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 スバルのクルマは、どこかほかの国産メーカーとは違うところがあって、そこにハマる人がいる。さらに、スバル車を買った人は、その後もスバル車に乗り続ける人が多いようにも思える。

 では、スバルというメーカーが他メーカーと異なる部分とはいったいなんなのか? 味があるのはどんな部分か、特徴的なメカニズムといえばどこなのか、熱狂的スバリストである自動車ライターのマリオ高野がその理由を解き明かす。

文/マリオ高野
写真/スバル、フォッケウルフ

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■「ほかとは違う」から始まったスバルの歴史

 クルマにまったく興味がなかったのに、たまたま買ったスバル車ヴィヴィオによりクルマ趣味に目覚め、その後30年スバルにどっぷりとハマる。ふと気がついたらスバルのお膝元である群馬県太田市に転居してしまった。我ながら、ナゼこれほどまでスバルに魅力されてきたのだろうか(笑)。ここであらためて、スバルの魅力や「スバルらしさ」とは何なのかについて考えてみた。

 スバルには、水平対向エンジンや、それを軸とするシンメトリカルAWDなど、わかりやすいアイデンティティが多い。しかし、水平対向以外のエンジンを積むクルマであってもスバルらしさは存分に発揮されるし、FFやFRもまた然り。BEVのソルテラにも、スバルらしさは濃厚に感じられた。

最新のスバル車であるソルテラ。安全運転につながる視界の良さや走りの安定感を生み出す低重心設計など同社らしい部分が見られる

 いちスバルファンとして、スバルに魅力される「らしさ」とは何かを考えてみると、一番に挙がるのは、「ほかと違う」ということ。それは、スバル黎明期から見られる特徴で、最初の四輪車スバル360からそうだった。フルモノコックボディや四輪独立サスの採用、他社の軽自動車は実質2名乗車なのに大人4人が乗れるパッケージングを実現するなど、すべてが「ほかと違う」から始まっている。

 その後も、試作車では一般的な直列エンジン搭載のFR車を開発するも、量産車水平対向エンジン搭載のFF車を採用(スバル1000)。この時に生まれた基本レイアウトは、現在に至るまで継承されている。

 東北電力からの要請で乗用車の四輪駆動車作りをはじめて以来、レオーネではオフロード走破性の高さをアピール。長年にわたり、四駆=スバルのイメージが定着したが、いまだに四輪駆動車の販売比率が9割を超えている。年間販売台数100万台規模のメーカーとしては異例、というか異常。やはりほかとは違うメーカーなのだ。

■運転支援システムへの熱意とこだわり

 安全性に対する取り組みも、独自性が強い。衝突安全性の研究は、黎明期のスバル360の時代から入念に行ってきたし、歩行者保護のための装備の開発は1970年代のレオーネからやっている。

「0次安全」を重視した内装やデザインの設計思想を重視するのもらしさのひとつ。1970年代にはすでにカタログなどでアピールしていた。スバルは長らくデザイン性に課題アリと指摘されて続けてきたが、それは車両感覚のつかみやすさや、後方視界のよさがデザインよりも優先されていたからだ。

 オシャレなデザインになると、それと引き換えに後方視界が悪くなったりしたら、それはスバル車ではなくなる。最近のモデルでは、デザイン性と安全性の両立が上手くできていると思うが、それでもまだまだデザイン性の向上を望む声は多い。

 運転支援システムは1990年代から商品化。当時は見向きもされなかったが、地道に開発を続けた結果、2010年にアイサイトVer.2で大ブレイク。これを契機に運転支援システムは他メーカーでも一気に普及が進むが、スバルはアイサイトVer.3まではシンプルなステレオカメラでのシステム構成にこだわり、他社より低価格化できていた。

 運転支援システムについて、スバルは「自動運転」という言葉をかたくなに使わないのもほかと違うポイントだ。今のアイサイトは実質自動運転システム的な性能を発揮するが、スバルは「あくまで運転支援」であると強調する。

ステレオカメラを搭載し、独自の進化を遂げてきたアイサイト(Eye Sight)だが、ver.2ではプリクラッシュブレーキをはじめ全体性能をブラッシュアップ

■市場の要望に応えつつファンをも納得させるクルマ造りとは?

 ハイブリッドなのに燃費があまりよくないといわれるe-BOXERにしても、カタログ記載の燃費より、走りの気持ちよさや低ミュー路での扱いやすさを重視した結果だ。エコカーに対する考え方もほかと大きく異なっている。

 ただし、これから先はそうも言ってられないので、次世代パワートレーンでどこまで「らしさ」を発揮しながら時代に対応するのか注目だ。ただ燃費がよくなるだけではファンは納得しないので、ハードルはとても高い。

2018年の5代目フォレスターに搭載された「e-BOXER」。水平対向エンジンに電気モーターを組みあわせた同システムは走りの楽しさを追求

 2003年、ダイハツがタントで超ハイトワゴン市場を切り開いた時も、スバルはらしさを炸裂。あえて背の低いR1/R2を世に送り出し、走りのよさやプレミアム感で勝負した。結果として、商売的には惨敗に終わり、軽自動車の自社開発撤退を進めてしまったが、当時のスバルファンからは拍手喝采。時代の流れに合わないこともあるが、他社の後追いや、市場への迎合が見られない姿勢は素晴らしい。

 さらに思い出すと、排気量のダウンサイジングが主流の時代に登場した5代目レガシィは、2.0Lから2.5Lに排気量を拡大。排気量拡大によるトルクアップでアクセルを踏む量を抑えることを狙ったものだ。結果、それをアッサリ覆してレガシィのスポーツグレード用の2.5Lターボは2.0Lターボに戻るワケだが、当初の狙いこそ、まさにスバルらしさといえた。

 これ以外にも枚挙にいとまなしだが、ほかとは違う道をゆく姿勢に共感し、支持してきた人が多いのは間違いない。これから先もスバルには、スバルでしか味わえないほかとは違う魅力を発揮し続けてほしいと願う。

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