人気車は当然のことながら注文が殺到し、納期が1年以上に延びている。さすがにいいクルマと思っても1年以上待つ忍耐力のある人がどれほどいるのだろうか?
そこで、クルマの評価のプロ、モータージャーナリストの渡辺陽一郎氏が、実はいいクルマで、納期がそれほど遅くなく、教えちゃうと売れちゃうかもしれないのであまり人に教えたくない3台のクルマを紹介しよう。
文/渡辺陽一郎
写真/トヨタ、ホンダ、スズキ
【画像ギャラリー】納期も商品力のひとつ こっそりと「人に教えたくないおススメ超絶買い得車」3台の詳細写真はこちら!(20枚)画像ギャラリー
■極端な納期の遅延がないコンパクトカーがおススメ
2022年10月の小型/普通車登録台数ランキングを見ると、1位:ヤリスシリーズ(1万4142台)、2位:シエンタ(1万379台)、3位:カローラシリーズ(9753台)、4位:ライズ(8660台)、5位:ルーミー(8144台)、6位:ノート&ノートオーラ(7603台)、7位:ヴォクシー(7201台)、8位:ノア(7166台)、9位:アクア(7007台)、10位:フリード(5858台)と並ぶ。
1位から5位までは、すべてトヨタ車だ。この背景には、軽自動車の販売増加がある。2022年10月には、国内で売られた新車の41%が軽自動車だった。
特に国内販売1位のN-BOX(10月は1万6359台でヤリスシリーズを抜く)は、国内で売られたホンダ車全体の39%を占める。そこにN-WGNなども加えると、ホンダの国内販売の軽自動車比率は53%に達するのだ。
日産も軽自動車比率が高まり、2022年10月に国内で売られた日産車の43%を占めた。三菱も56%が軽自動車だ。このようにトヨタ以外の主要メーカーは、軽自動車に力を入れる。
その結果、2022年10月に国内で登録された小型/普通車の53%がトヨタ車であった(レクサスを含む)。そうなれば小型/普通車登録台数ランキングの上位に、トヨタ車が並ぶのも当然だ。
なおヤリスの登録台数には、ヤリスクロスとGRヤリスが含まれる。カローラも、SUVのカローラクロスやワゴンのツーリング、継続生産型のフィールダーなどを含んだ総台数だ。そのために登録台数が増えたが、ライズやルーミーのように、単一ボディで好調に売られる車種もある。そのために登録台数ランキングの上位は、トヨタの比較的コンパクトな車種で占められた。
しかしすべてのトヨタ車が好調に売られるわけではない。そこでほかのメーカーも含めて、優れた商品なのに、売れ行きが伸び悩むコンパクトな車種について考えたい。
まず注意したいのは、今の登録台数ランキングは、車種の人気度を反映しているとは限らないことだ。原因は納期の遅延で、通常なら契約から納車までの期間は1か月から2か月だが、今は3か月でも短い部類に入る。6か月以上の車種も増えた。そうなると迅速に納車できる車種は登録台数を増やし、滞りがちだと伸び悩む。順調に納車されるか否かで、ランキングの順位が左右されてしまう。
したがって登録台数やランキング順位を考える時は、納期も考える必要がある。納期が極端に遅延している場合は、登録台数も下がるからだ。
今回は納期の極端な遅延がなく、なおかつ売れ行きが伸び悩むコンパクトカーの実力車種のなかから選んでいきたい。
■あまり人に教えたくないおススメ車1:トヨタアクア
●買い得グレード:G(223万円)
●2022年の1か月平均登録台数:約5800台
●納期:約6か月
アクアはトヨタの売れ筋コンパクトカーとしては、登録台数が少ない。2022年1~10月におけるルーミーの1か月平均登録台数は約9400台、ヤリス(ヤリスクロスとGRヤリスを除く)は約6900台だから、アクアの約5800台は少ない。
大人気にならない理由は、同じプラットフォームを使う5ナンバー車のコンパクトカーとして、ヤリスが用意されるからだ。ヤリスではアクアと同様のハイブリッドに加えてノーマルエンジンも選べる。アクアはハイブリッド専用車だから選択肢が限られ、200万円以下のグレードも乏しいから登録台数も増えない。
その一方でアクアにはメリットが多い。ヤリスハイブリッドはホイールベース(前輪と後輪の間隔)が2550mmだが、アクアは2600mmと長く、後席の足元空間も広い。身長170cmの大人4名が乗車した時、ヤリスの後席に座る乗員の膝先空間は握りコブシ1つ少々だが、アクアならコブシ2つ分が収まる。
アクアはホイールベースが長いこともあって乗り心地も快適で、走行安定性も優れている。価格の安いB以外のグレードには、設計の新しいバイポーラ型ニッケル水素電池を使って、動力性能にも余裕を持たせた。
アクアのウリのひとつでもある「快感ペダル」も挙げられる。ワンペダルで自在な加減速コントロールが可能で、ドライブモードをPOWER+を選択すれば加速の力強さが増すとともにアクセルオフの原則度が強くなり、アクセルペダルの操作だけで速度を調整しやすくなる。
