日本が世界に誇るピュアスポーツ、日産 フェアレディZとトヨタ スープラ。Zの登場を迎え撃つかのようにスープラに待望のMTモデルが設定され、いよいよ龍虎相打つ! かと思いきや、Zは受注を一時ストップ。
スポーツモデルファンには残念のひと言に尽きるが、Zとスープラどちらを選ぶか、さらに考える時間が与えられたと思って、まだまだ大いに悩もうではないか!
文/渡辺敏史、写真/NISSAN、TOYOTA、ベストカー編集部
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■買いたくても買えず、売りたくても作れない枯渇状態が続く
フェアレディZとGRスープラ、選ぶはどっちだ? ……と問われてもですね、Z、買えないじゃありませんか……。
いやはや仰せのとおりでございます。現在、Zの側は供給能力の関係で受注をストップ。
コロナ禍からの半導体供給麻痺、ロックダウンに伴うサプライチェーンの混乱、そこに加えてのウクライナ侵攻……と、今、我々は買いたくても買えず、メーカーは作りたくても作れないという、かつてない枯渇事態を迎えているわけです。
新型Zにとってどうしようもない不運は、その波をモロに被るかたちで出鼻を挫かれていることだと思います。
というわけで、現状、ふつうに注文できるという点だけでも有利なのはGRスープラの側。しかもGRスープラは新型Zを狙い撃つように2022年4月、6速MT仕様の追加を伴う2回目のマイナーチェンジが発表されています。そのデリバリーはこの秋からの予定で、MTは納期未定、ATは半年程度の納期だそうです。
ちなみに1回目のマイナーチェンジは2020年の4月に発表され、その内容はRZに搭載されるエンジンの更新、そのパワーアップに伴う車体剛性強化やサスセット、ボディコントロールにまつわる電子制御系の変更などとなっています。
で、2回目となる今回は、パワートレーンの変更はないものの、さらに足回りや電子制御が見直しを受けているそうです。
■スープラに待望のMT追加!!
私が実際にドライブしているスープラは1回目のマイナーチェンジを受けたモデルまでですから、2回目の変貌については申し訳なくも想像するしかありません。
が、1回目のマイナーチェンジでは大幅にパワーが上がったぶんクルマの動きはステイブル側に振られていた、具体的にいえばお尻がピクピクと滑りたがるようなFR的着色感が薄まっていたところからみると、さらに安定感は高まっているのではないでしょうか。
その根拠が6速MTの設定です。387ps/500Nmのアウトプットを3ペダルで扱わせる、プロであってもこの状況はまずまず緊張感を伴うものです。ましてやホイールベースが2470mmとあらば、全開時にはリンケージのミスが挙動にシビアに現れることにもなりかねません。
公道の不確実性やさまざまなスキルのドライバーが扱うことに配慮すれば、やすやすとグリップを失わない粘りを持たせたアシの方向性に振っていくのが筋でしょう。
ちなみに先日、2022年型のBMW Z4 M40iに乗る機会があったのですが、発売当初とは別物のようにクルマの動きがしなやかになっていたのに驚かされました。スープラとは兄弟的な位置づけのオープンカーですが、スープラのたゆまぬ改変が、Z4の側にもなんらかの影響を及ぼしているのかもしれません。
■運転をとことん楽しめるZ
そんなスープラよりもさらにハイパワーなエンジンが搭載されているZですが、外誌のテストなどをみるに、0〜100km/hやゼロヨンといった加速性能は、わずかにスープラのほうが上回っています。
でも、そもそも数値的性能にこだわらず、運転行為そのものの楽しさを最大化するというのがZのコンセプトですから、これで一喜一憂するのはあまり意味がありません。
むしろ気になるのはパワーよりもそのフィーリングです。Zに搭載されるVR30DDTTは過給の逆流を封じるリサーキュレーションバルブやフライホイールの振動低減など、滑らかに回りサクサクと応答する工夫が随所に施されています。
