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フェラーリ・ポルトフィーノM

 スーパーカーは好きですか? 当編集部は大好きです!! 百年に一度の変革期にあって「社会におけるクルマの位置づけ」が変わりつつあるなか、「趣味としてのクルマ」はそうした世間の風潮とは隔絶した世界観のなかで、それでも進化を続けています。

 21世紀のスーパーカーはどんなふうに進化しているのか?? 自動車評論家の石川真禧照氏がじっくりしっかり動画付でお届けする当連載。今回は、フェラーリの2+2オープンGT「ポルトフィーノ」の性能強化モデルである「ポルトフィーノM」をご紹介する!

文/石川真禧照、写真/萩原文博、動画/吉田海夕、コペル

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■2+2オープンモデル「ポルトフィーノ」の進化版

 最新のV8ガソリンターボエンジンをフロントに置き、リトラクタブルのハードトップを装備。室内には荷物置きにもなるプラス2のシートを備えたスポーツカー、それがフェラーリ・ポルトフィーノMだ。

 発表されたのは2021年1月だが、生産とデリバリーの遅れから、ようやく試乗車の準備が整った。メーターの積算計は2000kmをちょっとオーバーしただけ。

フェラーリにとって「M」とは、パフォーマンス向上モデルであることを意味する。ポルトフィーノMでは、新しいフロントマスクの造形で空力性能を向上

 ポルトフィーノMは、その名のとおり、2017年にデビューしたポルトフィーノのM(モディファイ)モデル。さらにルーツをたどっていけば、2010年に発表されたカリフォルニアになる。フェラーリのなかでは、実用性の高いモデルなので、その購入者の多くは、はじめてのフェラーリという。これは世界的傾向だそうだ。

 新型のポルトフィーノMは、その実用性に加え、最新のフェラーリテクノロジーが盛りこまれている。

最高出力620ps、最大トルク760Nmを発生する3.9L、V型8気筒DOHCターボエンジンをフロントミッドシップに搭載

 V8のパワーユニットは3855ccと先代と同じだがマネージメントの見直しで、最高出力は599psから620psへとパワーアップしている。760Nmのトルクは変わっていない。 

 しかも汚染物質排出基準を満たすためにガソリン・パティキュレート・フィルターをエクゾーストシステムに採用するなど環境保全にも気を配っている。 

 ギアボックスも新しい。これまでの7速ATから8速ATへと進化した。この8速ATはSF90ストラダーレ用とは異なるタイプで、小型化されているのが特徴だ。効率アップとシフトチェンジスピードが向上している。

 ハンドルスポークに装着されているドライビングモードダイヤルも、「Race」モードが加わった。Wet/Comfore/Sport/Race/ESC-offの5モードになった。

 ボディデザインも性能向上に合わせ、全体にエアロダイナミックスが進化している。

 前置きが長くなったが、いよいよ試乗だ。

20psアップしたV8エンジンと新設計8速ATの走りは?

ステアリングホイールに、エンジンスタートボタンやドライブモードの切り替えスイッチが組み込まれ、F1マシンを彷彿とさせる

 まず、リトラクタブルハードトップを閉じた状態で乗りこむ。この状態ではクーペと同じ快適さだ。

 ハンドルに内蔵されている赤いスターターボタンを押す。操作系はF1マシンと同じようにハンドルに内蔵されている。左右の方向指示もハンドルスポークに付いている。

 スタートはセンターコンソールのAutoボタンを押し、1速にシフト。コラムから生えているパドルレバーでマニュアルモードも選択できる。Autoモードでは1500回転あたりからアクセルレスポンスが敏感になり、2000回転をオーバーすれば、軽快に加速する。

 このV8エンジンは実にフレキシブルで、8速1000回転、60km/hからでも走行でき、加速もする。もちろん全力加速をすれば、一気に7000回転以上まで吹き上がり、0→100km/h加速は、公道でも4秒台前半を体感させてくれる。低回転域から高回転域まで使えるパワーユニットなのだ。

