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 2022年8月に入ってからクルマメーカーの車両価格の値上げが続々と発表されている。長引くウクライナ戦争、世界的な物価高、強烈な円安など、その勢いが収まる気配はない。今後さらに上昇するのか? 買うなら今がもっとも安いのか? 現状を把握するための情報をまとめてみた。

文/鈴木喜生、写真/トヨタ、スバル、日産、マツダ、三菱自動車、写真AC

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悲報!! 各社から値上げの発表が続々!

買うなら今しかない!? クルマメーカーが続々と値上げ発表! 車両価格はどうなる??
デリカD:5の最廉価グレードのMの価格は391万3800円から400万1800円への値上げとなる

 まずは、この2カ月(2022年8月~9月)で各社から発表された車両価格の値上げを見てみたい。

●三菱自動車(8月1日)
・「デリカD:5」、「ミラージュ」の価格を8月1日より改定
・「デリカD:5」は8万8000円、「ミラージュ」は3万3000円の値上げ
・値上げ幅はそれぞれ約2%
・装備などの変更はなし
・今秋、アウトランダーPHEVの一部グレードを約3%値上げの見通し

●マツダ(8月4日)
・「CX-30」、「MAZDA3」をそれぞれ6万6000円値上げすると発表
・排気量2000ccのガソリン車モデルを簡易式ハイブリッド車(HV)に変更
・値上げ幅はそれぞれ約3%

● スバル(8月27日)
・「フォレスター」を5万5000円値上げ
・値上げ幅は2%弱
・ライティングスイッチの操作性改善やボディカラーの変更など、一部改良あり

●日産(9月1日)
・日産は「リーフ」の価格改定に伴い、9月23日から受注を一時停止すると発表
・値上げ幅の詳細、受注再開に関しては後日発表(9月20日現在)

原材料と原油価格の高騰、その他の要因は?

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特に中国でコロナによるロックダウンが施行されて以後、世界の船舶輸送が混乱している。燃料費高騰とのダブルパンチで、原材料の輸入コストが大幅にアップしている

 こうした新車価格の改定は、ご存じのとおりロシアのウクライナ侵攻による原材料価格高騰や、原油価格の高騰による輸送コストの増加に依るところが大きい。

 モデルチェンジをするタイミングで新車価格を改定するのが国内メーカーのこれまでの定石だが、今回の値上げでは、車両の仕様変更は各社とも最低限にとどめる傾向にある。つまり、原材料価格の上昇が車両価格に上乗せされた結果であることは明らかだ。

 価格上昇の要因はいくつも思い当たる。昨今のニュースからそれを探ってみると、以下のような要因が挙げられる。

○ロシアのウクライナ侵攻による原材料価格高騰
○原油価格の高騰による樹脂製品、輸送費のコストアップ
○コロナによるコンテナ輸送の混乱、輸送費の高騰
○今も解消されない半導体不足と価格上昇
○世界的なインフレによる円安

 メーカー各社のコメントからは、モノが足りない状況と、輸送費の増大が並行して発生している様子がうかがえる。

資材の不足と高騰はまだまだ続く!?

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ロシアにおけるニッケルの生産量は世界3位。バッテリーに欠かせない素材だが、その市場価格は8月以降、上昇傾向にある。特に、EVやHV、PHEVは大きな影響を受けることは必至だ

 ロシアは、アルミニウムやマグネシウムの生産においては世界2位(それぞれ2020年と2019年)であり、ニッケルは3位(2018年)、鉄鋼石は5位(2019年)を誇る。

 また、それら構造部品に使用するものだけでなく、モーターや蓄電池に使うニッケルやアンチモンなどの貴金属も高騰している。さらにマフラーの触媒に欠かせないパラジウム、プラチナなども同様だ。

 これらはすべてロシアが高い輸出量を誇る原材料ばかり。その流通がスムーズでなくなれば、市場における価格は当然ながら上昇する。

 世界の原油価格の指標となるWTI原油先物価格は、ウクライナ戦争が勃発した2月には1バレル130ドルまで跳ね上がったが、9月中旬には90ドルを切るまで落ち着いている。しかし、原油はドルで取引される。円安が進む日本にとっては、樹脂製品や輸送費など、あらゆるコストが上昇する。

 半導体の不足は、今や世界で常態化している。最新プロセスによるハイスペックなものだけでなく、クルマに多用されるベーシックな汎用半導体も足りておらず、価格上昇以前に、確保事態が困難な状況が続いている。

さらに進む金利差、そして円安で状況悪化は不可避

 そして円安。米国のインフレは激しく、それを抑えるためにFRBは利上げを決定した。その際、アメリカ経済の停滞を危惧した投資家は、いったんNY株式市場などからはリスクオフする気配を見せたが、為替においては9月1日に1ドル140円を突破、同7日には144円を超えている。

 積極的に利上げするFRBと、経済活動を停滞させまいと低利子を固持する日銀は対象的であり、両国の金利差は開くばかりだ。

 昨年9月には151円だった英ポンド/円も、この9月には166円を超えている。ブレグジットを果たした英国も、やはり高いインフレにさらされていて、30年ぶりの高い利上げに踏み切った。

 ECB(欧州中央銀行)も同様に上昇し続けていて、8月末にはドイツのインフレ率はユーロ導入後、最高の数値となっている。

 つまり、世界的なインフレが加速する現在、世界的な金利上昇が起きている。そうした状況のなかで、低金利な円を好んで買う投資家はいない。いや、円をもっていたらヤバいと考えるのが普通だ。利率の高い国にお金が集まるというのは世界経済における定理と言える。こうした状況のなかで、円安が収まる理由は今のところは見つからない。

結果、クルマを買うタイミングは?

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ランドクルーザー300の納期はなんと4~5年以上!! 受注の停止中。近々受注再開の噂もあるものの、4~5年先の経済状況は予測不可能。納期が長いクルマに関しては今オーダーするのはギャンブルか!?

 日銀は利上げをする気配がない。ということは、クルマのローンの利率が急激に上がることはないと思われる。これは購入者にとっては利点だ。

 また、原材料や半導体の不足も目途が立っていない。つまりメーカーは高いコストを支払い続け、それらは今後も車両価格に反映される可能性が高い。つまり、これから発売が開始されるモデルも、または既存モデルでさえ、状況が変わらなければさらなる価格上昇が予想される。

 そして為替に関しても、円高傾向になる要素がまったくと言っていいほど見つからない。つまり、原油、資材、輸送サービスにも、割高なコストを支払い続けることになる。
 
 さらに、やっと稼働し始めた岸田内閣が、来年、増税しないとは言い切れない。こうした現状を鑑みれば、「買うなら今」という答えにたどり着く。

 クルマが故障して買い替えなくてはならない場合や、特定の新型車が欲しい場合は選択の余地はない。そうでなければ、この経済状態が沈着するまで購入を控えるか、または、さらなる値上げに備えてすぐに購入するかの選択となる。

 いずれにせよ、買い物で「お得感」が感じられるような経済状態に戻る気配がない今、その選択は賭けとなる。バブル経済の崩壊、リーマンショックと同様に、クルマユーザーにとっては厳しい局面であることは間違いないだろう。

 購入を決定し、しかも納車期間が長期に渡る、または納期の目途が立たないようなモデルを選択する場合には、納車時の状況が大きく変わる可能性があることも念頭に置いておきたい。

 世界経済はちょっとしたイベントで瞬時に変化する。世界経済の動向に注視しながら購入タイミングを計りたい。

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