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なんでジムニーにサイなの!? 41年前から使われている謎

 大昔から今に至るまで、ジムニーのタイヤカバーに描かれているサイ。長らくオプション品としてラインアップしているが、そもそもなんでサイなんだろうか!? 確かに強いイメージだけど、名前にかかっているワケでもないし……一体なんで!?

文/渡辺陽一郎、写真/SUZUKI

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■納期爆長のジムニー!! 中古価格は約1.4倍に

相変わらず納期が長引いているスズキ ジムニー。その影響で中古価格も上昇している

 最近はSUVの売れ行きが好調だが、この中でも特に息の長い車種がスズキジムニーだ。現行型の発売は2018年7月だから既に4年も経過。それでも販売店によると「ジムニーの納期は1年から1年半を要しており、ジムニーシエラはそれ以上に長い」という。

 最近は新型コロナウイルスやロシアのウクライナ侵攻によってパーツの供給が滞り、クルマの納期が全般的に遅延するが、ジムニーは2018年の発売直後から1年以上と長かった。

 ジムニーの届け出台数を振り返ると発売直後の2018年後半は、1か月平均が約1900台だった。小型/普通車のジムニーシエラは約600台だ。

 それが2022年上半期(1~6月)は、コロナ禍の影響を受けながらもジムニーが約3600台、ジムニーシエラは約1400台に達する。発売直後に比べて国内販売台数を2倍に増やしている。

 それでも納期は前述の通り縮まらない。販売店は「生産台数を増やすほど、ジムニーを希望するお客様の来店も増える」という。最近は現行ジムニーを街中で頻繁に見かけるようになり、購入を希望するユーザーもますます多くなったのだ。

 納期が遅れると、顧客は当然に迷惑を被る。納車を待つために下取りに出す車両の車検を改めて通すなど、余計な手間と出費を要することもある。

 また、中古車価格が高まるなど流通の混乱も招く。現行ジムニーXCの新車価格は190万3000円(4速AT)だが、走行距離の少ない中古車は、250~270万円で売られている。比率に換算すれば1.3~1.4倍で、いわゆるプレミアム価格だ。ジムニーの納期が適正なら、中古車がこのような高価格で販売されることもない。

■関係ないのに何でジムニーにサイ!? そのワケとは何だ!

ジムニーファンには昔からおなじみのサイのイラスト。スペアタイヤのカバーなどに描かれている

 ジムニーの外観を改めて見て気付くのは、スペアタイヤのカバーなどに、サイのイラストが描かれている。正確には、

●ディーラーオプションで用意されるスペアタイヤハーフカバーデカール(9845円) ●ボディの側面に装着するサイドデカール(3万305円) ●ボディ背面のデコステッカー(3795円) ●ルームミラーカバー(1万615円) ●フロアマット(1万5015円~2万515円) ●携帯リモコンカバー(3520円)

 などに、サイのイラストがあしらわれている。サイがジムニーのキャラクターになっているわけだ。

 なぜジムニーにサイを組み合わせたのか。同じスズキのアルトラパンには、ウサギが描かれているが、これはラパン(Lapin)がフランス語でウサギを意味するからだ。

 しかしジムニーは違う。初代ジムニーの発売は1970年で、当時は悪路を走破する車両としてはアメリカ製の「ジープ」が有名だった。悪路向けSUVのトヨタランドクルーザーなども「ジープタイプのクルマ」と呼ばれた。

 そこで軽自動車のサイズに収まるジープタイプのクルマという意味で、ジープ(Jeep)+ミニ(Mini)、即ちジムニーという車名になった。

 上記のようにジムニーの車名とサイは関係がない。それなのになぜサイが描かれているのか。スズキに問い合わせると、以下のように返答された。

 「アフリカのサバンナなどに生息するサイは、固く分厚い皮膚と伸びた角、恐竜を思わせるフォルムを備える。普段はのんびり暮らしていても、縄張や仲間を守るためには、どんな相手に対しても臆することなく猛スピードで突進する勇敢さも持っている。

 スズキのデザイナーは、この特徴に注目して、サイを本格4WDの堅牢さと力強さを併せ持つジムニーの力強いイメージに重ね合わせた」

 このマークは、1981年に2代目ジムニーのSJ30型が登場した時に作られている。鎧のような皮膚をまとい、重心低く突進する姿をデフォルメしたデザインは、瞬く間に世界中のジムニー愛好家に浸透した。今ではジムニーのシンボルとして定着して、幅広いユーザーから親しまれている。

■コンセプトカーにも!! ジムニーとサイの関係が奥深すぎっ!!

2017年の東京モーターショーに出品された「e-SURVIVOR(イー・サバイバー)」

 なおサイのマークは、2017年の東京モーターショーに出品されたコンセプトカーのe-SURVIVOR(イー・サバイバー)にも採用された。

 このe-SURVIVORは、サイのマークだけでなく、スズキが手掛けた4WDのさまざまなDNAを随所に受け継いだ。サイのマークはジムニー、クラムシェルフードの形状はエスクード、丸型ヘッドライトはハスラーという具合で、各SUVのデザインアイコンを採用している」。

 以上のように、ジムニーに見られるサイのマークは奥が深い。軽自動車サイズのジムニーは、車両重量が約1トンだから、2トン前後に達するサイとはイメージが掛け離れている。

 しかし厳しい環境下でもユーザーを守り抜くジムニーのコンセプトは、仲間のために突進するサイの勇敢さに通じる。ジムニーの小さな可愛らしいボディに、サイの精神が宿る。ジムニーを所有している皆さんは、サイのマークが持つ意味を既に実感しておられるに違いない。

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