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「EV普及が大停電・電力不足を招く」は本当なのか?(案外そうでもなさそうです)【クルマの達人になる Vol.605】

「EV元年」とも呼ばれる今年、2022年。この言葉を裏付けるように日産 サクラと三菱 eKクロスEVという2台の新型軽EVが快進撃を続けるなかで、「EVが普及すれば日本は電力不足に陥る」の声が再び上がり始めた。これ、実際のところどうなのか? 国沢親分が本気の検証してくれました!

※本稿は2022年10月のものです
文/国沢光宏、写真/AdobeStock(メイン写真=joel_420@AdobeStock ※画像はイメージです)
初出/ベストカー2022年9月10日号

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■まるで幕末!? EV普及と電力供給バランスの是非

急速充電すると、普通の住宅70戸分の電力を消費する。1万台が同時に急速充電したら70万戸分。ゆえに電力が不足すると電気自動車大嫌いな人たちは主張する(rockstarpictures@AdobeStock ※画像はイメージです)

 電気自動車の増加により電力不足となり停電する、とホンキで主張する人が少なからずいる。

 興味深いことに今や我が国の電気自動車は幕末のような状況になってきた。

 電気自動車大嫌いな人たちの主張を見ていると、まっこと尊皇攘夷です。エンジン様で外敵と戦おうとしているワケ。

 尊皇攘夷のような内燃機関絶対主義を支持するメーカーも少なからず存在するし、ハード面を見ると2008年の三菱i-MiEV以後、ほぼ鎖国状態で大きな進化をしていない。

 電気自動車は確かに充電時、電力を消費する。最新のチャデモの場合、急速充電すると、普通の住宅70戸(1000W使うと仮定)分の電力を消費します。ということから「1万台同時に急速充電したら70万戸分だ」と言う。

 マジメな話で考証してみたい。

 現在我が国で稼働している急速充電器は上を見て8000器。ウチ、大半が古いタイプやコンビニの中速充電器。最新のチャデモなんかわずか。稼働中の急速充電器がすべて使われても、24万戸程度の能力です。

 加えてクルマ側の能力も理論値をはるかに下回る。

 急速充電すると最初から最後までカタログスペックどおり充電できる電気自動車など皆無。

 おそらく現在稼働中の急速充電器に、現在街中を走っている電気自動車をランダムに選んで充電させたら、おそらく20万戸分を大きく下回ると考えていいだろう。

 前述のとおり1戸の使用量1000Wとして計算したら、20万戸分として20万kW。これを東京電力だけで供給したらどうか?

 気温高かった7月28日における東京電力の最大電力供給可能能力は5883万kW。使用量は最も供給的に厳しい夕方で5290万kWだった。供給能力の90%程度。

 東京電力管内はいまだに電力不足だと信じている人も多いけれど、予想外だった6月の酷暑時だけ厳しかったのみ。

 7月に入って安定供給できている。昼間であっても20万kWくらいの電力需要が増えたってビクともしないです。

 しかも電気自動車ユーザーの大半は電力料金の安い夜間に充電している。そもそも皆さん環境派だ。

 電気自動車が増えたらどうか? 現在の10倍くらいの規模になると、無視できない電力使用量になっていく。

 けれどそれは電気自動車ユーザーの多くが需給状況の厳しい時間に充電しようとする場合で、国が何の対策もしなかったようなケースです。

 今後増えていく電気自動車は航続距離が長いため、昼間の充電など不要。

 加えて経産省だって電力需給状況で急速充電料金を大幅上乗せするシステムなど作ることだろう。そうなれば高価な時間に充電しなくなる。

 もっと言えば、再生可能エネルギーの活用を考えたら電気自動車は大切なバッファになります。電力余っているときに電気自動車に充電し、足りなくなったら電気自動車から取り出す。

 幕末の黒船のようにやってきたBYDが採用するリン酸鉄リチウム電池のように充放電回数3000回以上が可能な電池なら、余った電力を貯めておく充電池として使っても、それで電池寿命が厳しくなる心配をしなくていい。

 時代は変わります。

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