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新型ロードスターはHVで勝負!!! 純EVを蹴散らして進化を続けるスポーツHVの魅力車たち

 世界はBEV(電気自動車)社会に向けて全力疾走しているように見えるが、実はそうでもない。

 ICE(内燃機関)の可能性を追求する動きはなお盛んだし、各国、各地域が発表しているBEV化への規制を見ても、今後10年以上はICEが不可欠であることは変わらないからだ。そもそも、今発表されている規制が必ず施行されるとも限らない。

 そんな状況下でHV(ハイブリッド)に新たな動きが目立ってきている。「燃費最優先」から走りの「楽しさへの転換」が始まっているのだ。今後登場が予想されるスポーツHVを一気に紹介しよう。

※本稿は2022年10月のものです
文/ベストカー編集部、写真/ベストカー編集部
初出:『ベストカー』2022年11月26日号

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■ロードスターも次期型でハイブリッドに モーターアシストでリッター100ps以上がターゲット

 ICEの可能性はまだあるとしても、電動化は必ずやり遂げなければならない情勢。これからのエンジン車はHVもPHEV(プラグインハイブリッド)も必須となっていく。

 純エンジンスポーツの日本代表ともいえるマツダロードスターもその流れには逆らえない。マツダは2030年までに世界で生産するすべての車両に電動化技術を搭載するとの計画を発表しており、もちろん、そのなかにはロードスターも含まれる。

 一気にBEVに転換する可能性もあるが、2030年までのマツダの計画ではBEVは25%で、残り75%はHV、マイルドHV、PHEVとなっている。

 さらに具体的な車種数も公表しており、BEV3車種、PHEV5車種、HV(マイルドHVを除く)5車種という内訳。

 わずか3車種のBEVのなかにロードスターが含まれているとは考えにくく、次期ロードスターはHVになると考えるのが自然だ。

「ロードスタークラスのスポーツカーならマイルドHVが理想的でしょう。小さなエンジンで複雑なストロングHVを構築するのはムダが多すぎます。かつてのホンダIMAのような少しだけモーターアシストするタイプで充分で、軽量なクルマには意外とこれが効いて気持ちよく走れるんです」と自動車評論家 鈴木直也氏。

 マツダは新開発のラージプラットフォームで縦置きエンジン、FRレイアウトのマイルドHVとPHEVを完成させている。サイズは異なるが、次期ロードスターに使えるパワーユニットはすでにあるという見方もできるわけだ。

 現行のND型は来年にも大規模なマイナーチェンジが行われ、少なくとも2025年までは継続販売される見込みで、次期モデルは2026年頃の登場となりそう。

 大きくコンセプトを変えてくる可能性は極めて低く、縦置き4気筒1.5~2LクラスのマイルドHVが有力。1.5Lで150ps、2Lで200ps以上が目標となる。

現行ロードスターは来年ビッグマイナーチェンジを受け、次期型は2026年登場という情報だ。HV化されることは確実だが、マイルドHVが有力。2シーターFRオープンのコンセプトは変わらない(画像はベストカーによる予想CG)
マツダの縦置きエンジンPHEVもチューニングしだいでよりスポーティな走りを構築できる。CX-60は今年12月発売開始

■トヨタ&レクサスはターボHVを新開発 着々と進化している日本のHV

 スポーツHVの新たな展開でいえば、トヨタの動きは大いに注目すべきポイントとなる。新型クラウンに直4、2.4Lターボエンジンをベースにした新しいHVシステムを搭載。

 前輪をエンジンとモーター、後輪をモーター、インバーター、トランスアクスルを一体化したeアクスルで駆動する4WDで、トヨタではこれを「デュアルブーストハイブリッドシステム(DBHS)」と呼んでいる。

新型クラウンと新型レクサスRXに搭載された2.4Lターボ+モーターの新しいHVシステムは、フロントをエンジン+モーター+6速ATで駆動し、リアは独立したモーター(eアクスル)で駆動する電動式4WD(写真はクラウンクロスオーバー)
シリーズ式とパラレル式を組み合わせた複雑な機構のTHSに比べてシンプルなシステムで、燃費性能は劣るが、エンジンが主役のダイレクトでスポーティな走りを楽しめる。動力分割機構を使ったTHSではないHVはトヨタとしては異例で、新しいHVの走りの世界を目指していることがわかる。電池はバイポーラニッケル水素だ

 2.4Lツインスクロールターボエンジンは272ps/46.9kgmを発生し、前後モーターを組み合わせたシステム出力は350ps/56.0kgmと強力。

 初代プリウス以来、進化を続けてきたトヨタハイブリッドシステム(THS)を持ちながら、あえて新たなシステムを開発、投入したのはパワフルでダイレクトな乗り味を追求するためで、トヨタは燃費系(THS)とパワー系(DBHS)の「二本立てのHV戦略」を始めたということなのだ。

