「スーパーGT」は、年間約40万人もの観客数を動員した名実ともに国内No,1のレースシリーズだ。2022年は全8戦中、残すところあと3戦と終盤戦に差し掛かっているが、改めて国内最高峰のハコレース「スーパーGT」に着目し、その人気の秘密に迫っていく。
宮城県のスポーツランドSUGOで第6戦『SUGO GT 300km RACE』84LAPのレースが行われた。来場者数は9/17(土)の予選は8300人、9/18(日)の決勝が1万7000人と発表されておりこのレースの人気の高さが伺える。
このサーキットは、日本のサーキットの中で最も標高差(69.83m)が高く、コース幅が比較的狭いテクニカルなサーキット。スタート後の下りと、最終コーナーからの急勾配(高低差35m)が名物。アクシデントが起きやすいことから「SUGOには魔物が棲んでいる」と言われるサーキットだ。
予選では、GT500クラスが#19WedsSport ADVAN GR Supra 国本 雄資 / 阪口 晴南が今季4度目となるポールポジションを獲得。GT300クラスはトップタイムを出したチームの車両にレギュレーション違反が予選後の車検により発覚し。同チームのタイムは抹消となり、2位であった#61 SUBARU BRZ R&D SPORT 井口 卓人 / 山内 英輝がポールポジションを獲得。
決勝当日は台風14号の影響か、悪天候が予想された。13時を過ぎた頃に小雨が止んで、14時のスタート時には路面がドライとなり、各車スリックタイヤでのスタートとなった。GT500はスタート1周目で予選2位の#38 ZENT CERUMO GR Supra(立川祐路 / 石浦宏明)が、ポールポジションの#19 WedsSport ADVAN GR Supra(国本雄資 / 阪口晴南)を抜いてトップとなる。しかし同一周でGT300クラスのマシン同士で接触があり、#9 PACIFIC hololive NAC Ferrariがコースアウト。その後、コースアウトしたマシンが回収され、安全が確保されるまでセーフティカーが導入される。2周でセーフティーカーは退去してレースは再開されたが各車リードしたマージンはリセットされた。
その後、10周目を過ぎた頃よりまた雨がまたポツポツと降り始め、その後本格的に降り出すコンディションとなり、GT500 #39 DENSO KOBELCO GR SUPRAがいち早くピットインしウエットタイヤに交換。その後、予選11位の#3 CRAFTSPORTS MOTUL Z(千代勝正 / 高星明誠)他各チームの大半がピットインをして、タイヤ交換、給油を行なった。
しかし、予選7位の#16 Red Bull MOTUL MUGEN NSX-GT(笹原右京 / 大湯都史樹)と降格で予選7番手スタートとなった#23 MOTUL AUTECH Z(松田次生 / ロニー・クインタレッリ)はスリックタイヤのまま走り続けて1、2位に浮上した。
雨が降り続く中、19周目に、GT300クラスの車両がコースアウトして動けなくなり、全車両が一定の速度で走り、各車前後の車両との間隔を変えてはいけないFCY(フルコースイエロー)となった。この車両がコースアウトした直後、FCYが出る前に、レースをリードしていた#16と#23はピットインをしてウエットタイヤに交換。この素早い判断がレース後半に向けて大きなアドバンテージを得る事となった。
全車ウエットタイヤとなったが、この時点でトップは予選2番手の#38 ZENT CERUMO GR Supra (立川 祐路 / 石浦 宏明)。しかし、ミシュランタイヤを履く#23と#3のペースが非常に良く、#23が#38を抜きトップに躍り出る。#3も#38を抜き2番手に浮上。これでNissan Z GT500のワン・ツーとなった。
44周目終了時点で#23がピットイン、トップに立った#3千代は後続に対して大きなマージンもあるため、ピットインを延ばす。そしてドライバー交代の規定周回が近づいた55周目にピットインして、スリックタイヤでトップのままコース復帰する。残り10周前後で再度小雨が降り始めたが、ハイペースをキープし、そのまま1位でゴールした。
変化する天候とアクシデントに的確に対応した#3CRAFTSPORTS MOTUL Z(千代勝正 / 高星明誠)が今季2勝目となり、ドライバーズポイントランキングでもトップとなった。まさに戦略の勝利といえよう。
