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この連載の目的は、今世界で起きている国際問題を、国際政治学の理論やフレームワークで説明することである。理論やフレームワークは、今起きている国際問題の複雑な情報を構造化し、論理的に思考する一助となる。第9回は、日豪関係の将来について考察する。

10月22日、アルバニージー首相とコアラを抱いて記念撮影に応じる岸田首相(官邸サイト)

準同盟関係へ新たな次元

10月22日に岸田総理は、オーストラリアのアルバニージー首相と日豪首脳会談を行った。その会談の後に、これからの10年にわたる関係の指針となる、新たな「安全保障協力に関する日豪共同宣言」が発出された。

特に、新たな共同宣言で、日豪の首脳が「日豪の主権及び地域の安全保障上の利益に影響を及ぼし得る緊急事態に関して、相互に協議し、対応措置を検討する」と宣言したことは注目に値する。「日豪の“特別な戦略的パートナー”が新たな次元に入った」という一文から、日豪は「準同盟」関係になったという評価もなされている。

日豪関係の進展

日豪の安全保障協力の強化は昨日今日に始まったことではない。2006年には、日米豪閣僚級戦略対話(TSD)が開始され、2007年には日米豪防衛大臣会合が初めて開催された。2007年には今は亡き安倍元総理の第一次政権下で、安全保障協力に関する日豪共同宣言が発出され、日豪2+2の枠組が立ち上げられた。その後も、日豪情報保護協定物品役務相互提供協定(ACSA)が結ばれた。

さらに2022年1月、日豪両国は、日豪円滑化協定(RAA)に署名した。同協定は、共同訓練や災害救助等の両国部隊間の協力活動の実施を円滑にすることにより、日豪両国の部隊間の相互運用性を向上させ、協力関係を一層高めるものである。

同盟関係の深化に関する理論的枠組

国家間の同盟がどのような状態を指すのかという点について統一的な見解はないが、これまで多くの国際関係論学者が様々な定義を提供してきた。

同盟の起源」で知られるハーバード大学のスティーブン・ウォルトは同盟を「2つ以上の主権国家の間の公式または非公式な安全保障協力関係」とする一方で、オハイオ大学のパトリシア・A・ワイツマンは、「締約国に何らかの安全保障を提供するための二国間または多国間の協定」という、さらに広い定義を与えている。

今回は、オーストラリアのニュー・サウス・ウェールズ大学のアレクサンダー・コロレフ氏が提唱する同盟形成の段階と評価基準に関する理論をもとに、日豪の安全保障関係を分析する。

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