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大胆な減税政策を掲げ、9月に誕生したばかりのイギリス・トラス政権が窮地に陥っている。

新政権の目玉として発表された大型減税策を巡って市場が混乱し、内外から批判を浴びたことを受け、トラス首相は今月14日に、就任わずか1カ月あまりでクワーテング財務相を更迭。大型減税策の要だった所得税率45%撤廃案、法人税引き上げの中止はいずれも既に撤回されている。

就任演説でも減税を掲げたトラス首相だったが…(英首相府サイトより)

「補助金政治のため減税できなくなった」

新財務相に就任したジェレミー・ハント氏は15日、BBCのラジオ番組「トゥデイ」で、「とても厳しい時期を乗り越えるためあらゆる人に一定の犠牲をお願いしなくてはならない時に最も裕福な人への所得税の最高税率を廃止するのは間違いだった」と述べ、減税策に誤りがあったとの認識を示した。

このニュースを受け、減税派のあるツイッターユーザーは、「トラスの岸田化」と表現していた。

減税はやめる一方、エネルギー価格保証制度はやめてない。つまりこれはトラスの岸田化という話。日本同様、補助金勢力に負けた。そんな補助金政治を喜ぶ反反緊縮

続いてこのユーザーは、次のように指摘していた。

減税が失敗したのではなく、補助金政治に徹するため減税ができなくなった。つまり日本と同じ社会主義政策をやりますという話。減税派を揶揄してる連中は、根が社会主義

減税派からからいわば、「社会主義政策の筆頭」と見られている岸田政権だが、またもや社会主義的なバラマキ政策が行われようとしているようだ。

2000円の電気代支援に大ブーイング

FNNの19日のスクープによると、岸田政権は高騰する電気代の負担を緩和するために、1世帯あたり月額最大2,000円程度を支援する案の検討に入ったという。2023年1月以降のできるだけ早い時期に開始される見込みだ。

J.J /PhotoAC

支持率低下にあえぐ岸田政権は、家計に直接支援をすることで政権浮揚のきっかけにしたいようだが、意に反してネット上では非難の声が相次いでいる。

最大二千円って何?使う量によって変わるわけ?こんな訳わかんないのじゃなくて暫く電気代は消費税かけないとかできんのかな…」

根本的に全て消費税を下げれば、ある程度緩和するのに、一向に下げない政府には何か意図があるのか?

支援金とか要らないから!!ライフラインに消費税等税金は一切掛けませんで終了だろ!!

どこかズレていると言うか思いっきりズレている。税金下げればいいんと違うの?

まず再エネ賦課金やめてくれよ」

また、「たった2000円では何の支援にもならない」という声も少なくなかった。たとえば、2018年総務省統計によると、冬の電気代が全国で最も高くなる北海道の2018年1月の平均電気代は1万2125円だった。北海道では冬は、夏の実に1.6倍の電気代がかかっている。 今年8月29日に、北海道電力は燃料価格高騰を受け、電気代の値上げを発表した。2022年12月分から適用されるため、来年1月の北海道の平均電気代は2018年1月の1万2125円より大幅に上がることが予想されている。

岸田首相「消費税減税は考えていない」

15日、都内の商店街視察で買い物客の主婦らに物価高の実情を聞く岸田首相(鑑定サイト)

電気料金だけではなくガス代の大幅な値上がりも予想され、すでに多くの食料品で過去に例のない値上げが行われている。そうした中にあって、電力料金高騰への「前例のない思い切った対策」(10月3日、岸田首相所信表明演説)が、月々たった2000円の支援では失望感が広まっても仕方がない。

SNSを見る限りでは、多くの人が今回の対策を効果が薄いと感じているが、それでいてこの対策、莫大な費用がかかる。「令和2年国勢調査」によると、日本の世帯数は約5570万世帯。仮に全世帯に2000円を支援すると、1カ月約1100億円かかる。1月から3月まで実施したら約3300億円になる計算だ。この分は、将来、増税という形で国民に降りかかってくるのだろう。

たった2000円を各家庭に支援するより、ネット上で多くの人が指摘するように、一時的にでも消費税を減税した方が簡単かつ効果的ではないのだろうか。しかし、“ザイム真理教”(「週刊現代」2022年10月15・22日号より)に操られているとまで揶揄される岸田首相の財政運営には、その選択肢はないようだ。

18日の衆院予算委員会で、野党議員から消費税減税をするかしないかを問われた岸田首相は、「消費税減税は考えておりません」ときっぱりと述べていた。