アウディは、わずか3週間で450万回以上の再生数を記録したケン・ブロックのドリフトアクションムービー『Ken Block’s ELECTRIKHANA』に登場するEVプロトタイプマシン、『アウディS1フーニトロン』のスペックを公開した。
ケン・ブロックのブランドである“Hoonigan”のYouTubeチャンネルで公開されているアウディとのコラボレーション動画は、11月24日現在、467万回再生を記録。このエレクトリカーナが公開されて以来、多くの人々がアメリカ・ラスベガスの市街地やカジノ、駐車場などを舞台に、ブロックがS1フーニトロンを思いのままに操りドリフト走行を披露する映像に魅了された。
このビデオで使用されている車両は、アウディのデザインチームと、同ブランドのモータースポーツ活動を担当するアウディスポーツによって開発されたものだ。そのエクステリアデザインは、伝説的なラリーカーである『アウディ・スポーツクワトロS1』がモデルとなっている。
その中で開発チームがドリフトアクションに適した、バランスのとれた重量配分と寸法を導き出しS1フーニトロンに落とし込んでいった。
具体的には52:48とほぼイコールにされた前後重量バランスや、『アウディA1スポーツバック』の2563mmよりなお短い2400mm以下のホイールベース、スプリングストローク量が200mm以上とれるサスペンション構造の採用などが挙げられる。これらを踏まえた基本コンセプトにより、S1フーニトロンはさまざまなシーンでドリフト走行、スタント走行に理想的なキャラクターを備えたものとなった。
一方、最高出力500kWを発揮するパワートレインは、モータースポーツの世界で培われたシステムだけでなく、アウディのロードカー由来のものも採用されている。
S1フーニトロンの心臓部にあたるMGU(モーター・ジェネレーター・ユニット)はモータースポーツから技術的なフィードバックを受けたもの。前後1基ずつ搭載されるユニットは、単体の重量がトランスミッションを含めて55kgと小型・軽量化されているのが特長だ。一方で、電気を蓄えるシステムには、市販されているプラグインハイブリッドカー(PHEV)用の高電圧バッテリーを採用。これを4台搭載するS1フーニトロンのバッテリー容量は合計57.6kWh、作動電圧は800Vと発表された。
前述のとおり、S1フーニトロンは前後2基のMGUを搭載する。各MGUは最高250kWのパワーを発揮し、最大トルクは320Nmを発生。つまり合計出力は500kW、合計トルクは640Nmとなっている。MGUの最高回転数は28,000rpmだ。
エンジニアリングチームはドリフト走行に適したセッティングとなるように、約12:1のギア比を設定。これによりパワー損失を考慮しても、前後アクスルに伝達されるパワーは合計で約3000Nm、トルクは6000Nmに上り、ブロックの華麗なドリフト走行を実現させている。なお、S1フーニトロンの最高速度は200km/h以上に達することが付け加えられた。