その甲斐あって、同系のエンジンを積むスカイライン400Rよりもシャープさは一枚上手。そして7000rpmのレッドゾーン手前までパワーのタレを感じさせないスポーティなフィーリングを得ています。
■エンジンはスープラに軍配か
が、スープラが搭載するB58のレスポンスとサウンドはやっぱり一枚上手。伝家の宝刀、BMW製ストレート6とはなんたるかを存分に感じさせてくれます。特に1回目のマイチェンでは排気系を一新し、マニホールドが別体化されたこともあってか、パワーもともあれ回りにキレのよさが加わりました。
対するZはスカイライン400Rで培われた市井のチューニングノウハウが活用されることも期待されますが、ストック同士で比べるならエンジン勝負はスープラに軍配が上がるかと思います。
ミッションはスープラのMT車に触っていない段階で評価はできませんが、ZのMTについては、先代に比べるとあらゆるバリが取れたかのように動きがスムーズで、ゲートへの吸い込み感とギアを入れた節度感とのバランスも綺麗に保たれています。スポーツカーとしてみても満足できるタッチに仕上がっているのではないでしょうか。
一方、スープラの側はM3系のギアボックスに3シリーズのハウジングを組み合わせたオリジナルのユニットを用意したようですが、元ネタのBMWのMTのフィーリングがちょっと独特なだけに、その仕上がりは気になります。
■フットワークはZが有利
ATはスープラが定評と実績のあるZF製8HPを採用。Zは新設計の9速ATで、北米仕様のフロンティアやタイタンに用いられるギアボックスをベースに、ハウジングをマグネシウム製として軽量化を図りました。
トルク容量は公表されていませんが、彼の地では5.6LのV8を積むトラックに組み合わせられていることもあり、475NmのZには充分以上であることは間違いないでしょう。変速レスポンスや繋がりのダイレクト感にも不満はなく、あえてMTではなくこっちを選ぶのもありかなと思わせる仕上がりです。
2回目のマイチェンを受けたスープラは、スタビブッシュや電子制御ダンパーのチューニング変更に加えて、新デザインの鍛造アルミホイールを採用し、本あたり1.2kgの軽量化を果たしたそうです。
このバネ下の軽さが何より平時の乗り心地向上には活きてくるはずで、発売当初とは印象を違えた優しい乗り味になっていることは想像できます。
が、新しいZのフットワークのよさは、そんなスープラをも霞ませてしまうかもしれません。
公道的なギャップやアンジュレーションをものともせず、アシをしなやかに動かして400ps超級のパワーを見事に吸収。ロールやピッチなど上屋の動きは無理に規制せず、ドライバーの些細な入力にも応じて所作を刻々と変えていくサマはまさに言い得て妙のダンスパートナーです。
さもすればサーキット的環境ではちょっと緩い印象かもしれませんが、土台にはZ34世代で培ったノウハウがありますから、スポーティ方向のニーズに応えるパーツが今後たくさん出てくることは想像に難くありません。
ストックの懐深さ、そしてイジる楽しみという点でも、シャシーの芸域が広いのはZの側かなという気がします。
■納期遅延を逆手にとる「スープラを堪能してからのZ」もアリ!?
そこに絡めてGTという視点からみても、荷室開口面の大きさやシートバックの手荷物置き場など、積むうえでの困らなさという点でもZはちょっぴりスープラをリードしているかもしれません。
というわけで、Zの納車が年単位であることは確実だろう今、先にスープラを堪能しながらZの供給正常化を待つなんてお大尽プランをお考えの方もいらっしゃるかもしれません。
でもそれって、意外とアリかもしれませんよ。同じような2台にみえて、目指す方向性も味わいもかなり違っていますから。内燃機活動の締めくくりとしても、面白い繋ぎになるのではないでしょうか。
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投稿 最後の国産6気筒ターボMTスポーツはどっちを選ぶべきか! 新型フェアレディZ対GRスープラRZ は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。