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N-VANにスペーシアベースも引込めるAC100V電源!! でもミニキャブミーブは何が違う!?

 見事復活を果たした三菱 ミニキャブミーブは、ざっくり言うと軽バンのEVモデル。一般向けモデルが一時生産終了となったが、再販されることとなったのだ。今や軽バンはビジネスユースだけでなくアウトドアなど個人で愛用するひとも少なくない。その筆頭がN-VANであり、スペーシアベースである。

 これらモデルは内燃機関モデルながらオプションのAC電源を選べば、PCなどのガジェットを充電することも可能。でもミニキャブミーブはEV!! もっと凄いことがデキるのでは? それに加えてまったく内容が変わらなかったミニキャブミーブに臨む改善点とは?

文/山本晋也、写真/ホンダ、スズキ、三菱、ベストカーWEB編集部

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■キャンプで電気使うのは今や常識!? 非EVでも家電が使える軽バン続々

ホンダ N-VANのDC12Vアクセサリーソケット

 軽バンをレジャーに使うムーブメントは盛り上がるばかり。車中泊を楽しむだけでは飽き足らず、キャンプ仕様に作り込んでいるユーザーも少なくない。

 キャンプといえば薪を使った火による調理や暖を取ることを思い浮かべがちだが、昨今は安全性の観点から電気供給へのニーズも高い。そのためクルマで利用することを前提としたオートキャンプ場やRVパークでは車両に電力供給をする設備が備わっていることも増えている。

 そうした外部電源を車内で使うためのコネクターや配線というのは、キャンピングカーでは割と当たり前の装備だったりする。

 そのため、ホンダ N-VANやスズキ スペーシアベースにはそれぞれディーラーオプションとして、外部電源を利用するためのアクセサリーが設定されている。こうした装備があればAC100Vを車内で利用できるため、普段使っている家電をキャンプで利用することができるのだ。

■ミニキャブミーブは車内にコンセントなし!! 家電使うのは非現実的……

販売を再開する三菱 ミニキャブミーブ

 家電を使えるといえばEV(電気自動車)を思い浮かべる人も多いだろう。現時点で軽バン唯一のEVといえば、先ごろ一般販売が再開した三菱 ミニキャブミーブがある。

 はたして、ミニキャブミーブでは家電を利用することはできるのだろうか。結論から言ってしまえば、家電を使うことは可能だが、コストと実用性から割に合わない。

 EVの駆動用バッテリーから電力を取り出し、家電などを動かすことを専門用語では「V2L(Vehicle to Load)」という。車内にACコンセントを備えているEVであれば、車両をACC状態などにして、そこに電源プラグを挿せばV2Lが可能になる。

 しかし、ミニキャブミーブの場合は、メーカーオプションでもAC電源は用意されていない。V2Lをするには、急速充電(CHAdeMO)ポートにつなぐ専用の外部給電装置をつなぐ必要がある。

 つまり、ミニキャブミーブのV2Lというのは車内で利用するというよりは、駆動用バッテリーの電力をアウトドアで利用するというイメージになっているのだ。

 しかも、そのコストは想像する以上に高い。三菱自動車のミーブ・シリーズに対応した外部給電装置として知られているニチコン「パワームーバー」の価格は税別65万円。個人ユースで利用するというよりは、自治体などが災害時に避難所など使うために備えておくという製品であり、高額だ。

■連続使用すると5時間で電欠に……車中泊するならポータブル電源を

WLTCモードでの一充電航続距離はバッテリー容量の都合で133kmとかなり短い。車中泊で電気を使っていると翌朝に立ち往生する可能性も……

 しかも、ミニキャブミーブは販売再開に際して、横滑り防止装置の新採用などブラッシュアップを果たしているが、肝心のバッテリーには変化がない。総電力量は16kWhで、WLTCモードでの一充電航続距離は133kmとなっている。

 16kWhという電力量から計算すると、仮に満充電状態からスタートしたとして、1500Wで連続使用すると5時間程度しかもたないことになる。つまり一晩中、電気を使ってしまうとミニキャブミーブ自体が電欠して、そこから動けなくなってしまう。

 そもそも航続距離が133kmと非常に短いため、道中で急速充電を繰り返したとしてもキャンプや車中泊の目的地に到着したときに満充電状態ということは考えづらい。もし、高価な外部給電装置を持参したとしても、そのコストと手間に見合うだけの電気を利用することは難しいといえる。

 はっきり言って、ミニキャブミーブで車中泊をするのであれば、駆動用バッテリーから電気を取り出しことを考えるよりも、ポータブル電源を持っていき、そこに家電をつないで利用するほうが現実的だ。

 また、先述したように急速充電ポートにつなぐ給電装置は、車外で電気製品を使うことを前提としている。たとえば、車内で睡眠する際に電気毛布で暖を取ることを考えているのであれば、配線を通すために窓を開けたりしなくてはいけないため、かえって寒くなってしまうだろう。

 まして軽バンでの車中泊やキャンプでは、どれだけ効率的にラゲッジスペースを利用するかが重要となる。巨大な外部給電装置に比べればコンパクトなポータブル電源のほうが、邪魔にならないことは間違いない。

■スペアタイヤの設置位置に注目!! ラゲッジスペースが犠牲に

スペアタイヤの搭載位置はラゲッジスペースの右側。タイヤ幅のぶんラゲッジスペース幅は犠牲となる。逆に考えると、趣味としての利用を考慮していない硬派な商用車ということもできる

 電源の話とは関係なくなるが、車内スペースという点でいえばミニキャブミーブで気になるのはスペアタイヤの搭載だ。通常、1BOXタイプの軽バンはスペアタイヤを床下に積んでいるが、ミニキャブミーブでは巨大な駆動用バッテリーに追い出されてしまい、スペアタイヤがラゲッジ壁面に置かれている。

保安基準的にスペアタイヤを降ろしてしまうのはNG。つまり、タイヤのぶんだけラゲッジスペースの横幅が狭くなってしまう。これは軽バンの車中泊仕様を作り込む上では致命的といえる欠点だ。

■ミニキャブミーブは車中泊に向かない……軽バンとして使うのが最適か!?

 というわけで、現時点でのミニキャブミーブのスペックからすると、EVのアドバンテージを活かした車中泊仕様・キャンピングカーとして仕上げていくには、絶対的なバッテリー総電力量が少なすぎるのが課題といえる。航続距離、レジャーシーンで利用できる電力のいずれにおいても物足りない。

 せめて、室内側にAC100Vのコンセントが標準装備されていれば、近距離ユースを前提として景色のいいところで事務作業をするといったワーケーション的な使い方もあり得るかもしれないが、V2Lに外部給電装置を利用するという前提では、そうした利用シーンでも使い勝手がいいとは言えない。

 残念ながら、ミニキャブミーブに関しては、近距離ユースに特化したゼロエミッションのデリバリー事業用と捉えるべきだ。一般向けの販売が再開したといっても、パーソナルユースとして軽バンライフを楽しもうというユーザーが選ぶ相棒としては、かなり難易度が高いといえそうだ。

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