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 開業を目前に控えた西九州新幹線「かもめ」。武雄温泉~長崎間を最高時速260kmで駆け抜け、博多~長崎間は最速1時間20分となり、既存の特急列車よりも約30分短縮される。今回、開業に先立ち報道陣向けの試乗会が開催されたので、一足先に「西九州新幹線」に乗ってきました!

文、写真/村上悠太

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■まず「リレーかもめ」に乗って、それから「かもめ」に乗車

 この日、報道陣が集まったのはJR佐賀駅。ここから新幹線「かもめ」に乗車……ではなく、僕らが乗ったのは885系という在来線特急車両。

 西九州新幹線「かもめ」は、博多~武雄温泉間を在来線特急「リレーかもめ」で結び、武雄温泉~長崎間は新幹線「かもめ」が結ぶ、「対面乗換方式」が採用されたちょっとユニークな新幹線。在来線と新幹線の乗り換え駅となる武雄温泉駅では、「リレーかもめ」と新幹線「かもめ」がスムーズに乗り換えられるように同一ホームで双方を行き来できるようになっている。

 885系は現在、在来線を走る特急「かもめ」の一部に使用されており、西九州新幹線が開業する9月23日以降、特急「かもめ」はその使命と列車名を西九州新幹線にバトンを渡し、引退する。885系は今後「リレーかもめ」などに使用される。

新幹線開業後は「リレーかもめ」としても活躍する885系

 そんな885系に乗って、しばし長崎本線と佐世保線を走り、ほどなくして武雄温泉駅に到着。向かいのホームには真っ白な新幹線「かもめ」がすでに入線しており、乗り換え客を待っている。

車内に出された「リレーかもめ」の文字

 実際の営業運転ダイヤでは「リレーかもめ」と新幹線「かもめ」の乗り換え時間は「3分」に設定されており、途中下車せずに通しで利用する場合は、一枚のきっぷとして販売される。

 また、指定席、自由席の号車も「リレーかもめ」と新幹線「かもめ」でおおまかに合わせられているので、乗り換え時にホーム上を延々と歩く心配はない。とはいえ、一度下車しての乗り換えとなるので、小さな子ども連れや大きな荷物を持っての旅行の場合は、なるべくドア付近の席を予約しておくとより安心だ。

「リレーかもめ」とはこのように同一ホームで乗り換えできる

■外装はかなり攻めたデザイン

 西九州新幹線「かもめ」は6両編成で1~3号車が指定席、4~6号車が自由席で運行される。1~3号車は東海道新幹線や東北新幹線などに見られる2+3の座席配列ではなく、2+2配列のゆったりレイアウト。座席のデザインも自由席のものとは異なる上、号車ごとにシートカラーが違っているこだわりよう。

1号車指定席の車内。2列配置でゆったりと座れる

 この車両をデザインしたのはJR九州の観光列車「D&S列車」など、数々のユニーク列車を作り上げてきた水戸岡鋭治氏。新幹線「かもめ」に使用されている車両はN700Sという車両で、現在では同じ形式が東海道・山陽新幹線でも走行しているが、そのN700Sとは似て非なるもの。

「新幹線車両はとにかく制約が大きく、なにか工夫しようとすると予算も規則も重量もオーバーしてしまう」とのことで、氏がデザインする他列車に比べると内装こそインパクトを抑えて、既存のN700Sのニュアンスを感じるが、外装はかなり「攻めた」デザイン。ベースは他の新幹線にも採用されている白だが、「白の中でも純白に近い白を採用した」というボディは大きな「かもめ」の文字と合わさって存在感も抜群だ。

■「出来立ての線路の上を、すべるように走る」!!

 さあ、新幹線「かもめ」に乗り換えて、いよいよ長崎駅を目指して出発!今回は対面乗り換えも体験したが、同一ホームということもあり、乗り換えはスムーズという印象。

 試乗列車は西九州新幹線の途中駅全てに停車する各駅停車のダイヤ。長崎までの所要時間は約30分だ。

 在来線から乗り換えると、新幹線の乗り心地の良さを特に感じる。西九州新幹線は線路も車両も新品そのものだからなおのこと! まさに出来立ての線路の上を、すべるように走る乗り心地。

 途中駅は「嬉野温泉」、「新大村」、「諫早」の3駅。これに「武雄温泉」、「長崎」を加えた、合計5駅が西九州新幹線の駅だ。他の新幹線に比べて駅間は短いものの、加速力のよいN700Sは、スムーズな高加速で、短時間で高速域まで加速する。

新幹線「かもめ」から見た大村湾の車窓

 先を急ぐ新幹線は各駅をなるべくショートカットして走るために、どうしてもトンネルが多くなってしまうのが少々残念。さらに特急「かもめ」がこれまで走ってきた長崎本線は、有明海に沿うようにして走っているため、車窓も絶景ということで、よく「西九州新幹線になって車窓が残念……」と言われがちだが、西九州新幹線が開業する9月23日には、新幹線と同時に、特急「かもめ」が走ってきた長崎本線と大村湾の風景が楽しめる大村線を走る、新しい観光列車(D&S列車)「ふたつ星4047」がデビューするので、こちらも楽しみに待ちたい。

■車窓を楽しむなら指定席は「D席」がおすすめ

 そうこうしているうちに試乗列車は嬉野温泉駅に到着。嬉野温泉は武雄温泉と並んで「美肌の湯」として名高い。また、この温泉水で煮たトロトロの湯豆腐や嬉野茶も有名。実際、トンネルとトンネルの間の車窓には茶畑も見られる。

 西九州新幹線に乗るなら、指定席はD席、自由席ならE席がおすすめ。その理由は次の嬉野温泉~新大村間にある。新幹線「かもめ」になって、在来線時代に見ることができた有明海は見えなくなってしまったが、新幹線になった今度は大村湾を見ることができる。

 さらにトンネルを抜けた先から新大村駅の先まで、比較的長い間その光景を見ることが可能。この日は幸いなことに快晴で、青々とした大村湾の車窓を楽しむことができた。時間帯によっては夕日を眺めることもできそうだ。

 新大村駅は既存の大村駅とは別の位置に開業するが、付近を走る大村線にも同様に新駅として新大村駅が開業するので、乗り継いで大村駅にいくことができる。続いて停車した諫早駅は既存の長崎本線の駅に併設して開業する形だ。JRのほか、島原鉄道に乗り換えることができ、島原港を経由し、フェリーで熊本へ向かうこともできる。

 諫早を出て少し車内でくつろぐうちに、新幹線「かもめ」は速度を落とし、トンネルを抜けると、さっきまで大村湾を映していた車窓には稲佐山の姿。もう長崎駅に到着だ。

 武雄温泉~長崎間には既存の鉄道路線がなく、単純比較はできないが、やはり新幹線は早くて速い。また、在来線特急「かもめ」が走っていた長崎本線は、海岸線を走るため、カーブも多く、必然的に揺れも発生するが、新幹線「かもめ」の乗り心地は快適そのものだ。

大村市民向け一般公開のようす

 この試乗会の翌日には、西九州新幹線「かもめ」に使用される、N700S全4編成が熊本総合車両所大村車両管理室(大村車両基地)に勢ぞろい。ここは通称「かもめの巣」ともよばれているそうで、この日は先着500名の大村市民に対し、車両基地内を公開。開業後は4編成が全てそろうことはまずないので、その貴重な光景に参加者は大興奮のようすだった。

 西九州新幹線「かもめ」は2022年9月23日開業。新しい西九州が、まもなく始まる。

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