日産サクラ、三菱ekクロスEVが販売戦線を快走しEVの広がりに注目が集まるなか、とはいえ「EVなんてまだまだ不安なこと・わからないことばっかりだ!」なんて方も多いだろう。
わからないなら試してみるまで! ということで、日産のEVアリアを1000km試乗、わかったことをまとめてみた。ホンダeを愛用する自動車評論家 片岡英明による「直伝! 電費のいい走り方」も掲載。
※本稿は2022年8月のものです。
文/ベストカー編集部マツナガ、片岡英明、写真/ベストカー編集部 ほか、撮影/平野学
初出:『ベストカー』2022年10月10日号
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■日産アリアで1000km走って検証!! バッテリー&航続距離のリアル
まずは航続距離の不安から。日産のアリアB6を使い、普段使いと遠出のふたつのケースで航続距離についての検証を行った。まずは普段使い、毎日使用は現実的かをお届けしよう。
●CASE1 毎日の使用は現実的?
1.ナビの予想と実際の消費量の差、2.電費のバラつきはどの程度か、の2点に注目して検証を行っていく。※約30km程度の距離を8回走ってみた。エアコンは25℃でオート設定とする。結果は表1をご覧いただきたい。
1.についてだが、クルマの到着時予想バッテリー残量は信頼できると言っていいだろう。予想よりも多くバッテリーを消費することは稀。つまり、シビアな予想を立ててくれているわけだ。
2.の電費のバラツキは、いい時と悪い時で最大60%ほどの差が発生した(いい時は7.9km/kWh、悪い時は4.8km/kWh)が、それでもナビの予想より悪くなることはほぼなかった。
電費はバラついたが、電力に直すと1日60km程度の場合1kWhくらいのバラつきだ。冬はもっと電費が落ちるはずだが、よほど1日の走行距離が長い人でなければ、アリアB6の場合2~3日に1回充電してあげれば問題は出ないだろう。毎日クルマを使うからとEVを避けている人、大丈夫だと思いますよ?
●CASE2 遠出はどこまで現実的?
次は遠出では現実的かどうかの検証だ。
アリアは遠出の際はバッテリー充電を考慮したルート提案をしてくれるのだが、困ったことに「80%まで充電する」ことを前提としたルートを提案してくるので、一回の充電時間が30分以上になることがほとんど。
急速充電器は1回の使用が30分までなので、ナビの提案どおりのルート走行は不可能。よって、バッテリーが減ってきたら都度入れるという方式で検証した。
検証で使用した区間は、編集部松永の自宅からEXPASA浜名湖までの往復だ。距離にして往復約550kmを日帰りで走行した。バッテリー残量は45%からのスタート。この状態の航続可能距離はメーター表示で199kmだ。
結果、急速充電の使用回数は4回に及んだ。どのような行程かは表2をご覧いただきたい。
中井PAから掛川SAの区間のバッテリー消費量が多いが、これは新東名で120km/h巡行にチャレンジしたためで、この時の電費は5.0km/kWh。今回の検証中の平均電費は5.8km/kWhだったのだが、この120km/h巡行が平均をだいぶ押し下げた格好だ。
検証は土曜日。充電4回中、充電器が埋まっていたのは2回。そのうち次に行くという判断を1回したが、その次のPAには急速充電器がないという経験も味わった。
PAは2カ所に1カ所くらいの割合しか急速充電がない(体感)ため、SAで充電器が埋まっていたら、バッテリー残量と次の充電器までの距離を調べたうえで移動する必要がある。これがちと面倒か。ほかにもSA・PAには立ち寄ったが、大体は空いていた。
1日550kmという走行距離(約9時間)自体がかなりハードで現実的ではない気がする。1日300km程度なら、満充電からならアリアは無充電が可能。リーフでも1回くらいの充電で済む。よほどの遠出でない限り、充電の心配は必要ないだろう。
■何度も充電してみてわかった普通充電&急速充電のリアル
●CASE3 急速充電、実際の充電速度は?
急速充電器の充電速度が実際にどの程度なのかも気になるところだ。現在一番普及している50kW充電器は、理論値だと30分で25kWhの電力を充電できるハズだ。
ただ実際は、どの充電器でも充電できた電力は22kWh程度。理論値の約9割という結果になった。20kW充電器で充電した際に入った量は8.3kWhとこちらは理論値の約8割。
大黒パーキングエリアにある90kW急速充電器でも検証を行った。理論上30分で45kWhは入るハズだが、結果は28.9kWhしか入らず(理論値の64%)。
充電開始時のバッテリー残量は18%から(30分後に66%まで充電)と減りすぎてるワケでもなかったため、何か別の問題があるのだろうか? とにかく、90kW充電は期待するほど入らなかった。
とはいえ、ロケでも問題が起きず、どこもかしこも充電器が埋まっている状況にも遭遇しなかった。今のところ心配は不要だろう(もちろん状況次第だが)。
●CASE4 普通充電、実際の充電速度は?
家庭用6kW普通充電は工事費も高いため、一般的に普及しているのは3kWタイプのもの。なので3kWで充電をしてみた。2時間で50%→59%と9%ほど入った。66kWhの9%は5.94kWh。3kW充電だと2時間で6kWh入るはずなので、ほぼ理論値どおりの速度が出た。
検証を通して、大半の人にとってはEVの充電や航続距離の不安は杞憂であることがわかった。最新のEVならさらに心配しなくていいハズだ。EV、アリだと思います。
■結論!
一.毎日充電する必要性はナシ!! 普段はガソリン車感覚で使えるハズ
一.充電待ちは10分くらいなら待て(※残りの充電時間は充電器のディスプレイに表示されている)。20分以上なら別の充電器を探すのもアリ。ただし、空いてるか調べてから移動だ
一.遠出の際の急速充電30分は休憩するのにちょうどイイ!! ウマいSAメシでも食うベシ!!
一.目的地周辺に充電器があるか、スマホアプリで事前にチェックだ。速度や空き情報、故障情報なども確認できるぞ
一.普通充電設備はやっぱりあったほうがベター
一.EVならではの静粛性や走りに魅力を感じるならアリだ!!
【番外コラム】ホンダeが愛車 自動車評論家 片岡英明直伝!! 「電費のいい走り方」
バッテリーEVは瞬時にパワーとトルクが立ち上がるから、早めにアクセルを戻しても無理なく流れに乗ることができる。電費計、チャージ計を活用しながら走るのが電費を悪化させないコツだ。クルマの流れを読み、早めに減速を行う。
EVが得意とする街中や郊外の道は、ワンペダルモードを使うのが鉄則。減速度をアクセル(とパドル)の加減で調整でき、ブレーキも踏めば充電を行う回生量も増やせる。回生ブレーキを上手に使えばブレーキパッドはほとんど減らない。赤信号からの再スタートはふんわり加速が基本だ。
高速走行時は回生ブレーキを使いにくいし、上り坂が多ければ電費は悪化する。電力消費ゼロの空走状態(コースティング)を心がけて電費を稼ごう。登坂路などではトラックやバスなどの背後について空気抵抗を減らせば電費の悪化を抑えられる。100km/h以上で走ると電費には不利だ。
また、電力消費が大きいエアコンは可能なら切り、シートヒーターなどを使う。
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