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新型セレナ登場を前に「ステップワゴンの販売が大苦戦」ノア/ヴォクシーに大きく水をあけられている理由とは

 2022年5月下旬に発売したホンダの主軸ミニバンである「新型ステップワゴン」の販売が苦戦を強いられている。2022年1月下旬発売の新型ノア/ヴォクシーに大きく引き離されているだけでなく、この11月末にフルモデルチェンジする予定のモデル末期の現行セレナにも登録台数で負けているのである。

 新型ステップワゴンはなぜこれほどまでに苦戦を強いられているのか? ステップワゴンを販売するホンダカーズ営業マン、ノア&ヴォクシーを販売するトヨタ営業マン、予約受注が始まった新型セレナの日産営業マン、それぞれの立場でどう思っているのか、聞いてみた。

文/遠藤徹
写真/ベストカーweb編集部、トヨタ、ホンダ、日産

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■ステップワゴン大苦戦! ディーラー営業マンの見解

2022年5月に登場した現行型ホンダ ステップワゴン。モデル末期のセレナに販売台数で抜かれるなど苦戦が続いている。写真の「スパーダプレミアムライン」はオデッセイからの乗り換えを見込んでいたが、期待ほどの効果はなかったようだ

 直近の2022年10月の新車販売台数ではヴォクシー7201台、ノア7160台、セレナ4446台に対してステップワゴンは3075台にとどまっている。

 11月中旬現在の納期はノア/ヴォクシーハイブリッド1年3ヵ月、同ガソリンNA車12ヵ月に対してステップワゴンはハイブリッドが10ヵ月、1.5リッターが8ヵ月とノア/ヴォクシーよりも明らかに早く、ステップワゴンの苦戦ぶりを裏付けた形となっている。

 11月末に発表予定の新型セレナはつい最近になって先行予約の受付をスタートさせた(ディーラー調べ)。

 新型ステップワゴン苦戦の理由を首都圏にあるホンダカーズ店の営業マンに尋ねると「新型ステップワゴンはオデッセイが生産中止になり、その穴埋めをするためにサイズアップ&ハイクオリティな仕立てをした。

 これによって上級シフトしたのはよいが、ノア/ヴォクシーとアルファードの中間に位置付けられて、中途半端なコンセプトになり、これを好まないユーザーが離れている。

 オデッセイのユーザーは新型ステップワゴンで新たに設定したスパーダプレミアムラインへの代替えを目指しているが、実際はこちらへの購入者はほとんどいない。

 また前モデルでウリのひとつだった、バックドアの一部が横開きとなるワクワクゲートが廃止になり、利便性が損なわれた」などを挙げている。

 このほか、シリーズ全体の80%以上を占めるハイブリッド車についてはノア/ヴォクシーが2WDのほかE-Four(電気式4輪駆動方式)を設定しているのに対してステップワゴンは2WDのみ。降雪地帯、東北、北海道地域では不利となっているのも要因として挙げられる。

 新型ステップワゴンは発売当初は残価設定クレジットで購入する場合は1.9%の特別低金利を設定して、新型車効果の盛り上げを図った。これをこの10月から他の車種並みに3.5%に引き上げたことで、買い得感がなくなり、購入ユーザーが頭打ちになっているとの側面もある。

■ステップワゴンのアドバンテージ

新型ホンダ ステップワゴン。ライバルのノア/ヴォクシーよりも室内は広く、走行性能も優れている

 ただ新型ステップワゴンはノア/ヴォクシーに対して勝っている部分もある。

 ハイブリッドモデルではエンジンとの組み合わせがノア/ヴォクシーが1.8リッターなのに対して、ステップワゴンは2リッターであるから、その分走行性では優れている。上級シフトによって質感、ハイクオリティ性ではアピール度は高いともいえる。

 また室内スペースにおいてはノア&ヴォクシーよりも広く、より大きい室内スペースを求める人にはステップワゴンがおススメだ。

 しかし、e-POWERやプロパイロット2.0という強力な武器を引っ提げて今後投入される新型セレナの販売が本格的になれば、ステップワゴンやノア/ヴォクシーにとってかなりの脅威になる可能性がある。

■苦戦中のホンダ営業マン、絶好調のトヨタ営業マン、新型セレナの予約受注が始まった日産営業マンに聞いてみた!

 最後に、販売苦戦を強いられているステップワゴンを販売するホンダ営業マン、絶好調のノア&ヴォクシーを販売するトヨタ営業マン、まもなく新型セレナが発売予定の日産営業マンに、それぞれの立場から、3つ巴の販売状況についてリアルな販売現場の声を聞いてみた。

●証言:首都圏ホンダカーズ店営業担当者

 「現時点での新型ステップワゴン苦戦の要因はライバル3車に比べて上級シフトしたことで、車格が中途半端になったのではないか。最上級のスパーダプレミアムラインはオデッセイ廃止の穴埋めを目指しているが、実際は歴代オデッセイからの代替えは今のところほとんどない。これも苦戦の要因ではないか。

 また、新型発売以来、新型車効果を加速させるために1.9%の超低金利残価設定クレジットを実施していたのをこの10月から他のホンダ車並みに3.5%にアップさせたことで、勢いが減速している側面もある。

 ただノア/ヴォクシーハイブリッドが1.8リッターなのに対してステップワゴンは2リッターで走行性に優れている面もあるので、今後はこれを武器に反転攻勢がかけられる余地もある」

●証言:首都圏トヨタ店営業担当者

 「新型ノア/ヴォクシーは従来コンセプトを進化させながら、両モデルのコンセプト分けをより明確にしたのが成功の要因となっている。ハイブリッドは新型ステップワゴンハイブリッドにない4WD車の設定も販売の上乗せになっている。

 姉妹車両モデルとも均等に売れているのは従来の専売店だったカローラ店はノア、ネッツ店はヴォクシーを売り、エスクワイアを扱っていたトヨタ店とトヨペット店はノアをメインに代替えしている傾向がある。

 新型ステップワゴンハイブリッドは2リッターでノア/ヴォクシーハイブリッドは1.8リッターで走行性では負けているが、次期型ノア&ヴォクシーは2リッターになると聞いている」

●証言:首都圏日産店営業担当者

 「現行セレナがステップワゴンに対して販売で負けなかったのはe-POWERの走行性の良さと末期モデルのため好条件で売れ、価格競争力が高かったためだ。

 新型セレナは未来感のあるデザインと新しいe-POWERやプロパイロット2.0といった先進装備があるので、発売が本格的になればステップワゴンに負けない自信がある」

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 もちろん、ステップワゴンが完敗という状況ではない。ノア&ヴォクシー、ステップワゴン、セレナの三つ巴決戦は、セレナの販売が本格化する2023年春以降に態勢が判明しているのではないだろうか?

 ユーザー側にとっては、切磋琢磨していいクルマを作ってくれれば、選び甲斐があるというもの。できれば早急に納期の改善を求めたい。

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