ボルボ・グループの中核企業であるボルボトラックス(スウェーデン)は、電動化した大型トラックの量産を開始すると発表した。まずは欧州で発売し、その後アジアなどほかの地域へも展開する。
量産化するのは連結総重量が最大44トンに達する大型トラック・トラクタで、このところ日本でも見かける機会が増えてきたボルボ「FH」の電動バージョンも含まれている。
FHのほか、「FM」「FMX」にも電動車(BEV)を設定し、ボルボのBEVトラックラインナップは6モデルに拡大した。
商用車電動化の流れが世界的に加速している。その中でも最大手級のトラックメーカーが、売り上げの大半を占める大型車を電動化・量産化したことは、輸送の脱炭素化に向けたマイルストーンという、象徴的な意味合いも大きい。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部、写真/Volvo Group
売り上げの3分の2を占める車型を電動化&量産化
スウェーデンのボルボトラックスは2022年9月14日、連結総重量(GCW)44トン級のバッテリー電気式(BEV)大型トラック(トラクタ=けん引車)の量産を開始すると発表した。
このクラスのトラックは欧州のカーゴ系大型車でもっとも一般的な主力車型だが、量産型のBEVを発売するのは世界で初めてとなる。
モデル名でいうと、大型トラックの「FH」「FM」「FMX」に対するBEVバージョンだ。ちなみに日本では、FHのトラクタ系と単車系のほか、構内専用車(製鉄所などで活躍する)としてヘヴィデューティ特装系のFMXが展開されている。
ボルボトラックスによると、重量級のこれらのトラックは同社の商品レンジでもっとも重要な車両とのことで、この3モデルでボルボトラックスの売り上げの3分の2を占めるという。
欧州に続いてアジア地域でも
大型トラックのBEVモデルを量産化したことで、ボルボトラックスのBEVトラックは世界で6モデルを展開することになる。単一のトラックメーカーによるラインナップとしては、世界でもっとも広範な電動ポートフォリオだ。
ボルボトラックス社長のロジャー・アルム氏は次のように話している。
「このマイルストーンは、ボルボトラックスが業界の変革をリードしていることの証明です。私たちが初めて大型BEVトラックを公開してから、まだ2年も経っていません。今やそれを量産して、欧州全域のお客様にこの素晴らしいトラックを届けようとしています。
欧州での発売に続いて、アジアやオーストラリア、南米のお客様にもお届けすることになるでしょう」。
重量級BEVトラックは、最初にボルボトラックスが本社を置くヨーテボリ(スウェーデン)のツーベ工場で量産を開始する。その後(来年)、ベルギーのヘント工場でも製造する予定となっている。
なお、製造ラインでは従来のディーゼル車と同時に(同じラインで)製造するとのことで、これは多品種少量生産の代表的な品目とされるトラック製造ラインの柔軟性の賜物といえそうだ。
また、バッテリーについては、ヘント工場に新設する施設で組み立てを行ない、ここから製造ラインに供給する。
急速に進むトラックの電動化
世界の多くの市場で、BEVトラックをはじめとした電動商用車の需要が急速に拡大している。その原動力となっているのが運送業における荷主の考え方で、「持続可能性」という目標に向けて、化石燃料フリーの輸送を必要としているからだ。
トラックの急速な電動化について、ロジャー・アルム社長は次のように話している。
「私たちはこれまでに大型BEVトラックを1000台、BEVトラック全体だと2600台を販売しています。次の5年間でこの数は大幅に伸びると考えています。2030年までに、世界で販売されるトラックの少なくとも半分は電動化されるでしょう」。
ボルボトラックスのBEVトラックポートフォリオは、今回の大型トラックの追加により、今日の欧州の輸送の45%をカバーできるようになったという(「トラックによる貨物輸送の45%は一回の移動距離が300km以内」という、欧州の2018年の統計によるもの)。
用途でいえば、都市内の集配送、ゴミ収集、地場輸送、フェリーと連携するドレージ業、建設業の特装系トラックなどは既に電動化のオプションが市場に存在するという状況になった。
長距離輸送などBEVが苦手とする輸送分野もあるとはいえ、この数年で商用車の電動化は大きく進んだ。電動のボルボ・FHエレクトリックが日本の道路を走る日も遠くはなさそうだ。
投稿 日本導入はいつ!? ボルボトラックスが総重量44トン級の大型バッテリーEVトラックを量産化 は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。