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初代メルセデスSクラスW116のウィークポイント。1970年代のSクラスは華麗である。しかし、購入するのであれば、その問題点を知っておかなければならない。購入前にチェックすべき、隠れた弱点がたくさんあるのだ。これらがそうだ!

注意点
① ボディワーク領域の錆が深刻な理由
② 錆はなぜ外から見えないことが多いのか
② インナーシルのチェックがいかに重要か

1972年にメルセデスが発売した初代「Sクラス」は、今日でもその技術力の高さを誇っている。だから、50年経った今でも、多くの人がW116に憧れるのは当然なのだ。そして実際、この元高級車はインターネット上で約7000ユーロ(最低6ヶ月の車検付き)という安さで手に入れることができるのだ。しかし、実際どうなのか?ワークショップでは、旧い「メルセデス・ベンツSクラスW116」を徹底的に調査し、購入前に知っておくべき弱点を発見する。

この「W116」を目の当たりにすると、ドアの縁や窓のつなぎ目にはコケが生え、錆は見過ごせず、ドアを開けるとカビ臭いにおいが漂っている。しかし、アストラルシルバー「450」の「SE」が死んでいると断定するのは時期尚早だ。そんな心配をよそに、46年前のセダンが自力でリフティングプラットフォームに転がり込んできた。ハンブルク近郊のバルムシュテットにあるクラシックメルセデス専門のワークショップのオーナー、ハラルド フォルマーは、「116はメカニカルには強い車です」と満足そうに頷いた。

ちょっと時代遅れの快男児: 1976年製の古いメルセデスSクラスW116は、より良い日々を過ごしている。あえて今修理する価値はあるのか?

ボディ部分のトラブルが深刻な理由

「W116はボディ部分の問題ばかりだ」。我々の「W116」のゾンビは、何年も野ざらしになっていた。今、「保存か、殺処分か?なんといっても「Sクラス」は高級セダンだ。シートメタルの再塗装部分を除けば、内装のダッシュボードの表皮も、シート生地も、修復の痕跡はほとんどない。

素人や表面的な観察者にとっては、どちらもリスクとなる。「何も知らないで、よく見なければ、すぐにインチキに騙される」と専門家は警告する。ハラルド フォルマーによれば、特に厄介なのが工場で施される下回りの防錆処理だという。厚さ数センチの弾力性のあるコーティング剤が経年劣化でもろくなると、水分が浸透し、その裏側が花畑(カビだらけ)になることがあるのだ。

エンジン(156~286馬力)は、関連する駆動技術とともに、基本的には堅実なものと考えられている。弱点はボディワークだ。

外から見て錆がないことが多い理由

危険なのは、外から何も見えない場合が多いことだ。試乗車のホイールアーチを覗き込んでも、まず心配はない。しかし、ハラルド フォルマーは運転席側のフロントに小さな傷を発見し、ドライバーでつつき始めた。やがて、壁紙のように保護膜がはがれ、その下にある破壊の全容が明らかになる。運転席の足元への移行部分の板金と断熱材は完全に溶けてしまっている。

露出した穴から中を覗くと、助手席の背もたれが見えている。さらに進んで、隣接する敷板の先端にも腐敗の症状が見られる。ジャッキマウントの溶接されたチューブは文字通り宙に浮いており、サイドの補強板はほとんど腐ってしまっている状態だ。「修理は可能だが、コストがかかる」とハラルド フォルマーは言う。この修理だけで約1,500ユーロ(約22万円)の改修費用がかかるという。

プロブレムゾーン(問題領域): アンダーボディ。メルセデスはSクラスに厚い保護膜を施した。時を経て、この層が多孔質になって、その下に腐敗が発生するのだ。

インナーシルのチェックがいかに重要か

「W116の場合は特にシルをよく調べる必要があります」と専門家は言う。その昔は、オニオンスキンの原理で、錆びた表面に補修用の板金を何枚も重ねて焼いたり、フィラーをキロ単位で使ったりすることもあったそうだ。

ここにそれが表れている。傷ついた鉄板を剥がすと、太った錆びた穴から、その様子が見えるのである。

インナーシルは確認が難しく、基本的に叩いて押すだけだ。助手席からカーペットで覆われ、フロアパネルへの移行部ではケーブルダクトのカバーで隠されている。リアシートの下、アクスルマウントのあたりも厄介だ。アクスルキャリアはゴムベアリングのため目視点検が難しく、アクスル全体を取り外す必要があるため修理費が高くつく。リアエンドの先端が腐ってきた場合、路面の汚れだけでなく、ラゲッジルームから侵入した水分が原因であることが多い。

また、50年以上経過したW116のドアラバーの下には湿気がたまり、錆が繁殖することがよくある。

W116のメカニズムのどこに問題点があるのか

機械的なトラブルに関しては修理がほとんど可能である。ステアリングの遊びもそのひとつだ。この問題は再調整では解決できないことが多く、専門家がオーバーホールした交換用ステアリングシステムを取り付けることでしか解決できない場合もある。8気筒エンジンでは、タイミングチェーンの伸びやスライドレールの疲れが発生することがある。

一般に、フォルマーは後期の「W116」を推奨している。無接点式点火装置はメンテナンスの手間を省き、機械式噴射装置は1976年まで使われていた電子式噴射装置より制御が容易である。そして、我々の「450SE」は?おそらく、そのチャンスはある。そこで、ハラルド フォルマーは、次のメンテナンス作業のステップをオーナーと話し合いたいと考えた。多くの問題点があるにもかかわらず、専門家は修復を支持する。「この物質は、屠殺するにはまだあまりに良すぎる」。

