全国の高速バス事業者64社が参画する高速バス安心推進コンソーシアムは、安心して利用できるサービスを検討することを目的に、コロナ禍における意識や行動変化を調査するアンケートを2022年10月12日(水)~23日(日)に実施した。その結果を詳報し、調査結果についてバスマガジン記者が考察する。
文・写真:古川智規(バスマガジン編集部)
利用者の75%が高速バスを利用したいと回答
今回の調査は3回目(1回目:2020年11月、2回目:2021年8月)であり、過去2年間に旅行予約サービス「楽天トラベル」で高速バスの予約をしたことがある方を対象に実施した。全国670名の回答を基に検証している。
「現在のバスでのご旅行に対する意欲を教えてください」という質問に対して、「とても利用したい」「利用したい」と回答した人の合計は75%。前回の調査では49%だったため、26ポイントアップ。多数の人が、高速バスでの旅行に意欲を示している。
これは利用者に対するアンケートのため、すでに利用したことがある人の回答であるという点には留意する必要がある。しかしながら、多くの方が高速バスに満足していることがうかがえる。
次の旅行はいつ行く? いつ行きたい?
次のバス利用のタイミングについては、「いますぐにでも」と答えたユーザーが40%、秋・冬(10~12月)が19%、年末年始が3%、年明け(1~2月)が4%との結果となり、直近での利用意欲が高まっている。
高速バスは事業者により予約の方法やサイトが異なり、混乱のもとであるというのは以前から問題視されていたが、最近ではやや統合された感があり、1つのポータルサイトで多くの路線の予約ができるようになりつつあることの表れだろうか。サッと予約してすぐに乗車できるメリットが浸透したか形か。
次回の利用目的は……やっぱりレジャー希望?
次回のバス移動の目的は、「テーマパーク・遊園地」、「観光・行楽(テーマパーク・遊園地を除く)」、「温泉」などの秋冬の行楽シーズンを楽しむニーズや、年末年始の帰省のニーズが上位となっており、今冬にバス移動の需要回復が見込まれる。
コロナ騒ぎで自制していた旅行に対する欲求の移動手段として、バスが選択されていることが見えてくる。都市の中心部から鉄道駅とは離れた目的地でもダイレクトに結んでくれるバスのメリットが見直されているのだろうか。
……といったところでなぜ利用したいと?
バスでの移動意欲が高い理由については、1位「価格が安いから」2位「時間が有効活用できるから」3位「出発・到着時間の都合が良いから」となっており、費用や時間を有効活用できる点が高速バスの魅力となっている。
鉄道が維持できなかった夜行便の主流は事実上、高速バスになっており航路の少ない夜行の船舶よりも選択の幅が広く、運賃も比較的安いことから宿泊費を浮かす手段としても人気がある証左なのだろう。
消極的な理由は「疲れるから」!?
一方で「バスでの旅行意欲が低い理由」については、「疲れるから」が1位となっているが、前回まで1位だった「新型コロナの感染がまだ拡大するかもしれないから」は5位に順位を下げており、少しずつポストコロナに向けた意識の変化が伺える。これはバス事業の収益性も関係すると思われる。
4列シート夜行便は若い人が多く、3列や個室付きの夜行便はビジネス利用もある。運賃を安くするためには乗客を詰め込まなければならず、4列トイレなしには耐えられないという層が、実体験とイメージの両面からで敬遠していることは間違いないだろう。
鉄道との競争を繰り広げていた時代には短距離昼行便でも3列シートが当然のように走っていたが、4列シート車がデフォルトになるとコロナ騒動も重なり、バス移動を敬遠した層がいたことも事実だろう。
それら敬遠した層が戻るためには再度のテコ入れやサービスの(特にシート配列)再構築を迫れれるのかもしれない。
選択肢に入る重要性
現在では移動距離にもよるが最も早くて安いのはLCCになっており、バスの方が高い路線はいくらでもある。しかし航空機にはできない夜行便という時間を有効に使え、航空機ではほぼ必要になる宿泊費を差し引くことができるとなると、バスに軍配が上がるケースもある。
消費者の選択肢が広がることは非常に良いことだが、選択肢に入らなくなることが最も恐ろしいことなので、ただ安いだけではなく多彩な仕様のバスを幅広い層に提案し、提供することも今後は必要になるのではないだろうか。
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