間で、多くの国民はバブルの余韻に浸り、いまだ贅沢を愛していた。
クルマも当然高級化を目指す。クルマのキモはエンジンだ。ターボ化だけじゃ飽き足らない。多気筒化こそ真の贅沢! それも、小排気量エンジンを多気筒化して、大衆車を高級化するのが本当の意味での贅沢だ! この世から貧困を追放するのだ! そんな感じの時代でした。
この流れに乗って、1991年、マツダは1.8LのV6エンジンを搭載したユーノスプレッソを発売。翌年、それを追って三菱は、さらに排気量の小さい1.6LのV6(世界最小のV6)を開発し、4代目ミラージュセダンに搭載した。その名も「ミラージュ6」!
小さな高級車を目指したわりにお値段はお安く、143万円から。4気筒のカローラと同じか、むしろ安かった。これで大衆車の高級化も大成功だ! とはならず、あまり売れませんでした。なぜだ!?
それはたぶん、馬力が足りなかったから。ミラージュ6は140ps。4気筒1.6Lターボのミラージュサイボーグは175ps。世の中、まだ質より量だったのですね。
■掉尾を飾るのはあの迷車「ミラージュディンゴ前期型」
1998年に登場した、伝説の迷車である。「スマート・ユーティリティワゴン」を名乗る、ごくまっとうな小型車だったが、デザインがあまりにも地味に不格好だった。
縦に並べられた丸形4灯。それを取り囲むバンパー的な造形。顔のバランスがどうにも悪すぎる。つまりブス。ブスを説明すると、「バランスが悪くて奇異に感じる」ということになる。
ブスと個性的美人は紙一重だが、ミラージュディンゴは、「アリクイ」的な顔のブス。そのうえサイドは無意味なオーバーフェンダー的な造形で武装しており、何もかもがチグハグだった。全身ブスである。
実はこのヘッドライト配置、初代ミラージュの「六角形断面」をモチーフにしていたという! 24年後の今になって知りました。そうだったのか。このデザインも、三菱のセクト主義の賜物だったのだろうか。デザイン部門が独走したことは間違いない……ような気はします。
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