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 浜名ワークス(静岡県浜松市)が2022年5月開催の「ジャパントラックショー2022」に出品した白色のキャリアカー(車両運搬セミトレーラ)は、トヨタ輸送グループが運用中の「Tモデル」と呼ばれているもの。2015年の導入以来、毎年改良を積み重ねてきた主力モデルで、今回お披露目されたのはその第7世代モデルとなる。

 一体、どこがどう進化したのか? 進化のポイントを探った!!

文・写真/トラックマガジン「フルロード」編集部
※2022年9月12日発売「フルロード」第46号より


ハイブリッド車6台積みに対応するTモデル

浜名ワークスが開発した6台積み1軸キャリアカー「Tモデル」の第7世代「F型」

 トヨタ自動車グループのトヨタ輸送は、トヨタの新車輸送のために設立された物流会社で、年間輸送台数は国内トップの335万台で、従業員数は1千人を超える。

 Tモデルは、作業性と安全性を向上させると同時に、車両コストの節減も図った6台積1軸キャリアカーで、同社および同社グループ会社、協力会社も使用する主力中の主力だ。

 Tモデルが開発された2014年ごろといえば、ハイブリッド車がコンパクトカーからミニバン、さらに4ナンバー車まで広がろうとしていた時期。ハイブリッド車は環境性能に優れるが、純ガソリン車と比べて1台あたりの重量が15〜20%ほど重く、車種にもよるが、従来のキャリアカーでは積載オーバーになる場合も想定された。

 そこでTモデルは、扁平ダブルタイヤを履く固定式の車軸、いわゆる「乗り越え軸」を採用し、拡幅機構を備える従来のシングルタイヤ車軸よりも構造を簡素化することで車両重量を軽量化。

 また、サイド枠の構造も見直して柱も低減。さらに、ほとんど連結したままで運用することから、ランディングギアも省いて重量を軽減。これらの設計変更により、従来の1軸キャリアカーではなし得なかった最大積載量10.4tを確保。多くのハイブリッド車の6台積みを実現した。

Tモデルの第6世代までの進化の歩み

 Tモデルは、ドライバーの積み降ろし作業のしやすさや、安全性の改善も図っているのが特徴だ。

 具体的には、商品車(運ばれるクルマ)の積み降ろし時の安全性と作業性を改善するため、油圧稼働デッキの設計を見直し、上段デッキに積み込んだ商品車の固縛作業(専用の固縛養フック付ワイヤーでクルマを固定する)を、地上からの高さ1.6mの位置でできるようにした(従来は2.5m)。

  また、サイド枠の減少で商品車からの乗降性もアップ。昨今の乗用車の全幅拡大トレンドに、いち早く対応した。

さらなる新システムを導入した最新の第7世代Tモデルとは?

 Tモデルは、毎年現場からのフィードバックによる改良や、車体構造/コストの最適化などで進化を繰り返してきた。現行型は「F型」と呼ばれる第7世代モデルで、「接近センサー」「音声ガイダンス」「固縛用ベルトラック」などを装備する。

 接近センサーは、上段デッキの2番(中央)フロア裏側にセンサーを装着。フロア操作時に、下段デッキに積載したクルマへの接触を防止する。現在も試験中で、今後さらなる改良が行なわれる可能性もあるという。

 音声ガイダンスは、トレーラ右側前部と左側中央部、後面にそれぞれ1基ずつ赤外線センサーを装着。作業者を検知すると、ケアレスミスを防止する人工音声を発し、注意をうながす。

 タイヤ固縛用ベルトラックは、従来のワイヤ固縛方式に加えて、新たに導入されたタイヤ固縛方式で用いるラッシングベルトを収納するための装備。これは新規車両のほか、既存の車両に対しても、二次架装による追加搭載が進められているものだ。

 このほか、上段デッキを支える最後部のスライド柱は、最新の応力解析技術を駆使し、強度/剛性はそのままに板厚を薄くし、さらなる軽量化を図っている。

 なお、トヨタ輸送と浜名ワークスではすでに第8世代となる「G型」も開発している。G型は、F型をベースに細部を改良したモデルという。

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