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 2014年に1年間限定で復活を果たしたランドクルーザー70。多くのバックオーダーを抱え、復刻モデルの販売としては大成功を収めた。

 古いランクルに関する話題は事欠かない。2022年にはGRヘリテージパーツで、ランクル40の部品補給を開始する。40の復刻部品が登場したことで、次は70の再々販が来るかもしれないと、ランクル周辺がざわついているのだ。

 喫緊のコロナやウクライナ情勢による納期の長期化を解消しなければならず、今すぐにランクル70の復活を期待することは出来ないだろう。それでもランクル70の復活を期待する声は、途切れることがない。

 1984年の登場から、既に38年が経過しようとしているが、未だに熱が収まらないランクル70。その凄みはどこにあるのか、考えていきたい。

文/佐々木 亘、写真/TOYOTA

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■ランクル300では敵わないナナマルのタフさ

現在も世界各地の未舗装路面を走り続けている40系の血を色濃く受け継ぐ70系トヨタ ランドクルーザー。写真は2014年登場の期間限定復刻モデル

 昨今のランドクルーザーと言えば、プラドや300系のように、高級SUVのイメージが強くなった。

 乗用車として十分な機能や快適性を持っていて、同時にラダーフレームを生かしたオフロード走行が得意というイメージが強いだろう。日本では舗装路面を快適に走れる質感の高いクルマ、それがランドクルーザーとして定着してきた。

 しかし、本来ランドクルーザーは、警察予備隊に納入されていたジープBJ型を祖とするものだ。その系譜を継いだランクル40系は、現在も世界各地の未舗装路面を走り続けている。

 故障することなく、安全に荒地を走り回れる、砂漠地帯を駆け抜けることができるランドクルーザーは、年式に関わらず、世界各地で使われているのだ。

 こうした現状を受け、1960年に登場したランドクルーザー40の修理が世界中で行えるよう、GRヘリテージパーツが40系の復刻部品を販売するようになった。

 日本と世界のランドクルーザーに対する目線は違う。

 特に200系や300系、プラドのように舗装路面における走行の質を考えた車両を、ランドクルーザーのイメージに据えるのは、日本や北米などの一部地域に限られる。ランドクルーザーといえば40や70系のようなヘビーデューティなクルマのことを、世界の多くの国々では指す。

 ランドクルーザー70は、BJ・FJ、そして40系の血を色濃く受け継いでいる。ただ愚直にオフロードを安全かつ確実に走り切るクルマであり、その使命を世界中で30年以上全うし続けているのだ。

■当時の魅力を維持したまま復刻されたランクル70

1984年登場の70系トヨタ ランドクルーザー。日本での販売は2004年まで続けられた超長寿モデルだった

 クルマは新型モデルが登場すれば旧モデルが廃れていく。機能や性能は常にブラッシュアップされていき、古いものは不便で必要が無いと切り捨てられることも多いだろう。産業の成長という面では正しいことだが、変わらない価値を変わらずに提供し続けるというスタンスも大切にしたい。

 ランクル70は、変わらないことを武器にして、支持を集め続けるクルマだ。自らの需要の先には何があるのか、それを常に考え、感じながら小改良を重ね生産を続けてきた。

 1984年に登場したランクル70は、2004年まで日本での販売を続けられた。その後も、オセアニア地域などへ向けた生産は続いていたが、日本では一度姿を消すこととなる。

 その後、2014年8月に、1年間限定で30周年記念の復活モデルが販売されたのは記憶に新しい。用意されたのはバンとピックアップの2種類だった。

 この時、搭載されたエンジンは4リッターV6のガソリンエンジンだ。70と言えばディーゼルだったが、様々な要件に対応するため、ガソリンという選択をした。それでもトランスファーレバーによるパートタイム4WD、トランスミッションは5速MTのみというランクル70らしさは十分に残している。

 ランクル70が復刻されると聞いたとき、復刻前のランクル70を販売してきた営業マンたちは歓喜の声をあげた。対して、筆者のようにランクル70の現役当時の販売を知らない世代には、「こんなに古いクルマが本当に売れるのか」と疑問しか浮かばなかったはずだ。

 しかし、フタを開ければ販売は好調、購入していく人たちの思い入れの強さも格別だった。復刻モデルを購入していくユーザーからは、「変わらないカッコよさ」「ランクルとはこうあるべき」など、古い・時代遅れなどとは言わせないという、強い気持ちが伝わってくる。

 筆者が知る、ある企業の社長は、ディーゼルのランクル70を現在も自分の移動車として使用しているのだ。もちろんハンドルは自分で握る。高級セダンやクーペなど、似合いのクルマは数多くあるのだが、頑なにランクル70を手放すことは無い。

 思いが宿るモノというのは数多くあるが、クルマもその一つに挙げられるだろう。その中で、30年以上もほとんど形が変わらずに、新品が作られているモノは数少ない。

 ランクル70には、変わらないカタチや価値の上に、変わらぬユーザーの思いが重なっているのではないだろうか。

■究極のタフネスは若返り不要で日本でも愛され続けるはずだ!!

2021年にはランクル70にランクル70周年記念車がオーストラリアでラインナップされた。諸外国では現行モデルだ

 現役当時のランクル70を支えてきた世代は、既に50歳を超えている。クルマに対する熱意は高いが、物理的にクルマに乗れなくなっているという世代が増えてきた。需要の先細りを懸念し、若返りを図る車種も増えてきている。そもそもガソリン車に乗れる時期も、この先長くは続かないだろう。

 それでもランクル70の火は消えることないだろう。国外ではもちろんだが、日本国内でも70を支持する若年層は増えているのだ。

 2014年の復刻時、バンはもちろんだが、ピックアップトラックに興味を示す20代・30代のユーザーが多かった。販売している側としては特異な状況だと思っていたが、この世代にとって、ランクル70のように変わらないクルマは、一周まわって新しいのだという。

 クラウンなどのように、必死に若返りを図る必要がランクル70には無い。今のままで十分に若い世代に思いが届く、ランクル70とは、そういうクルマなのだ(※編註 ランクル70の復活についてはスクープ情報が出ては消えてといった状態。認証の問題はクリアできそうだが、もし再販となっても発売時期限定などでの発売になるとみられる)。

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