GT300クラスはスタート後の雨とピットインのタイミングで目まぐるしく順位が変動したが、GT300でもレインタイヤへの交換を遅らせたチームが上位に入る。予選12位の#10 TANAX GAINER GT-R(富田竜一郎/大草りき)、予選17位の#11 GAINER TANAX GT-R(安田裕信/石川京侍)は雨が降り始めた時点でもスリックタイヤで走り続けた。それぞれ30周を前にレインタイヤに交換したが。この戦略が功を奏して#11が一時トップに、#10は3位に躍り出る。路面が乾き始めた頃の43周目に#11、44周目に#10がスリックタイヤに変更。激しいバトルを展開しながらチェッカーを受けた。
優勝した予選13位の#2 muta Racing GR86 GTは、タイヤ選択とピットインのタイミングのギャンブルを成功させた。レース序盤の14周目にウエットタイヤに替え、ドライバー交代ぜずそのまま加藤がルーティンのピットインを遅らせる作戦に出たのだ。その後、ライバル達のピットインもあって36周目には2番手以降を大きく引き離してトップになっていた。そして終盤の49周目にピットイン、堤にドライバー交代、スリックタイヤに変更し、そのままトップでチェッカーを受けた。
GT500ポイント圏内リザルト
1位 #3 NDDP RACING CRAFTSPORTS MOTUL Z 千代勝正/高星明誠
2位 #23 NISMO MOTUL AUTECH Z 松田次生/R.クインタレッリ
3位 #16 TEAM Red Bull MUGEN Red Bull MOTUL MUGEN NSX-GT
4位 #38 TGR TEAM ZENT CERUMO ZENT CERUMO GR Supra 立川祐路/石浦宏明
5位 #12 TEAM IMPUL カルソニック IMPUL Z 平峰一貴/B.バゲット
6位 #39 TGR TEAM SARD DENSO KOBELCO SARD GR Supra 関口雄飛/中山雄一
7位 #64 Modulo Nakajima Racing Modulo NSX-GT 伊沢拓也/大津弘樹
8位 #100 TEAM KUNIMITSU STANLEY NSX-GT 山本尚貴/牧野任祐
9位 #36 TGR TEAM au TOM’S au TOM’S GR Supra 坪井翔/G.アレジ
10位 #37 TGR TEAM KeePer TOM’S KeePer TOM’S GR Supra S.フェネストラズ/宮田莉朋
GT300ポイント圏内リザルト
1位 #2 muta Racing INGING muta Racing GR86 GT 加藤寛規/堤優威
2位 #11 GAINER GAINER TANAX GT-R 安田裕信/石川京侍
3位 #10 GAINER TANAX GAINER GT-R 富田竜一郎/大草りき
4位 #56 KONDO RACING リアライズ日産メカニックチャレンジ GT-R 藤波清斗/J-P.デ・オリベイラ
5位 #7 BMW Team Studie × CSL Studie BMW M4 荒聖治/A.ファーフス
6位 #65 K2 R&D LEON RACING LEON PYRAMID AMG 蒲生尚弥/篠原拓朗
7位 #55 ARTA ARTA NSX GT3 武藤英紀/木村偉織
8位 #61 R&D SPORT SUBARU BRZ R&D SPORT 井口卓人/山内英輝
9位 #96 K-tunes Racing K-tunes RC F GT3 新田守男/高木真一
10位 #25 HOPPY team TSUCHIYA HOPPY Schatz GR Supra
次戦『FAV HOTEL AUTOPOLIS GT 300km RACE』は10/1(土)、10/2(日)に大分県のオートポリスで行わる。各車のサクセスウエイトも半減される為、より熱いバトルが繰り広げられる事だろう。
Text&Photo:Hisao Sakakibara
【筆者の紹介】
Hisao sakakibara
モータスポーツフォトグラファー。レーシングカー好きが高じて、サーキット通いに明け暮れる。モータスポーツの撮影取材を始めて25年のベテランフォトグラファー。