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DNAの末端にある「テロメア(telomere)」。「命の回数券」ともいわれるテロメアが短くなる原因は、加齢だけでなく、喫煙、肥満、運動不足、睡眠不足、心理ストレス、偏食、過度の飲酒などであることを中編でお話しました

後編の今回は、「テロメアを伸ばす方法」をお伝えします。

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心を鍛えてテロミアを伸ばす?

命の回数券「テロメア」を無駄遣いしないためには、どうすればよいのか…。答えは簡単。テロメアが短くなる原因となる行動の逆、すなわち「じゅうぶんな睡眠」「適度な運動」「バランスのとれた食事」などに気をつければ良いのです。

実は、これらに気をつけると回数券を無駄遣いしないだけではなく、回数券が増えるという報告もあります。アメリカのブリガムヤング大学の研究によると1週間に5日、30分程度のジョギングをした人はテロメアが伸びたのだとか。運動習慣がないと難しいことかもしれませんが、週1日からでも始めていくことはできそうですよね。一気に秋らしくなった今、みなさんいかがでしょうか。

そして、きっと誰もが抱えているであろう「心理ストレス」。人と関わって生きている限り、心理ストレスから解放されるのは簡単ではありませんよね。しかし、これに関しても希望がもてる報告があります。それは「瞑想」です。なんと、瞑想をしたグループはテロメアが伸びたというのです。瞑想を通じて心を強くすることで、心理ストレスによるダメージを緩和すると考えられています。

瞑想することは「ストレスの軽減」だけでなく、「集中力を高める」「ポジティブになれる」などの効果もあるのだとか。お家でできるので、新しい習慣として取り入れやすいかもしれませんね。さまざまな瞑想法がネットで紹介されていますよ。

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テロメアのしっぽ?Gテール!

さて、テロメアについて、もう一つお伝えしたいことがあります。じつは、テロメアの先端にはしっぽのようなものが付いていています。その名も「Gテール」。Gテールが長いほどテロメアの強度が高くなります。「テロメアを守っているしっぽ」といった感じでしょうか。そしてこの、Gテール。短くなると動脈硬化や脳梗塞、認知症といった疾患が発症しやすい状態になることもわかっています。

「自分のGテール。どのくらいの長さなのかなあ…」と思ったあなた。なんと、測定できます!広島大学教授田原栄俊博士により、世界で初めてGテールの測定方法が開発されました。これは、Gテールに特異的に結合する物質を結合させ、その物質の化学発光(反応により光を放出する現象)を利用してGテールの長さを測定するというもので、博士が立ち上げたベンチャー企業「ミルテル」で商品化されており、すでにさまざまな病院に導入されています。

ミルテル社ホームページより

ミルテルのホームページによると、Gテールの長さを測定することで「遺伝子疲労度」がわかり、それをモニターしながら医師のアドバイスのもと生活習慣を改善し、Gテールを伸ばすことができるとのこと。自費診療になるため数万円かかるようですが、今の自分のGテールの状態を知ることが、生活習慣を見直すひとつのきっかけになるかもしれませんね。

目標に向かって邁進する

わたしたちはいつも、「老けたくない」「若返りたい」と言いながらも、長年続けてきた生活習慣を改めることはなかなかできません。歳を重ねるごとに改めるのが難しくなっているようにも思います。そして、「よしやろう!」と決めても、継続することは簡単ではありませんよね。

田原博士は広島大学のインタビューで「研究継続において大切なこと」として次のように述べています。

目標に向かって邁進する力です。そして、その目標は平凡なものではなく『お!面白いな』といえるものであることです(中略)そういうテーマであればこそ、興味を強く持ったまま取り組んでいくことができます。テロメアやMIR-22の研究は、まさにそれです。

自分自身がワクワクできる目標であるからこそ、継続が可能なのです。漠然と「痩せる」ではなく「モード系のスーツが似合う体型になる」といった、具体的な目標をもつことが、きっと継続するチカラになるはずです。