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 ポルシェは2022年11月17日、911のニューモデル、「911ダカール」をLAショーでワールドプレミアした。911ダカールは911から派生したオフロードモデルで、その車名の「ダカール」には1984年のパリ・ダカールラリーでポルシェが果たした初の総合優勝への敬意が込められているとのことだ。今後はスーパースポーツの世界でもオフロード仕様は「これもあり」になるのか、九島辰也氏が語る。

本文/九島辰也、写真/ポルシェ、Classic YOUNGTIMERS CONSULTANCY、アウディ、フォード、プジョー、ピレリ

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■やはりラリーマシンのカッコよさは格別だ

2022年11月に開催されたWRCラリージャパン。街中をラリーマシンが走り回るだけでもワクワクしてくるというものだ(写真/ピレリ)

 先日、愛知県と岐阜県の林道をSSとしたラリージャパンが開催された。WRCラウンド13という面でもラリー好きにはたまらないイベントである。マシンはGRヤリスを筆頭にヒョンデとフォードがエントリー。ロールバーでゴリゴリに固められた3ドアハッチバックが砂煙を上げながらドリフトする姿は実にカッコいい。

 そんなWRCの歴史は長く、齢五十路のクルマ好きがワクワクした1980年代はかなり過激なものだった。グループBと呼ばれるのがそれで、高性能4WDスポーツカーが鎬を削っていたのだ。

 アウディクワトロスポーツ、フォードRS200、プジョー205T16などなど。そうそうフェラーリ308GTBも走っていたっけ。あまりに事故が多く、過激だったことからわずか4年で終わったカテゴリーである。

500ps超のモンスターマシンが闊歩した1980年代のグループB。アウディクワトロスポーツもそのなかの1台だった

 そんな流れのなか、当時ポルシェは1台のラリーカーを開発してパリ・ダカールラリー、通称“パリダカ”に参戦していた。ロシュマンズポルシェのカラーリングをまとった911ベースの953や959だ。959はグループBへの参戦のために計画されたと言われている。背を高くして雪道や砂漠を駆るその姿はかなり衝撃的だった。

ポルシェ911ダカール。2022年11月17日(現地時間11月16日)にポルシェがLAショーでワールドプレミアした911のオフロードモデルだ

 前置きが長くなったが、11月16日から米国で開幕されたロサンゼルスモーターショー2022で彼らはその後継? とも思われるモデルを初公開した。911シリーズの新モデル、911ダカールである。

 写真を見たとおり、911シリーズから派生するオフロードモデルで、車名の「ダカール」には前述した「パリ・ダカールラリー」において、1984年にポルシェが初の総合優勝を飾ったことに対する敬意が込められている。

 要するにオマージュってことだ。なぜこの時期? というのは謎だが、発想はユニークだし、人気になるのは間違いないだろう。

 それじゃ、ちょっとしたカタチだけのパイクカーなのかといえば、そうではない。ポルシェはこのクルマの開発を真面目に行なっている。911ダカールの開発プロトタイプ車両の写真を公開し、1万km以上のオフロードを含めて、50万kmを超える過酷なテストに取り組んだというのだ。

 そして、その出来栄えは「卓越したオフロード性能を発揮する初の2ドアスポーツカーになる」、と豪語している。なるほど、興味津々である。

■走行モードにラリーとオフロードの2つを設定

のべ50万kmを超える走行テストが実施されてきた911ダカール。その開発はいかにもポルシェらしく、いっさいの妥協はない

 車高はスタンダードの911よりも50mm高くなる。グラベルを想定してのセッティングだ。しかも、高さが足りない時はさらに30mm上げられる専用のリフトシステムが搭載されるから本格的。

 また、ドライブモードはグラベル、マッド、ウェットグラスに対応するラリーモードと、砂漠などを走る用のオフロードモードが用意される。それと、SSでのスタートに失敗しないラリーローンチコントロールも付いているから完璧だ。いやはやおみごと。格好だけでなく、中身までかなり徹底的に研究されている。

 面白いのは、当時のカラーリングに近いものが選べること。ブルーとホワイトのボディカラーをベースにゴールドとレッドのストライプをまとったスタイルがカタログに載るのだ。しかもホイールまでホワイト。まさに1984年の953を思い起こさせる。

 ゼッケンナンバーを好きな数字にできるというが、そこは悩みそうだ。エンジンは3L水平対向6気筒で最高出力は480ps。トランスミッションは8速PDKで駆動方式は当然4WDとなる。

 ただ、最高速度は時速240キロに制限される。トレッドパターンのゴツゴツしたオールテレインタイヤを履くからだ。ピレリのスコーピオンと911の組み合わせなんて実に“オツ”である。

 現在、ポルシェジャパンでは価格未定となるが、すでにオーダーはたくさん入っていることだろう。1980年代のラリーシーンを知る大人のハートにググッと刺さるのは言うまでもない。世界限定2500台は狭き門だ。

■ハイパフォーマンス系の車高アップモデルはトレンドになるのか?

オランダの「Classic YOUNGTIMERS CONSULTANCY」が製作したR35GT-RベースのGozilla2.0。実にサマになっているオフロードモデルだ

 こんなニュースを聞くと、2020年に少しだけ話題となった現行R35型GT-Rをオフロード仕様にしたGT-Rオフロードモデル、「ゴジラ2.0」を思い出す。オランダのカスタムメーカーが発表したそのモデルはよくできている。

 車高の上がり方も悪くないし、迷彩色とボルトオンタイプのオーバーフェンダー、それとLEDフォグランプの組み合わせはとても自然にマッチしている。完成度の高さからメーカーのコンセプトモデルと言われても信じそうだ。

 なんてトレンドを鑑みると、スポーツカー、特にハイパフォーマンス系の車高を上げたモデルが今後のトレンドに思えなくもないが、そうはならないだろう。これらはSUVに飽きた世界の富裕層に向けたひとつの提案であり、遊び心からくるものだ。

 ただ、世界中のオフロードコースを走ってきた身からして、個人的には好きだし、そんなトレンドが巻き起こって欲しい気もする。SUVとは異なる観点の背の高いイタリアのスーパーカーってのも見てみたいしね。

 ポルシェ911ダカールが何かのきっかけになるのかはわからない。もしかしてグループB復活? う〜ん、今後の動向が気になる。

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投稿 車高爆上げ! 「ポルシェ911ダカール」はキテるぜ!! これからはスーパースポーツもオフロード性能がキモに!?自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。