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95年に中国・深圳で電池メーカーとして創業したBYDは、いまや70以上の国と地域でBEVやPHEVなどの新エネルギー車を販売している。21年はその販売台数が約60万台に達し、中国では9年連続で新エネルギー車販売台数ナンバー1の座をキープしている。

国内では05年に日本法人が設立され、15年から電気バスや電気フォークリフトを販売。そして、いよいよ23年1月には乗用BEVが発売される。ミッドサイズSUVのATTO3(アットスリー)、コンパクトなドルフィン、ハイエンド・セダンであるシールの3車種が順に導入される予定だ。

atto3_fr口火を切るATTO3は4455mm×1875mm×1615mmのボディをまとい、すでに本国やシンガポール、オーストラリアで発売されている。
注目したいのは、床下に横方向に搭載されている独自開発のブレードバッテリーだ。リン酸鉄が使われたリチウムイオン電池で、大型の釘を刺しても発火せずに表面温度もほぼ変わらないという高い安全性がウリに掲げられている。

そのブレードバッテリーがBEV専用プラットフォームとともに用いられているATTO3は滑らかな走り味が魅力的だ。動力源が電気モーターだから加速が滑らかなのは当然だが、車重1750kgにもかかわらず、上下動が大きくなりがちな踏み切りのような場面でも衝撃を吸収して快適な乗り心地を実現していることに驚かされる。

atto3_intアクセル開度がゼロの時、すなわち空走時は回生が弱いため、世間の電動車両がアピールポイントにしているワンペダル運転はできないが、車体が前のめりになったり車速が落ちすぎないため、ギクシャクせずに済む。エンジン車から乗り替えても違和感なく運転できるはずだ。なお、アクセルペダルに対するレスポンスは3段階、ペダルから足を離した際の回生は2段階に切り替え可能だが、いずれも極端な差はなく、違いを感じにくいのが正直なところだ。

品質や実用性に対して厳しい目を持つ国内ユーザーの要求にも応えられるよう、日本導入に向けての準備は着々と進んでいる。BYDオートジャパン・商品企画部の小口武志さんは「ワイパーとライトのレバーは国産車と同じ配置になるよう、型から起こして本国とは左右逆にする。また、タイヤは中国製ではなく、オーストラリア仕様と同じくコンチネンタル製」と説明する。本国ではグレードが5つほど存在するが、国内導入されるモデルは最上級に相当する内容を誇り、前半分がアウタースライドする電動パノラマルーフも備わる。
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後席足元はフラット。しかも床は高くないので、ヒザが浮いてしまうような姿勢を強いられることもない。

ビルド・ユア・ドリームスの頭文字に由来するBYDのBEVに触れてみて、国産ブランドのクルマに引けを取らない仕上がりを身につけていると感じた。そろそろ隣国製品に対する色眼鏡を捨て、商品と真っ向から向き合う時が来ているのではないだろうか。

 

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ボディカラーにはブルー、レッド、ホワイト、グリーン、グレーの5色が用意される予定だ。

主要スペック
●全長×全幅×全高:4455mm×1875mm×1615mm
●ホイールベース:2720mm
●車両重量:1750kg
●パワートレイン:電気モーター(150kW/310Nm)
●WLTCモード航続距離:485km
●バッテリー容量:58.56kWh
●駆動方式:前輪駆動
●税込み価格:未定