ドライ路面での静粛性&快適性もサマータイヤと遜色ないレベル
スタッドレスタイヤは1980年代半ばに登場した。当時主要なタイヤメーカーが相次いでスタッドレスタイヤを製品化したのには理由がある。それ以前に積雪寒冷地域で冬季にほぼ100%の装着率で使用されていたスパイクタイヤが問題視され始め、社会がその代替品を求めたのだ。
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鋲(びょう)で引っかくことができないため、タイヤメーカーはまず低温でも硬くならないゴムを使って路面との密着度を上げ、加えて踏面に占める溝面積比率を下げ、接地面積を稼ぐことでグリップを得ようとした。またタイヤ溝のエッジ部分を増やして引っかく効果も狙った。これがスタッドレスタイヤ第1世代だ。
ところがスタッドレスタイヤが普及してくると、新たな問題が生じた。スタッドレスタイヤ装着車が走行した後の路面はツルツルと平滑な状態となった。特に加減速が繰り返される交差点付近には鏡のような路面が生じるようになった。いわゆるミラーバーンだ。当然、平滑だと滑りやすくなる。
91年にスパイクタイヤが禁止されたことでミラーバーンはますます増加。このためタイヤメーカー各社は90年代には氷雪のうちの氷を重視した製品を開発した。これがスタッドレスタイヤ第2世代だ。黎明期の第1世代、ミラーバーン対策として氷上性能を優先させた第2世代ときて、次のトレンドは、吸水技術と低温でも硬化しない技術だった。
氷上がなぜ滑りやすいかというと、凍った路面にタイヤがのっかり、その部分だけ氷が溶けて路面とタイヤの間に水膜ができるからだ。凍ったままならグリップ力は低下しない。冷凍庫から氷をつまんで取り出すと、直後はベタベタとして滑りにくいのに、しばらくすると滑りやすくなるのは、つまんだ部分の氷が溶け、指との間に水膜ができるからだ。同じことが氷上のタイヤにも起き、滑りやすくなる。だから滑りやすさの原因である水をタイヤ内に吸い込んでタイヤと路面が接するようにするのだ。同時に低温でも硬化しないゴムの確立によって路面との密着率を高められるようになった。これが第3世代。
グリップ力の確保がなされると、今度は運転時のフィーリングのよさが求められるようになってくる。サイプ(細かい溝)の立体化によって、タイヤのブロック剛性がある程度確保されるようになった。初期のスタッドレスタイヤを装着したクルマで走行すると、いかにも剛性感が低く、とても柔らかいタイヤを装着している感覚が常にドライバーに伝わったものだが、立体化することで、さまざまな方向からの入力に対し、タイヤの各ブロックが互いに支え合うようなかたちで剛性が確保されるようになった。
そして今もスタッドレスタイヤは進化し続ける。氷雪でのグリップ力を維持しながら、ドライ路面での剛性感とスタッドレスタイヤの構造的な弱点といえるウェット性能を向上させる努力が続く。さらに最新世代では時代の要求に応えるべく、グリップ力を維持しながら転がり抵抗を減らし、燃費を向上させる技術も盛り込まれるようになった。←イマココ。
横浜ゴムによれば、自動車ユーザーがスタッドレスタイヤに求める一番の性能は氷上での制動(ブレーキ)性能だ。次に重視するのが雪上での制動性能、それから氷上、雪上での旋回性能、発進性能、登坂性能などと続く。要するに氷でも雪でもグリップを確保したいということなのだが、困ったことに氷上性能と雪上性能はグリップの仕組みが異なり、互いに相反する性能なのだ。
大ざっぱに言えば、氷上はエッジ効果(溝の角を路面に引っかける)と凝着摩擦力(氷と密着する)によってグリップを得るからタイヤの接地面積が欲しいのに対し、雪上はタイヤの凹凸を雪に食い込ませてグリップを得るから溝面積が欲しいのだ。同社の最新作アイスガード7は、各ブロックの倒れ込み抑制による凝着摩擦力(=接地面積)確保と、溝やサイプの形状工夫による溝面積の確保を高次元で両立した。
さらに環境保護の観点、もっと実直に言えばユーザーの財布に優しい製品となくべく、性能が永く維持される製品づくりにも力が注がれた。スタッドレスタイヤは中に含まれるオイルが時間の経過とともに抜けることで、ゴムが硬くなって性能が低下していくが、アイスガード7は前作の6に引き続き、オレンジオイルSとホワイトポリマー2(仮称)を配合することで、4年経っても新品時とほぼ変わらない性能を維持する(走行によってすり減ることによる性能低下は別)。
2022年2月、北海道にある横浜ゴムのテストコースで、アイスガード7装着車を実際に走らせて取材する機会を得た。スケートリンク並みの平滑さな氷面を保つことができる屋内の試験場で、前作の6と現行型の7を、それぞれトヨタ・プリウスに装着して行った制動テストでは、6が停止まで6秒27かかったのが、7では5秒67で停止した。
屋外の圧雪パイロンスラロームコースを、6と7を装着したトヨタ・ヤリスで走行比較して感じたのは、7を運転中の舵角の少なさ。同じように50km/hでスラロームする際、より少ない舵角で曲がることができたように思えた。また7を装着したトヨタ・ヴェルファイアでのスラローム走行では、車重が重く、重心が高いクルマでも安心感をもって走行できることを確認した。
このほか、7を装着したトヨタ・ハリアー、シトロエンC3、プジョー508、スバル・レヴォーグによる雪上ハンドリングコース走行では、圧雪路での絶対的なグリップ性能の高さを感じたとともに、ペースを上げた際、グリップ限界を超えてスリップし始めたことがドライバーにわかりやすい感覚があることで、外側の雪壁にぶつかることなく、車両をコントロールし続けることができたのが印象的だった。
氷上、雪上での頼もしさだけでなく、アイスガード7はドライ路面での静粛性、快適性もサマータイヤと比べても遜色がないレベルに達しており、冬タイヤとしての性能が必要ない日常においても快適なのがありがたい。スタッドレスタイヤのための定期的な出費は自動車ユーザーにとって小さくない負担であるのは確かだが、それによって交通事故を防ぐことができるかどうかが決まると思えば、コストをかけるべきかどうかは明らかだ。
問い合わせ
横浜ゴム https://www.y-yokohama.com/product/tire/
投稿 【タイヤカタログ2022-2023冬】「ヨコハマ アイスガード7」圧雪路での絶対的なグリップ性能の高さとともに、スリップした際の感覚ドライバーにわかりやすい! は CARSMEET WEB に最初に表示されました。