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 「今の時代、おっさんはどんなクルマに乗るべきか?」

 いやもちろん、どんなクルマに乗ったっていいのだが、アナタ(おっさん)が仮にクルマ好きなら、周囲のクルマ好きからどう見られるかを意識するはずだ。そして少なくとも、「シブイなぁ!」とか、「わかってるね~」と思われたい、と願うのではないだろうか? そういう選択を、ワタクシ清水草一が独断で展開いたします!

文/清水草一
写真/ホンダ、BMWジャパン、ステランティスジャパン

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■現代におけるシビックタイプRの愛で方

 ホンダ シビックタイプRが、あっという間に売り切れてしまった。

 日産 新型フェアレディZも受注停止だが、台数に関しては完全に非公開。謎が残っているぶん、まだ買える可能性がある(たぶん)。しかしシビックタイプRは、生産・販売台数が「月に400台」と公表されていて、すでに4年分程度の注文が入り、受注停止となったらしい。つまり、買えない絶望度はシビックタイプRのほうが高いかもしれない。

今年9月2日に発売された新型シビック タイプR。強力なVTECターボを搭載し、速さと官能をたっぷり味わえる

 新車がもう買えないとすれば、大幅な上乗せ価格を払って中古車を買う以外、手に入れる方法はない。それでも欲しい! という人もいるだろうが、大部分のおっさんは、それほどの覚悟はないはずだ。

 それに、ちょっと冷静になって考えてみれば、シビックタイプRは、おいそれと乗れるクルマではないことが理解できる。新型タイプRは、かつてのRと比べたら乗り心地は文化的で、決して扱いづらくもない。サイズに余裕のある5ドアハッチバックなので、実用性も充分だ。

 しかし、日常使いできるかと言えば、いろいろな意味でためらってしまう。最大のハードルは、「無駄に距離を伸ばしたくない」というプレッシャーだ。なにせ高値が付くクルマ。走行距離は短ければ短いほどいい。

 シビックタイプRは、本来はサーキットでタイムを出すためのクルマだが、現実には、一種の宝飾品になっている。ガレージに余裕のある人はいいが、そうでないおっさんは、気兼ねなく乗れるスポーティなクルマを買ったほうが、シアワセになれるのではないか?

 そこで今回は、シビックタイプRを買えなかったおっさんカーマニアに、その代わりが務まるクルマを3台おすすめしよう。

■【候補その1】ホンダ シビックe:HEV

1972年の発売から50周年を迎えたシビックは、今年ハイブリットユニットを搭載した「e:HEV」を発売

 同じシビックのハイブリッドモデルだが、これがものすごくイイ。

 ホンダのe:HEVは、基本的にモーターで走るシリーズハイブリッドだが(高速道路の巡航時のみエンジン直結モードあり)、ドライブフィールはとても自然で、ガソリンエンジン車に近い。それでいてモーター駆動だけに、アクセルレスポンスは抜群。日常走行でも、ちょっとアクセルを踏み込めば、胸のすくような加速が楽しめる。こんなことは、シビックタイプRでは望めない。

 スポーツモードでアクセルを全開にした時は、エンジン回転が、まるでステップ変速のように変化する。その時のエンジンフィールは、F1マシン……とまでは言わないが、ホンダのレーシングエンジンそのもの! シビックe:HEVに搭載された2.0L直噴自然吸気エンジンは、ホンダの面目躍如の仕上がりで、「ハイブリッド」という単語からは想像できないほどスポーティで気持ちいい。

 それでいて乗り心地は超絶しなやか。つまり走りは、高級スポーツセダン(正確にはハッチバックだが)そのものだ。宝物としてシビックタイプRをガレージにしまい込むのもいいが、シビックe:HEVで好きなように走り回ったほうが、人生にプラスなような気がしてならない。私ならe:HEVを選ぶ。

■【候補その2】BMW 220i Mスポーツ

コンパクトなクーペモデルとして2021年に発売された2シリーズクーペ。その走りには“駆け抜ける歓び”が凝縮されている

 2022年に発売になったBMWの新型2シリーズクーペ。そのベーシックなグレードである220iMスポーツが凄まじくイイ!

 2シリーズクーペは2ドア。5ドアハッチバックのシビックとはボディ形状が異なるが、もともとシビックタイプRを欲しがるような人にとっては、2ドアクーペの実用性の低さは、大きな障害にはならないだろう。

 エンジンは、スタンダードな2.0Lターボで、最高出力は184psに過ぎないが、細かい改良が進んでおり、回転フィールは絶品。もはやBMWの代名詞であるストレート6をしのぐのでは? というほどの快感をもたらしてくれる。

 直4だけにエンジンが軽く、クルマの動きは猛烈に軽快だ。車両重量は1530kgあり、昔の感覚では決して軽量ではないが、いまやコイツが、BMWの後輪駆動モデルとしては最軽量クラス。このフットワークの軽さ、ライントレースの正確性は、さすがBMW! と唸るしかない。体感的には、「1200kgくらいじゃね?」と言いたくなる。

 直6ターボを積む上級グレードのM240i(4WD)と比べても、220iMスポーツはすべてが自然。クラシックなスポーツカーの趣が強く、走っていて本当に楽しい。マニア的な走るヨロコビに関しては、電子制御のカタマリのようなM240iより上だ(断言)。

 価格は550万円と、シビックタイプR(499万円)より若干高い。「184馬力で、330馬力のタイプRより高いのかぁ」と思うとガッカリするが、日常的に走りを楽しめると思えば、むしろ安い! と言えなくもない。なにしろBMWだし!

■【候補その3】プジョー 508GT

プジョーのフラッグシップとして4ドアファストバックの斬新なスタイルで2019年に発売された新型508。2019年にはワゴンモデルの「SW」も追加されている

 こちらはシビックと同じ5ドアハッチバックで、サイズもだいたい同じ。イメージはかなり違うが、意外とライバル関係にあったりする。

 508には、ガソリンの1.6Lターボとディーゼルの2.0Lターボ、そしてPHEVの3つのバリエーションがあるが、シビックタイプRの代役になるのは、ガソリンの1.6Lターボを積むモデルだ。最高出力は180psで、BMW 220iとほぼ同じ。車両重量も1510kgと非常に近い。身のこなしが軽快な点も同じだが、本質はかなり異なる。

 プジョー 508はシビックと同じFFだが、ステアリングやアクセル、ブレーキのタッチが非常に軽く、羽毛のように軽やかに走る。ある意味人工的ではあるのだが、そのカルカル感がものすごくラクチンに楽しくて、乗っていて思わずスキップしたくなる。アクセルをちょっと踏んだだけで、無駄なほどビュンビュン加速する感覚は、シビックe:HEVに通じるものがある。

 プジョー508は、スカしたスタイリングもステキだ。あまり売れていないので、正体不明のカッコよさに感じられる。

 新車価格は、値上げが繰り返された結果、594万円(508GT)になってしまった。3年前の発売時には417万円(508アリュール)から買えたことを思うと信じられないが、508には、すでに値のこなれた中古車があり、300万円台で十分狙える。508なら中古車が吉だろう。

 なにを隠そうこの私、299万円で508の中古を購入し、大変シアワセになりました。

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