 DBHSはエンジンが主体でモーターが補助するパラレル式で、複雑なシリーズパラレル式のTHSより簡易的なHSシステム。燃費性能では劣るものの、パワーを追求するスポーツモデルにふさわしく、長年続いてきた「HVは走りがつまらない」という声へのトヨタの回答とも言えるものなのだ。

 トヨタ以外のメーカーもこのところHVは大きく進化している。

「どこのメーカーも燃費ではTHSに勝てないとわかっていました。だからほかの方法でチャレンジしてきて、その成果が出始めているということではないでしょうか」(鈴木直也氏。以下コメントはすべて同じ)

 日産はe-POWER、ホンダはe:HEV、三菱はBEVベースのPHEVなど特色を生かした独自のシステムを導入し、それぞれが急速に進化してきている。

 特によくなっているのは日産のe-POWERだと鈴木直也氏は言う。

「新型エクストレイルは素晴らしい出来。VC(可変圧縮比)ターボとの相性が抜群で、滑らかなのにパワーもあります。また、従来の1.2Lエンジンベースも急激に進化しています」

急激に進化している日産e-POWER。電動4WDシステム「e-4ORCE」との組み合わせで新たな走りの世界を提供している。スポーツHVの新しい形

 また、新型シビックHVに搭載されたe:HEVもエンジンを新開発したことでダイレクト感のある乗り味が好評だし、三菱も来年登場予定のアウトランダーPHEVラリーアートで新境地を見せてくれそうだ。

「伝統のラリーアートを名乗るのだから、エアロや足回りだけでなくパワーアップも必要。おそらくモーターの出力を引き上げてくると思う。パフォーマンスは相当アップするんじゃないかな」

 トヨタだけでなく、HVを主力としているメーカーは、どこも着実にシステムを進化させ、走りの質を上げてきている。

新型シビックe:HEVはエンジン車のような感覚の走りが好評。「スポーツできるHV」の誕生だ
アウトランダーPHEVラリーアートは専用エアロと足回り強化のほか、パワーコントロールユニットをチューニングしてモーターパワーを向上させてくる。「ラリーアート」は来年登場との情報だ(画像はベストカーによる予想CG)
写真は三菱のPHEVシステム。これからのスポーツHVは4WDの制御で個性と魅力を発揮していくことになりそうだ

■これから出てくるスポーツHV

 もちろん、これから登場するスポーツHVにも注目モデルは数多い。

 前号でもお伝えしたとおり、早くも次期GR86(トヨタ)の開発が始まっており、GRヤリスの直3、1.6Lターボエンジンを搭載するHVになるという情報が入っている。

 このHVシステムには新型クラウンのDBHSが使われること確実で、システム出力は320psクラスになりそうだ。コンセプトは変えることなく、FRのスポーツクーペとなる。登場は2025年だ。

 スイフトスポーツ(スズキ)も来年秋に登場する次期モデルではマイルドHV化されること確実だ。

 エンジンは現行型の1.4Lターボの改良版で、これに13ps‌前後のモーターを組み合わせる。簡易的なHVではあるが、燃費性能の向上はもちろん、モーターアシストによる加速性能の向上とレスポンスアップも期待でき、意外と大きな進化を実感させてくれそうだ。予想価格は220万~250万円。

 スーパーHVスポーツもスタンバイしている。レクサスLFAの後継となるモデルで、V8、4LツインターボのPHEV。エンジンが720ps、システム出力で950psとも言われるモンスターで、フェラーリやマクラーレンなど欧州スーパーPHEVと勝負するクルマとなる。

 価格は4000万~5000万円クラスになるだろう。

今後登場するスポーツHV。なかでも注目は2025年のデビューを目指して開発が始まった次期GR86で、1.6LターボのHVとなる。このユニットはGRカローラにも搭載される可能性が高い。ほかにも有力モデルが続々スタンバイ中だ(画像はいずれもベストカーによる予想CG)

 このほか、まだ具体的な情報は入っていないが、スバルもマイルドHVのeボクサーを積極的に使ってくること確実で、現在は純ターボエンジンのWRX S4なども今後HVになる可能性は高い。

 また、スバルのストロングHVはトヨタのTHSを採用することを公表しているが、4WDは独自の技術を開発する方針で、そちらもスバルらしさを存分に発揮してくれるだろう。

 BEV化に邁進しているように見えるクルマ界だが、どっこいエンジン車も負けていない。スポーツHVの進化は、実はこれから始まるのだ。

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