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VWはトゥアレグの誕生20周年を記念して、特別モデルを発表した。それに併せて、歴代モデルをミュージアムから借り出し、560馬力のスーパーSUVを含む各モデルを紹介する。

2022年、フォルクスワーゲンはe-mobilityの話題で持ちきりだ。会社全体?いや、不屈のプロダクトチームは、BEVの優位性に抗うことを決してやめているわけではない。

そして、その情熱を将来の野心的なプロジェクトに投入し続けている。なにしろ、2016年に「フェートン」が眠りについて以来、「トゥアレグ」がVWブランドのフラッグシップモデルとして活躍しているのだから。

左が目立たない2代目3.0TDI、中央が新型スペシャルモデルEdition 20、右がスペクタクルなW12という3世代。

それなのに、「トゥアレグ」は、控えめな上役の役割で満足している。4分の3以上がトレーラーのカップリングを備え持っており、豪華なモーターボートや高価な競争馬だけでなく、実用車としてミニショベルや木材粉砕機も牽引している。そのため、VWは現行の「トゥアレグ」のモデルレンジにユーティリティを削減したスーパースポーツバージョンを見送ることにしたのだ。

5リッター弱の排気量から313馬力を発揮

しかし「トゥアレグ」の初代では、VWは5リッター弱の排気量から313馬力という想像を絶するパワーを発揮する10気筒のTDIを誇っただけでなく、合計6リッターのシリンダー容量を持つ12気筒ガソリンエンジンを追加したスタディモデルもあったのだ。

一般道では、今の感覚からすると初代トゥアレグは煩わしく感じるが、未舗装路ではちょうどいい設定になっている。

「W12」は、2年前に登場した「ポルシェ カイエン ターボ」が8気筒であるのと同様、12気筒からたった450馬力を発生させる「だけ」だった。しかも、ターボなし、つまりターボラグなし。

ミュージアムから借り出したワンオフW12トゥアレグのハンドルを握ると、それだけでテンションが上がる。そして、すぐに幻滅する。確かに、ちょっとだけガソリンの血が騒ぐと、口角が上がるような音がする。そして、小さな馬を走らせると、2.6トンという重さがネックとなってしまう。オートマチックのギアチェンジは頻繁に行われ、加速すると12気筒のエンジンが唸る。

ギミックを増やしたトゥアレグ1

しかし、サルデーニャの小さな山道でさえ、このモンスターは運転するのが楽しいのだ。

トゥアレグ2は、先代モデルと比べて200kg以上の軽量化を実現した。最も小さい部分は、オフロード用のリダクションを省略したことによるものだ。

オフロードでは、「トゥアレグ1」が後継モデルで温存したギミック、オフロードリダクションとリアアクスルロックが最大限に活かされた。しかし、このワンオフモデルでは、そこまではできない。テスト車だと聞いている。証明書には560馬力と記載されている。しかし、本当にそんなにあるのだろうか?

この時代に、この操作性は本当に時代遅れな感じがする。トップモデルである「W12」には、価格表に書かれていたものがすべて搭載されていた。それに応じてボタン類も多く、メニューは枝分かれしており、タッチキーで操作することになる。

2代目8速オートマチック

2010年から2018年にかけて製造された第2世代の「トゥアレグ」には大きな飛躍があり、「フォルクスワーゲンクラシック」もその1台を提供してくれた。それは私のお気に入りのモデル、800Nmの大トルクで素晴らしくパワフルである。そしてそれはV8ディーゼルではなく、ベストセラーのバリエーション、V6 TDIだった。ポストフェイスリフトモデル、つまりすでに「ブルーモーション」触媒とAdBlue注入が搭載されているモデルだ。

リダクションギアやメカニカルロックがなくても、トゥアレグは果敢に登る。

その理由は、「トゥアレグ1」とは異なり、タイヤと路面の間で何が起こっているのかがリアルにフィードバックされる、よりダイレクトなステアリングにある。「V6 TDI」は十分にパワーを生み出し、8速オートマチックとの相性も良い。現代の多くのクルマが、このクルマから学ぶべき点がある。