初代メルセデス・ベンツSクラスW116のウィークポイント=購入アドバイス

1976年製の「450SE」は、長い間、外に置かれていた。メルセデスのエキスパート、フォルマーが「メルセデス・ベンツW116」の問題箇所をチェックする。以下の写真は、「Sクラス」が最も被害を受けた箇所だ。表面上、隙間は絶対に確認した方がいい。不適正な装着や曲がったバンパーは、事故によるダメージの結果である可能性がある。
エンジンは、6気筒の「280」でも、V8を搭載した「450」でも、非常に頑丈なマシンである。しかし、エンジンルームのいたるところに時間の痕跡を見ることができる。錆が鉄板を食い荒らし、さまざまな板金の凹みに巣食っているのだ。ヒューズボックス下のバルクヘッドも危険だ。
内装では、湿気やカビ、木製のパネルのひび割れなど、適切でない保管状態が反映されているように見える。我々の「450」の場合、徹底的なクリーニングで十分だった。重要:機器は無傷であること、代替品は時に入手困難であること。
燃料の供給。燃料ポンプや燃料ホースは、経年劣化で腐ることがある。写真ではっきりと見えるのは、始動トルク補正機能付きの「450」モデルのカップリングアクスルだ。走行距離の多い車では、磨耗していることが多々ある。
アンダーボディ: ここで、悪名高い「エレファントスキン」を見つけることができるのだ。工場出荷時にアンダーボディに厚く塗布された保護用の樹脂層。意図的ではあるが、数十年後に問題となることが多い。プラスチックはもろくなり、ひびが入り、そして水分が浸透し、文字通り皮膚の下に入り込んでしまう。その結果、ストーンガードは厄介な部分だ。健康そうに見える表面の裏側で、虫歯が進行している典型的な例を紹介する。
助手席の中を直接見ることができる錆び穴。運が悪いと、このような朽ちた穴がいろいろある。
フットレストを外せば床に穴が開いていて、道路が見渡せる。足元とホイールアーチの間の板金や断熱材は、長い年月の間に溶けてしまっているので溶接機だけが頼りだ。そして、エンドチップとホイールアーチへと続く: 飛沫水は、ホイールアーチへの移行部分のリアサイドパネルにダメージを与える。ホイールアーチもよくかじられた形跡がある。後付けされたクロームクレセントで隠されていることもある。見た目は上品だが、厄介な罠である。
バンパー: ここでも、メッキに惑わされてはいけない。バンパーのゴムストリップの裏側には、湿ったビオトープが形成されることがある。錆びはよくあることだが、通常はバンパー下部のみに発生するものだ。
エンジンボンネットのヒンジポケット: 堆積物の徹底的な掘り込みが必要だ。掃除は嫌なことが多いが、大切な気づきをもたらしてくれる。ボンネットヒンジの留め具がよく見える。その下のボディの隙間に葉っぱや汚れが溜まると、密かに花(カビ)を咲かせることも多い。
ブーツ: 湿気の影響でサイドポケットに錆が発生する。シール不良、右はフューエルフィラーフラップドレインの詰まりから侵入する。
リアアクスルマウント: この部分とリアインナーシルの先端は、車軸を分解して修理しなければならないため、錆の除去が困難だ。
フロアパネル: 腐食は、多孔質の保護層を通して外側から、カーペットの下の浸水を通して内側からと、2つの側面から起こる。
フルレストアされ、新車のように蘇ったW116メルセデス・ベンツ450SE(1976)。

結論:
旧車の購入を検討されている方は、時間をかけてしっかり点検してほしい。「手がかりがなかったり、よく見なかったりすると、すぐにニセモノに騙されますよ」と専門家は警告している。しかし、最終的には「レストアする価値がある」と太鼓判を押してくれた。だが、再び最高の状態にするためには、何千&何万ユーロ(数十万円から数百万円)もの資金を投入しなければならないことも覚悟しなければならない。

【ABJのコメント】
「メルセデス・ベンツSクラス」と言えば、一番有名? で、今でも人気もあるのが「W126」ではあるが、ぼくはこちらの「W116」、大好きだった。特に「6.9」や「300SD」といったちょっと変種のモデルも大好きではあるが、普通の「280SE」とか「450SEL」という、正規輸入モデルが路上に止まっているのを見ると、それはそれは、なめるように観察し、あこがれたものである。そんな「W116」は僕の小学校時代、ということはもう45年も前の車になってしまっているが、今見ても時代遅れな古くささはあまり感じないことは驚くほどである。もちろん内装のスイッチやオーディオなどには時代を感じるが、車の基本的な部分はまだまだ矍鑠としているし、ベロア仕上げのシートなどは、明らかに今のメルセデス・ベンツのシートよりも上質で重厚でお金がかかっている。

「メルセデス・ベンツのSクラス」の中の「Sクラス」といえる「W116」ではあるが、今回のレポートを見るとやはり一番の問題は錆のことらしい。もちろん機構的にもメンテナンス作業が必要だったり、壊れやすい部分があったりすることは言うまでもないが、ボディ等のサビに関しては絶対に注意すべきポイントであることは当然だろう。やはりメルセデス・ベンツといえば剛性の高いボディとシャシー、それがさびてしまっては一番良い部分がなくなってしまう・・・。だがこの当時のボディは、メンテナンスできることも確かであり、きちんとリビルドすれば昔のあの輝きに戻るということを、最後の写真が証明している。なんだか、まるで新車のようではないか!

Text: Martin G. Puthz
加筆: 大林晃平
Photo: autobild.de