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後発のノアヴォクがステップワゴンとセレナに勝てたワケって?

 今やファミリーカーの定番ともいえるミドルサイズミニバン。セレナにステップワゴン、そしてノア/ヴォクシーとどれも超人気モデルである。

 振り返ってみるとノア/ヴォクシーは2001年デビューと、1990年代前半から存在したライバルに比べると超後発であった。だが、今やノア/ヴォクシーはこのカテゴリの代名詞的存在となっているのはご存じの通り。一体なんでノア/ヴォクシーは先輩たちに勝てたのか!?

文/佐々木 亘、写真/TOYOTA、NISSAN、HONDA、ベストカー編集部

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■ライバルのネガを研究!! 最後発の初代ノア/ヴォクの完成度はピカイチだった

タウンエースノアという商用1BOXの派生モデルとして誕生した初代トヨタ ノア。ライバルたちの長所を取り入れ短所を捨てたという強みがあった

 人気のミドルサイズミニバンたちには祖先がいる。ノアはタウンエースノア、セレナはバネットセレナという、商用1BOXの派生モデルだった。キャブオーバーやセミキャブオーバーのレイアウト、駆動方式はFR、現在の乗用ミニバンとは大きく構造が違う。

 この時代に、ボンネットタイプのFF車として登場したのがステップワゴンだ。1996年に登場したステップワゴンは、キャブオーバースタイルから脱却し、キャビンとエンジンルームをしっかりと分けた。

 これによりセダンやステーションワゴンといった、一般的な乗用車と同じような床面の低さを実現し、圧倒的な室内高を確保することができたのである。

 この画期的なパッケージングを参考にして、1999年に登場したのが2代目セレナである。今では当たり前の装備での、両側スライドドアを初めて採用した乗用タイプのミニバンだ。先陣を切ったステップワゴンに、セレナがここで追いついた。

 ミドルサイズミニバンの当たり前を、ステップワゴンとセレナが構築した後、ノアとヴォクシーが2001年に登場する。FFの新プラットフォームと両側スライドドアという、ステップワゴンとセレナの良いところを両取りした。

 加えて、機能性に凝った作り込みを行い、マイナーチェンジでは両側電動スライドドア、パワーバックドアなどを取り入れている。

 先駆者の後姿を観察し、十分学んだうえで登場しているノアは、ライバルよりも二歩以上進んだ状態でデビューを迎えているのだ。

■これぞ!! って特徴がないのがイイ!? ノア/ヴォクシーの売れるワケが特殊すぎ

e-POWERやプロパイロットという日産車が誇る先進技術が魅力のひとつとなっている日産 セレナ

 セレナと言えば、e-POWERとプロパイロットが代名詞だ。先進技術を数多く盛り込み、近未来感を味わえるクルマに仕上がっている。ステップワゴンは低床であることが強みであり、この技術を生かした走行性能の高さが際立つ。低い重心から生み出される安心感は、ステップワゴンならではだ。

 では、ノア/ヴォクシーの特徴とは何か。ヴォクシーに関してはギラついたエクステリアが特徴と言えば特徴だが、ここが強みと言える部分がとても少ない。

 e-POWERの代わりになるのはトヨタが得意としてきたハイブリッド技術、プロパイロットとまではいかないが、トヨタセーフティセンスという安全装備も装着されている。ただ、これらがノア/ヴォクシーの特徴と言えるまで、突出した技術ではない(ように感じる)のだ。

 クルマ選びでは、時に突出した特徴が邪魔になることがある。特にファミリーカーでは、そつなく丸く仕上がっている方が、好意的に受け入れられることが多い。

 先駆者ではない、強い個性も無い。これこそノア/ヴォクシーが愛される理由となっているのではないだろうか。

■家庭内決裁者の意見がデカい!? 非クルマ好きに刺さるのが最大の理由か?

ホンダ ステップワゴン。走行性能の良いステップワゴンや、先進技術を盛り込んだ前出のセレナが気になるお父さんだが、ミニバンの選択権を握るのは後席を利用する家族になりがちだ

 販売現場にいると、ミニバンというクルマの特異性に気づく。セダン・ステーションワゴン・SUVなどと大きく違うのは、購入の決定権者=ドライバーではないことが多い点だ。

 一般的には、お父さんが運転することの多いクルマであれば、購入の最終決断をするのはお父さんだ。「このクルマに乗りたいけど、みんなはどう?」みたいな会話が生まれ、家族の同意を受けた上で、購入車種が決まる。

 しかし、ミドルサイズミニバンに関しては、運転する人よりも同乗する人の意見が強く反映されるのだ。具体的には母と子。この2者が積極的に車種選びをし、両者が納得すれば運転者の意見は後回しにクルマが決まっていく。

 クルマが好きなお父さんは、走りの良いステップワゴンやプロパイロットを体感できるセレナを第一希望にしているのだが、お母さんはプレーンなノア、子どもは一目見てカッコいいと反応するヴォクシーに興味を持つ。

 するとお父さんの意見は蚊帳の外となり、ノア/ヴォクシーのどちらかに決まってしまうのだ。このような商談風景を、筆者は幾度も見てきた。

 ノア/ヴォクシーが持つ、最も大きな強みは、あえて「普通」に仕上げたことだろう。前述した特徴の無さともリンクするが、こだわってこのクルマを選びましたという嫌味感が少ない。

 クルマを知らないユーザーにこそ、スマートで選びやすいクルマの受けがいい。先輩たちが個性を伸ばしていく中、特にノアは個性を隠しながら全体的な底上げに徹してきた。

 結果として、どんな人からも支持を集め、先輩たちを追い抜く存在となったのだ。

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