東京・秋葉原駅にほど近い神田須田町にある「ケンクラフト」は、建機専門のミニカーショップとしてよく知られた存在です。
その店主である高石賢一さん(ケンさん)は、国内外の建機やトラックに精通しており、その見識は実物と見まごうスケールモデルに見事に反映されています。
今回は、国内でも見かけることが多くなったスカニアトラクタとノーテブームのトレーラが登場。海外の運送会社かと思うようなカッコいいカラーリングのスカニアと、伸縮式6軸のトレーラに、ブルーシートに包まれた電車を積んだモデルを紹介します。
文/高石賢一 写真/岡村智明
*2022年3月発行トラックマガジン「フルロード」第44号より
重量物輸送のエキスパート世新建設運輸の車両を忠実にモデル化
国内でも数多く見るようになったスカニア。カラーリングも欧州で見かけるようなカッコいいデザインばかりだ。運送会社のオーナーもカッコよく仕事するということになってきたのだろう。実際に毎日運転するドライバーにとっても、そんなトラクタに乗っていれば安全で質の良い仕事につながると思う。
神奈川県に本社を置く世新建設運輸は、2015年に50周年を迎えた重量物輸送のエキスパート。超重量、長尺物、橋梁、発電・変電機器等の運搬を得意とする。
ご紹介するトレーラは渋谷駅前に案内所として長らく親しまれてきた電車、旧東急デハ5000系を秋田県大館市まで運搬した姿をモデル化したものだ。
スカニアR650 6×4が牽引するのはオランダ・ノーテブームの伸縮型6軸トレーラで、国内にも多軸トレーラが走るようになってきた。同車には専属ドライバーI氏の拘りが随所にあり、モデルでもその拘り部分を細部まで可能な限り再現した。
スカニアのモデルはWSIが定番だったのだが、IMCが新金型を開発。ノーテブーム6軸はすでにラインナップされていたので、前後セットでモデル化できることになった。2021年12月にできるはずが、コロナの影響で工場に大幅な遅れが出てしまった。だが、果たして待ったかいのある出来となった。
WSIもIMCもオランダのメーカー。WSIは同じくオランダのMAMMOET(マムート)社が立ち上げた模型メーカーで、自社のプロモーションモデル用を手掛けるだけではなく、幅広いラインナップと出来の良さで定評がある。
IMCはWSIのメンバーが独立して設立し、新しいアイデアを盛り込みWSIや他メーカーに負けないクオリティの注目株だ。IMCがスカニアをどう料理してくるのか楽しみであったが、WSIとは違うアプローチで後発の強みを見せた感じだ。
パっと見の雰囲気はシャープな感じ。おそらく1/50トラックモデルで初となる運転席ドア開閉。あまり期待をしていなかったのだが、ドアを閉めたときのボディとの隙間も少なく、開いた時はドア先端が実車のようにボディ側に入るようになっていた。開くとドア内張りやダッシュボードも作り込んである。
実車と見まごうつくり込み 細部にもさまざまな気配りが……
このモデルはドライバーフィギュアも付いている。少なくとも日本人には見えにくいのだが、世新建設の青い作業服を着た専属ドライバーI氏ということになるのか!? 運転席に座らせるのはコツがいるのと、いろいろやってみたが腕が上がったままでハンドルを握ってくれない。
ルーフの水滴型パトライトは日本から支給して使ってもらった。何より嬉しかったのはキャビン後ろの世新特注の工具ボックスだ。
似たような形のものが無いということで、一から忠実に再現してくれた。これは非常にポイントが高い。フロントタイヤの切れ角が大きいのもWSI製に対するアドバンテージだ。
ノーテブーム6軸トレーラにもI氏拘りの箇所がいくつもある。グースネックに装備される2本のスペアタイヤ位置がスタンダードタイプと異なる。
リヤバンパー下の車幅一杯の泥除け。これも特別に制作してくれて、諸元等の細かい文字まで印刷。グースネック裏側にも「NOOTEBOOM」ロゴ入り泥除けを再現した。
もともと出来が良いモデルで、ステアリング機構、伸縮機構、グースネックの機構も実車に近くスケールダウンされている。
今回の主役と言うべき電車は、ブルーシートに包まれ荷台に積まれている。こちらは本来の電車を制作して、それからブルーシートで包んだ感じを表現した。
実物は台車ではなく鉄骨の上に乗せてあったので、同じように制作。2本のベルトも付けそれらしくなった。
原型は国内でS氏にお願いしできあがったモデルを中国に送った。実際に運んだ荷物まで乗ったモデルはあまりないので、ユニークな存在ではないだろうか。
投稿 重量物を運ぶスカニアR650+ノーテブーム6軸のミニチュアモデルにぞっこん!【ケンさんのホビーは楽し!】 は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。