トゥアレグ3はさらにスリムになった

そして、VWが2代目「トゥアレグ」に厳しいダイエットを課していることが感じられるのだ。初代の「W12」型と比較すると約400kg、同等の「V6 TDI」と比較すると200kgの軽量化が図られている。

VWは「トゥアレグ3」から、さらに100kgを削減することができた。全長で数センチ大きくなっているのにかかわらず、である。

現行モデルが2018年末に登場したときは、12インチと15インチのディスプレイによる巨大な画面風景がまだ壮観だったが、その間に「デジタル炎」が軒並み襲い、小型車クラスでも、安価なタッチパネルによる(ほぼ)ボタンレス操作がすでに普通とされるようになっている。

現行トゥアレグの特筆すべき点は、ロードでもグラベルでも、静かなエンジンとビロードのようなサスペンションによる乗り心地の良さだ。

つまり、現代に届いたということだ。それは、運転中にもすぐにわかる。なぜなら、私が動き出すとすぐに、フルパッケージのアシストシステムが私の手からクルマのコントロールを奪おうとするからだ。しかし最新装備であるベンチレーション付きフロントシートのマッサージ機能や、心地よいダイナオーディオサウンドシステムなど、心地よいものは評価できる。

しかし、VWはもちろん追加料金を課す。私が乗っている「トゥアレグ」は特別仕様の「エディション20」であるにもかかわらず、だ。「R-Lineブラックスタイル」をベースに、いくつかの素敵なディテールを追加している。

「エディション20」は、204馬力のディーゼルが77,530ユーロ(約1,085万円)から、286馬力のディーゼルが81,600ユーロ(約1,142万円)から、340馬力のガソリンが81,225ユーロ(約1,137万円)から用意されている。381馬力の「eハイブリッド」は、アニバーサリーパッケージとの組み合わせも可能だが、現時点では一般に販売されていない。残念だなー、それならもっと「トゥアレグ」の存在をアピールできたのに。

【ABJのコメント】
「フォルクスワーゲン トゥアレグ」、登場してからもう20年なのか、とちょっと感慨深くなった。フォルクスワーゲン初の大型SUVとして登場した「トゥアレグ」はご存じのように「ポルシェ カイエン」の兄弟車ともいえる自動車であり、フォルクスワーゲンが高品質で青いメーターなどに彩られた、ちょっとプレミアムな方向に歩み始めたころの一台である。日本では初めてのSUV(というか4ドアモデルというか、いろいろな意味で初ものであった)、「ポルシェ カイエン」に注目が集まり、比較的地味な存在ではあったが、私は個人的には、「カイエン」よりも「トゥアレグ」のほうが好きであった。

シンプルで飾りすぎないデザインも、すっきりとした内装も、「カイエン」の特にターボモデルのように過剰過ぎないパワーユニットも、どれもフォルクスワーゲンらしいSUVであり、大型犬のように安心して心置きなく付き合えるSUVモデルであったと、今でも思う。そのころ私の友人の家でも「トゥアレグ」を新車で購入し、毎週のようにスキーに行くのに使っていた姿を思い出す。全身を融雪剤と泥で真っ黒にしたスタッドレスタイヤ付きの「トゥアレグ」は、おそらく日本でも一番「それらしく」使われた一台であったろう。そしてそのようにガンガン使ってこそ「トゥアレグ」は真価を発揮するようなモデルであったと思う。

そのころの「トゥアレグ」からすると今の「トゥアレグ」はなんとも豪華で大きく高性能になった。そしてあの頃のプレインな、実用車らしい雰囲気をちょっと失ってしまっていることが残念である。もちろん「カイエン」からすればずっと実用車らしい一台だし、フォルクスワーゲンの最上級SUVという位置づけから考えれば現状の姿は納得できる。でも私があこがれるほど格好いいと思った、あの泥だらけの「トゥアレグ」こそ、本来の姿ではないかと20年を振り返りながら思い出していた。(KO)

Text: Thomas Rönnberg
加筆: 大林晃平
Photo: Volkswagen AG