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Image:Volkswagen

自動車メーカーの多くは、自動運転技術が確立したあとの自動車について、よく「タイヤが付いていて走るラウンジルーム」のような電気自動車をコンセプトカーとして提示してきた。独フォルクスワーゲン(VW)は、そのコンセプトをさらに一歩推し進めて、短距離航空便などの代替にもなりうるというEV「GEN.TRAVEL」のデザインスタディモデルを発表した。

GEN.TRAVELは、セダンと多目的車の中間に位置するまったく新しい車両カテゴリーを構成するものと位置づけられている。VWグループのイノベーション担当責任者ニコライ・アーデイ博士は「NEW AUTO戦略に基づき、VWは来るべき世代のモビリティを、持続可能かつデジタルに定義しなおす」と述べた。そして、「革新的な技術によって近い将来に実現される」であろう「新しいレベルのドアツードアの移動やエミッションフリーかつストレスフリー」な走りを体験可能にするものと説明した。

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このEVはSAEレベル5、つまり完全自動運転機能を搭載し、移動の目的に合わせて室内空間をカスタマイズできるモジュール式インテリアを取りそろえる。たとえばビジネスマンが利用するのなら、4つのシートの中央にテーブルを配置したり、深夜移動ならシートを2つにし、背もたれをフラットにしてベッドとして使えるようにもできる。また照明は自然な入眠を促すよう調整もできれば、乗り物酔いを軽減するような明かりにしたり、前の席で子ども(や大人)たちをAR空間で楽しませることもできるという。もちろん、乗客が車内で就寝する場合も、しかるべき安全性が確保され、必要なら間仕切りも用意できる。

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GEN.TRAVELのエクステリアは大きく2つのパートに分かれた設計を採用している。クルマの上半分はガラスで囲まれた未来的なキャビンを構成しており、周囲の景色を最大限に楽しめるようになっている。また乗降用のドアは乗り降りのしやすさを考慮して上に跳ね上げるウィングドアが採用されている。

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走行時の快適性を高めるため、足回りにはアクティブサスペンションを搭載し、eABC(electric Active Body Control)機能によって、加減速、コーナリング時の身体の振られを事前に計算して運転スタイルや走行軌道を最適化するとのこと。 人工知能(AI)と複数台を数珠つなぎ状に走らせ空気抵抗を減らす「プラトーニング」と呼ばれる走行を組み合わせることで、EVの航続距離を伸ばすことができるとも述べている。

ただ、リリースでは「近い将来に実現される」とは述べているものの、たとえばレベル5の完全自動運転などは、いまだ実現のメドが立ってはいない。このコンセプトカーにおけるその他の技術においても、どうやって実現するのか、具体的な説明がないものが大半だ。例外は「プラトーニング」走法が大型トラックの自動運転分野で実験されているぐらいだ。Autoblogは、このコンセプトカーはVWのエンブレムをつけておらず、VWブランドの車両としては扱われていないと指摘している

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それでも、あえて既成概念にとらわれない発想による提案をすることは、将来の自動車が進むべき方向性を探るためには重要だ。コンセプトカーとは本来そういうものであり、大胆な発想から部分部分を実現していくことで、量産車の改良やその他の分野の革新を後押しする。今回のVWのコンセプトは、将来的なMobility as a Service(MaaS)や、Travel as a Service(TaaS)といった分野に影響を与えるものになるかもしれない。