本誌『ベストカー』にて、毎号技術系の最新情報や気になる話題をお届けしている「近未来新聞」。
今回は超絶好調BYDの決算、中国の新EVが目指す驚異の航続距離などの話題をお届けします!
※本稿は2022年9月のものです
文/角田伸幸、写真/ベストカー編集部、AdobeStock ほか(トップ画像=Robert@AdobeStock)
初出:『ベストカー』2022年10月26日号『近未来新聞』より
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■マツダの年間利益を半年で稼ぐBYDの脅威
日本の乗用車市場に参入した中国BYDだが、絶好調の決算が発表された。
2022年1~6月の売上高が前年同期比65.7%増の1506億700万元(約3兆800億円)、純利益同206.35%増の35億9500万元(約736億円)に達したのだ。
この数字は、マツダの2022年度通期の決算(売上高3兆1203億円、純利益816億円)に近い。BYDはほぼ同額の数字を、その半分の6カ月で稼ぎ出したことになる。
好決算の理由だが、中国国内でEVとPHVの売り上げが急増したことが挙げられる。BYDは今年1~7月に約80万台を販売。これはテスラの約32万台をはるかに凌ぐブッチギリ首位の成績だ。
この躍進を対岸の火事のように感じる人も多いだろうが、楽観視はしていられない。BYDは今年、日本以外にもオーストラリアやオランダ、タイ、ドイツ、デンマーク、イスラエルへの進出を明らかにし、海外攻勢を強めているからだ。
これらの市場がすぐに利益を生むことはないだろうが、日本車が強いオーストラリアやタイでは、じわじわと日本車のシェアを奪っていく可能性も否定できない。日本車メーカーは現地での電動化戦略を早期に固めて、防戦に備えるべきだろう。
■中国ジーカーの新EVが航続1000km達成か
電気自動車にとって、1000kmという航続距離は一つの夢だ。コンセプトカーとしては、今年4月にメルセデス・ベンツの「EQXX」が無充電で1050kmを走破したが、いざ量産となるとコストやパッケージングが大きな壁となり、とたんに実現が難しくなるのだ。
そんななか中国メディアが、「世界初の1000km走れるEV登場か?」と報じている。ボルボやロータスを傘下に持つ浙江吉利控股集団の高級ブランド「Zeekr(ジーカー)」のニューモデル「009」が、来春CATL製バッテリーを積んでそれを可能にするというのだ。
写真を見ていただきたいのだが、ジーカー009は全長5mを超える大型のミニバン。どこかロールスロイスを思わせるフロントグリルが特徴だが、とても航続距離がウリの電気自動車とは思えない。
その「想定外」を可能にしているのが、当欄でも7月に紹介したCATLの最新電池「麒麟」だ。麒麟は「セル・トゥ・パック」という技術で集積度を高めたリチウムイオン電池で、テスラの最新電池「4680」を上回るエネルギー効率を誇ると言われる。
ジーカーの009がこの麒麟をどんなレイアウトで、どれだけ搭載するのかは不明だが、大型ミニバンであれば、ポルシェ・タイカンを超える100kWh超のバッテリーを搭載する可能性もなくはない。登場を楽しみに待ちたい。
■そのほかの近未来系ニュースを20秒でチェック
●日野自動車の不正が思わぬところにも波紋を広げている。消防車やゴミ収集車といった特装車が作れなくなっているのだ。
例えば消防車の架装を手がけるモリタ。国内の消防車の約6割を手掛けるという大手だが、消防車のベースとなる車台の大半に日野自動車製を使っていたため、架装が行えなくなっているという。
日野自動車は一部のトラック・バス用エンジンの出荷再開が認められたが、フル稼働は来年夏以降となりそう。自治体の消防活動などに、影響が出ないことを願いたい。
●世界各地で異常気象が報告されているが、米カリフォルニア州ではひどい熱波が街を襲った。州政府はエアコンの使用による電力のひっ迫に備えて警報を出したが、そのとばっちりを受けたのが電気自動車。なんと充電を控えるよう要請が出たのだ。
とはいえ要請は電力消費のピークとなる午後4~9時の充電に限ったもの。アメリカでも多くの人は夜間に充電するから大きな影響は出なかった。日本でも同様の事態は起きそうだから、EVユーザーは学んでおくべきかも。
●ルノーがEV部門を分社化するというニュースは過去にも紹介したが、どうやらエンジン部門の身売りも進めているらしい。
その引き受け先として名前が挙がっているのが、上でも紹介した吉利。株式の4割程度を引き受けて、電動化の遅れた地域にエンジン売り込みを狙うようだ。吉利はベンツの大株主だが、ルノーとの結びつきも深まりそうだ。
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