フルオーダーメイドの平ボディの製作は、本来なら数カ月はかかるもの。しかしそれを最短45日という、異例のハイスピードでやってのける架装メーカーがある。三菱ふそう系の大手架装メーカー、パブコの近畿工場がそれだ。
スピード、アイデア、技術力の三拍子が揃った平ボディの名産地、パブコ近畿工場の新作平ボディをレポートした!!
文・写真/トラックマガジン「フルロード」編集部
※2022年9月12日発売「フルロード」第46号より
パブコ近畿工場とは?
パブコは、三菱ふそうトラック・バスの100%子会社の架装メーカーで、ウイングボディやバンボディの生産/架装で有名。ウイングやバンの生産を行なっている本社工場は神奈川県海老名市にある。
いっぽう、奈良県大和郡山市にある同社第二の生産拠点、近畿工場は100%受注生産の平ボディが専門というのが特徴。大量生産を行なう大手架装メーカーでありながら、受注生産専門の工場を持っているのは、国内でも同社ぐらいしかないと思われる。
そんなパブコ近畿工場の生産能力は月最大60台で国内最大規模。仕様確定〜納車まで最短45日の短納期も持ち味で、近年は基本仕様にオプションを追加していくセミオーダーシステムでさらなる短納期を実現する平ボディ「ザ・ブロック」シリーズも売り込み中だ。
新作平ボディの基本プロフィール
今回紹介する平ボディは2022年4月に完成した新型セルフ式重機運搬車「ハイジャッキセルフ」の1号車。従来型ハイジャッキセルフは鳥居とアウトリガーが別体だったが、新型は一体型とすることで、従来より約400mm長い荷台内法長を実現しているのが特徴。
今後は「ハイジャッキセルフ(鳥居一体型)」として販売していく予定だが、今回の車両はユーザーの特別なオーダーでフルカスタムされた車両。荷台仕様は標準仕様と大きく異なる。
ユーザーのえびの興産(大阪府四條畷市)は、接着機械製造や接着剤販売など、接着に関するあらゆる製品/サービスを扱う接着のスペシャリスト。
接着事業のほか、輸送事業、倉庫事業、機器収容局舎の設置工事なども展開しており、今回のハイジャッキセルフは精密機械/機器など重量物の運搬/据え付け用。メインの積み荷は重量物だが、現場で使う大型フォークリフトを運ぶこともあるという。
荷台の見どころをチェック!!
ベース車両は日野プロフィアFW系低床4軸8×4リアエアサスシャシー(建機運搬用)のベッド付きフルキャブ/標準ルーフ仕様。ユーザーの第一の要望である「床面地上高950mm以下」をクリアするため、今回は床面地上高に大きな影響を及ぼす根太構造を工夫したという。
具体的には、まず縦根太(ボディのメインフレーム)を「フラットバー」と呼ばれる厚さ12mm(幅90mm)の鋼板に変更。横根太(同クロスメンバー)も標準の厚さ100mmから75mmの角パイプに変更。さらに床板(アピトン材)も標準の厚さ25mmから18mmに変更し、床面地上高は950mmジャストを実現した。
7方開の荷台は、アピトン床板の上にアルミ製縞板を張ったヘヴィデューティ仕様。低床化に伴って床とタイヤのクリアランスが狭くなっているため、タイヤ上部は床板レスとしている。
鳥居はクレーンメーカーが架装したアウトリガーユニットをアルミ製縞板で覆ったもので、背面に3つの収納スペースを搭載。荷台床面最前方の出っ張りはアウトリガーの構造物を隠したもので、この部分の処理にパブコ近畿工場独自の架装ノウハウが活かされているという。
荷台寸法は内法長9400mm×内法幅2400mmで、最大積載量は検討段階で12700kgが目標だったが、軽量化の恩恵で13400kgを確保。なお、アウトリガーユニットはタダノ社製だ。
低床化の影響でシャシー下回りの架装スペースは少なく、左側ホイールベース間は250Lの燃料タンクをタンデムで搭載。右側は排ガス浄化装置やバッテリーで埋まっている。いっぽう、リアオーバーハングにはステンレス製工具箱とFRP製工具箱をタンデム搭載。前者はパブコ近畿工場が同車両専用に設計/製作したものという。
ちなみに重機運搬車はリアプレート部に重機の積み降ろし用のスロープを引っ掛けるためのフックを備えるが、同車両はフックをリアアオリの内側に配置。使いやすさと美観を両立するこの配置も、もちろんパブコ近畿工場のオリジナルだ。
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