さらにアクアは内装も比較的上質で、価格はGの2WDが223万円だ。ヤリスハイブリッドGに比べて8万5000円高いが、アクアGは前述の通り各種の機能を向上させ、100V・1500Wの電源コンセントやLEDヘッドランプも標準装着する。ヤリスにも6スピーカーが備わるなど優位性はあるが、総合的にはアクアGが買い得だ。
また新型プリウスがスポーティ&上級路線に移ってしまい、以前ほど低燃費を追わなくなったため、これまでのプリウスユーザー(特に50代以上の高齢者)が、35.8㎞/Lという低燃費で高級感もある普段使いに適したアクアに流れることが予想される。
■あまり人に教えたくないおススメ車2:ホンダフィット
●買い得グレード:1.5HOME(182万6000円)
●2022年の1か月平均登録台数:約5000台
●納期:約6か月
フィットはコンパクトカーの主力車種で、初代モデルは2002年に国内販売の総合1位になった。しかし現行型は売れ行きが低迷する。2020年に発売されたが、2016年に登場したフリードよりも登録台数が少ない。
販売が伸び悩む理由は2つある。ひとつはボディスタイルだ。スポーティ感覚が希薄で、フロントマスクのデザインも一般的ではない。2つ目の理由は、前述の通り今のホンダの国内販売では、軽自動車比率が50%以上に達することだ。フィットのユーザーは、N-BOXなどの軽自動車に奪われた。
ただしフィットも実用性が高い。全長が4m以下で、全高を立体駐車場が使いやすい1550mm以下に抑えた5ナンバー車では、車内が最も広い。後席の膝先空間は、アクアと同じ測り方で、握りコブシ2つ半に達する。
燃料タンクを前席の下に搭載したから、後席を床面へ落とし込むように格納することも可能だ。この状態では荷室容量が大幅に拡大され、大きな荷物も積みやすい。後席の座面を持ち上げると、後席側のドアから車内の中央に、背の高い荷物を積むことも可能だ。多彩で実用的なシートアレンジを特徴とする。
外観は存在が乏しいが、水平基調のボディは視界が良い。コンパクトカーで大切な街中での運転のしやすさ、車庫入れのしやすさなどを追求した。先ごろの改良では、パワーユニットを改善して、ノーマルエンジンは排気量を従来の1.3Lから1.5Lに拡大した。
以前はハイブリッドのe:HEVに比べて、登坂路などでパワー不足を感じたが2022年10月のマイナーチェンジモデルから解消された。買い得グレードになる1.5HOMEの価格は182万6000円で、従来型に比べると5万8300円値上げされたが、排気量の拡大も考慮すると今でも買い得度は強い。
■あまり人に教えたくないおススメ車3:スズキソリオ
●買い得グレード:ハイブリッドMX(185万200円)
●2022年の1か月平均登録台数:約3300台
●納期:約6か月
ソリオは全高が1700mmを超える背の高いコンパクトカーだ。後席側のドアはスライド式で、プラットフォームは小型車用だが、スペーシアの拡大版に見える。背の高いコンパクトカーではトヨタルーミーの人気が高く、2022年の1か月平均登録台数は約9400台に達した。ソリオの売れ行きは、ルーミーの35%に留まる。
ソリオは軽自動車と同様に狭い場所での運転のしやすさ、駐車場での使い勝手を重視して開発され、全幅を1645mmに抑えた。この外観が貧弱に見えることも、売れ行きが伸び悩む原因ではないだろうか。
しかし商品力はルーミーよりも高い。ソリオは内装が上質で、後席の座り心地も快適だ。ルーミーの後席は座面の柔軟性が乏しく、床と座面の間隔も不足するから、足を前方へ投げ出す座り方になる。その点でソリオは自然に座れる。
ソリオのエンジンは直列4気筒1.2Lで、大半のグレードがマイルドハイブリッドを搭載する。ルーミーの直列3気筒1Lに比べると、動力性能に余裕があってノイズも小さい。マイルドハイブリッドのWLTCモード燃費は、2WDが19.6km/Lだ。ルーミーの18.4km/Lよりも優れている。ソリオは重心が高い割に、走行安定性と乗り心地のバランスも良い。この点でもルーミーを上まわる。
ソリオハイブリッドMXの価格は185万200円だ。LEDヘッドランプはオプションで、右側スライドドアの電動機能も装着されないが、衝突被害軽減ブレーキ、サイド&カーテンエアバッグ、アルミホイールなどは標準装着される。走りや居住性も満足できるから買い得だ。
以上のように、公表される販売台数が少なくても、ていねいに造り込まれた商品力の高い車種は多い。購入時には、ひと通りのライバル車を確認したい。
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