 マニュアルモードで1速から5000回転を目安に回しても、1速50km/h、2速75km/h、3速で100km/hに達してしまう。5000回転をオーバーすると1000回転ごとにハンドル上部のインジケーターが赤く点灯し、ドライバーにエンジン回転を教えてくれるのも他のフェラーリと同じ。全開加速をすれば、レッドゾーン入口の7500回転まで一気に上昇する。一方で100km/h巡航では8速1600回転、7速2000回転という低回転を保ち、音と燃費を抑えることができる。

 ハンドリングに関してはV8エンジンがフロントミッドシップということもあり、高速コーナーでもニュートラルに近い動きをする。もちろんあり余るV8ターボパワーで、後輪を操ることも可能だ。

 ポルトフィーノはそのユーザーの多くがはじめてのフェラーリオーナーであり、毎日の足として乗っている比率が高い。日常使いの走りも考え、ドライビングモードにはWETモードが設けられている。アクセルレスポンスが緩慢になる。これで濡れた路面でも気を使わずにアクセルを踏める。もちろん、新たに設定された「RACE」を選択すれば、超エキサイティングな走りを楽しむこともできる。

■充実した快適装備で日常使いできるフェラーリ

後席を備える2+2のレイアウトであるが、リアシートはかなり狭め

 ポルトフィーノMのルーフとリアウインドウは電動で開閉できる。時速50キロ以下なら、走行中でも操作できる。開閉にかかる時間は約18秒。ルーフを全開にすると開放感は100%。ドアウインドウを立てれば100km/h走行でも室内への風の巻きこみは少ない。

 リアシートはプラス2シートと割り切りたい。座ってみると着座位置は高めで、足元はミニマム。背もたれも直立しているので、ハードトップの状態だと、身長150cmが限界だが、それも最初の交差点を曲がったころから不満の声が聞こえてくるほどだ。ここは、バッグやコート置き場と割り切ったほうがよい。

 ポルトフィーノMを日常の足として使用している人が多い理由のひとつに、リアのトランクスペースの使い勝手のよさがある。

ルーフ格納用のカバーが装備されており、ルーフを格納した状態でも荷物を収納することができる。ルーフを閉じた時のトランク容量は292L

 トランクスペースはルーフ格納用のカバーが装備されている。このカバーを引き出しておけば、その下にバッグやコートを置いてもルーフを収納できる。カバーは高さが床面から310mmほどなので、意外に実用的だ。

 さらにプラス2のリアシートの背もたれはトランク内のスイッチで半分ずつ倒すことができ、室内とつながる。ゴルフバッグなどをトランク側から入れることもできるのは便利だ。

 フェラーリの試乗記というと、安全装備などにはあまり触れない。最新のモデルはオプションではあるが先進運転支援システム(ADAS)も用意されている。箇条書きにしてみると、①アダプティブクルーズコントロール②正面衝突緊急軽減ブレーキ③ブラインドスポットモニタリング④レーンデパーチャーウォーニング⑤自動ハイビーム⑥制限速度表示⑦サラウンドビューカメラ⑧車両後方障害物警告などが備えられる。

 インフォテイメントシステムの操作はインパネ中央のタッチスクリーンで行なう。フルHD静電容量式のスクリーンはスプリットビュー機能も備えており、運転席と助手席で異なるコンテンツを同時に見ることも可能になっている。AppleCarPlayとAndroidAutoにも対応している。

 さらにこれもオプションだが、助手席の前のダッシュボードに専用のスクリーンも取り付けることができる。7インチのフルHDで音楽やカーナビ情報を確認できるという。

 メンテナンスに関しても7年間の純正メンテナンスプログラムが用意されている。このサービスはオーナーチェンジしても継続されるし、認定中古車にも適用される。

 最近のフェラーリはフツーに乗ることができるのだ。ただし、それ相応の貯金が必要ではあるが・・・。

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