スポーツランドSUGOで行われた2022スーパーGT第6戦『SUGO GT300km RACE』の決勝レースは、ドライコンディションでスタートが切られるも、すぐに雨が降り始めてウエットコンディションとなり、レース終盤にはドライコンディションに戻るという、天候に翻弄される展開となった。
そんななか、GT300クラスでは7号車Studie BMW M4のアウグスト・ファーフスがウエット路面をスリックタイヤで圧巻の走りをみせた。
クラス9番グリッドからスタートした7号車はファーフスがスタートを担当。1周目でポジションをひとつ上げると、10周を過ぎてから雨が降り始めたことで、各車がウエットタイヤに交換するためピットに飛び込んだが、ファーフスは“ステイアウト(コース上に留まること)”を選択した。
「確かに雨は降ってきたけど、雨量はそこまで強くなく、コース全体が濡れている状況ではなかった。周回によってはセクター1が乾いていて、最終セクターで雨が降っている。また別の周になるとセクター1で雨が降っていて、最終セクターが乾きつつある。そういった状況だった。そこでチームと細かくやり取りを行い、ピットインかステイアウトかを決めた」
「チームも素晴らしい仕事をしてくれた。的確に周りのラップタイムを教えてくれて、ウエットタイヤを履いたライバルと比べて、僕のペースは同じか彼らより速いペースで走れていた」とファーフス。
18周目にクラストップに立ったファーフスは、雨が降り続けるなかでも好ペースで周回を重ね、一時はウエットタイヤに替えたばかりでペースが上がらないGT500車両を追い回すほど存在感あふれる走りをみせた。やはり、ニュルブルクリンク24時間レースを始め、ヨーロッパで培ってきた経験と知識が、今回のレースでも存分に活かされたようだ。
「(ニュルなどの経験が)おそらく役に立った部分はあると思う。こういったコンディションには自信があるからね。今回もミスをしないことを心がけながらもプッシュすることができた。途中でGT500車両ともバトルをしたよ(笑)。僕自身、スーパーGTのなかでベストレースと言っても良い内容だった」
ファーフスは28周目にピットインし荒聖治に交代。その後も順調に周回を重ねていたが、レースの折り返しをすぎると雨が止み、各車が再びスリックタイヤを履くことになる。7号車も48周目にスリックタイヤに交換したが、最後のスティントでライバルの先行を許すこととなり、最終的に5位でフィニッシュ。「天候が変わり、最後はドライタイヤを装着することになった。そのままウエットでレースができていれば……表彰台や、勝てるチャンスもあったかもしれない」とファーフスも悔しがっていた。
それでも、今回のレースはファーフス自身にとっては、かなり手ごたえがあった様子。今回初めてスポーツランドSUGOを走ったそうだが、コースレイアウトもかなり気に入ったようだ。
「僕のスティントでみんなを追い抜くことができたし、すごく楽しいレースができた! SUGOのコースも初めてだったんでけど、すごく気に入ったよ!」
「オールドスタイルのサーキットで、ブランズハッチに似ている印象がある。アップダウンがあって高速域のコーナーもある。走っていてすごく楽しいなと思う。(スーパーGTの開催コースのなかで)個人的に素晴らしいコースだなと思うのは鈴鹿サーキットだけど、一番大好きなコースはSUGOだね」と、熱く語っていたのが印象的だった。
今回も見せ場を作ったファーフスに、BMW Team Studieの鈴木康昭監督も「アウグスト劇場でしたね! 凄かったです」と、満面の笑みをみせた。
「今回は持ち込んだドライタイヤが少しマッチしていなかったことが公式練習の段階で分かっていました。ですので、今回は天候に助けられたという感じです」
「でも、ヨギー(ヨルグ・ミューラー)のときもそうでしたけど、ニュルを走り回っているドライバーたちは、ああいった場面でスリックで走行する経験がありますし、(そのコンディションが)大好きなんですよね。ウエットタイヤに交換するタイミングも全部アウグストに任せていました。こちらは彼からの要望に応じて、雨雲レーダーやラップタイムをチェックして情報を伝えていました。本当に今回はアウグスト劇場でしたね」
また、次戦の第7戦オートポリスについて鈴木監督は「次のオートポリスはアウグストが来られないので、また(近藤)翼に乗ってもらいます」とのこと。第3戦鈴鹿で優勝を果たした荒&近藤のコンビに、鈴木監督も期待していた。
「今年は唯一、翼が乗ったときに優勝しているので、次回もそうなったら……面白いなと思います。そうなると、きっとアウグストも最終戦はかなり気合いを入れて来てくれると思います!」